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designfeature
2004年1月号
立ち上がるPoE、
コントローラーICが
出そろう


Power over Ethernet(PoE)は、イーサーネット・ケーブルを使って電力を伝送する技術である。その標準規格である「IEEE 802.3af」に準拠したコントローラーICは、すでに複数のベンダーから入手できる。ただし入手可能なコントローラーICの中には、標準規格の策定作業が完了する前に製品化されたものもある。最終の標準規格に準拠したコントローラーICと相互接続性を確保できないなどの問題が起こるかもしれない。従ってコントローラーICを機器に組み込む際には、データ・シートと最終の規格とを付き合わせ、問題が生じないことを確認すべきである。

ジョシュア・イズラエルソン
Joshua Israelsohn
 公衆回線網を行き来するデータのトラフィックは、かなり以前から音声信号のトラフィックを上回っている。同様の現象は企業内に構築したネットワークでも起こっている。ただし企業内ネットワークには、公衆回線網と大きく違う点が1つある。それは、データと音声を別々の伝送路でやり取りしていることだ。公衆回線網の多くは1つの伝送路でデータと音声の両方をやり取りしている。これに対して企業内ネットワークは、データ通信にLAN*を利用し、音声通信には構内電話回線を使う。
 1つの企業内にLANと構内電話回線という2つのネットワークが存在するのは効率的ではない。2つのネットワークのうち一方は冗長といえる。そこでIP*電話機などのVoIP*機器を使って、音声をLAN経由でやり取りするというアイデアが生まれた。構内電話回線は不要になる。その結果、ネットワークの設置や保守、運用におけるコストを大幅に低減できるというわけだ。
 ただし、話はそう簡単ではない。電話回線を使わなければならない理由がまだあるからだ。例えば電話回線に接続して使う卓上電話機を考えてみよう。電話機は、インターネット・ゲートウエイや電子メール・サーバーとは性質が異なる。すなわち、電話機は時として「ライフライン」の役割を果たす必要がある。緊急時、真っ先に必要になる機器は電話機だろう。従って電話機は、周囲が停電していても正常に動作しなければならない。
 企業内の電話システムが従来のPBX*であれば問題はない。電話回線から電話機に電力を供給できた。しかし、イーサーネットを利用したIP電話システムでは、各電話機に無停電電源装置を組み込む必要が生じてしまう。電話機のほかにも、LAN機器に接続して使う機器には常に電源を確保しておく必要のあるものが多い。例えば無線LANのアクセス・ポイントやIDカード読み取り装置、監視カメラなどだ。
 これらの機器を据え付ける場所に電源コンセントがないことがある。都合よく電源コンセントがあったとしても、停電時の電源をどうやって確保するかという問題は残る。すべての機器に電源バックアップ用の電池を備えるのはコストがかさむ。実際に企業全体に無停電電源装置を導入するという手段はあまり現実的でない。
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 「Power over Ethernet(PoE*)」技術を使えば、この問題を解決できるかもしれない。PoEは、イーサーネット・ケーブルを使ってデータと同時に電力を伝送する技術である。IEEE*の標準規格「IEEE 802.3af」として2003年6月に承認を受けた。イーサーネット網のどこかに無停電電源装置を接続しておけば、イーサーネット接続した機器は無停電電源装置から電力を受け取れるようになる。既設のイーサーネット・ケーブルやパッチ・パネル*、コネクターなどのインフラはそのまま使える。
 データと同時に電力も伝送するというアイデア自体は、それほど新しいものではない。例えば、多芯ケーブルを利用してデータと電力を伝送する機器は従来から数多くあった。多芯ケーブルにデータ信号用、制御信号用、電力用といった専用線を束ねる方法である。
 PoEは、このような従来手法と異なる特徴を備えている。すなわちPoEを使ったネットワーク給電システムでは、電力を受け取る受電機器(PD*)をネットワークに接続したり、ネットワークから切り離したりするときに、ネットワーク・システムが自動的にその接続/切り離しを認識する。さらに、人間が制御しなくても、システムが自動的にネットワーク経由の電力供給をオン/オフする。このほかPoEシステムには、電力を供給する給電機器(PSE*)が受電機器の要求電力を識別する機能もある。このため、受電機器を手がけるメーカーは、受電機器を必要な消費電力によってクラス分けしておく必要がある。
 PoEのようにネットワークを利用して電力を伝送するシステムでは、電力を安全に供給する仕組みが重要である。ネットワーク給電のシステムが人間に危害を及ぼしたり、施設へ損害を与えたり、ネットワーク接続した機器を破壊したりすることを防ぐ必要がある。
 このためPoEでは、受電機器をネットワーク上で検出したときだけ給電機器の電圧出力をネットワークに接続する。それ以外のときは切り離しておく。なぜなら、PoEの受電機器も、外部電源から電力を得る機器も同じコネクターを利用しているからだ。標準のRJ-45型を採用する。

ハンドシェークで接続を確立

 機器をPoEに対応させるためには、コントローラー回路を搭載する必要がある。給電機器に組み込むコントローラー回路は、受電機器を検出してネットワークに電源を接続する機能を備える。受電機器に組み込むコントローラー回路は、受電機器を給電機器に検出させる機能が必要だ。さらに、受電機器に内蔵したDC-DCコンバーターを制御する機能も不可欠になる。
 イーサーネットの10BaseT*100BaseTX*100BaseT2*では、伝送媒体としてカテゴリー3またはカテゴリー5のより対線(UTP*)ケーブルを利用する。より対線ケーブルは4組のより対線で構成されており、データ伝送には2組のより対線を使う*1)。使用しない2組のより対線は予備である。PoEでは、この予備のより対線を使って電力を供給する(図1)。予備のより対線が使えない場合もある。1000BaseT*のように、データ伝送に4組のより対線すべてを使ってしまう場合である。この場合には、信号トランスのセンター・タップを使って電力を供給する(図2)
 給電機器用コントローラー回路は、初期化ルーチンの限られた時間内で、イーサーネット・ケーブルに接続された受電機器を探し出さなければならない。イーサーネット・ケーブルの長さは100mにも達する。さらに、ケーブルにはインダクタンスや浮遊容量があり、隣接するケーブルの信号が結合してしまうこともある。
 このような条件でも受電機器を探し出せるように、給電機器用コントローラー回路と受電機器用コントローラー回路は、刺激応答(スティミュラス・レスポンス)を使ったハンドシェーク・アルゴリズムで接続を確立する。刺激応答によるハンドシェークを行うという点ではデータ・モデムやそのほかのリモート通信装置と同様である。ただし、データ・モデムの場合は、変調されたビット・ストリームでハンドシェークを行うのに対して、PoEでは抵抗を使った電圧-電流(V-I)プロファイルを使用する(下記の「給電機器と受電機器のハンドシェーク方式」を参照)。
 PoEの標準規格が最終的に決定されるまでの過程では、電圧-電流プロファイル以外のハンドシェーク方式が数多く検討された。具体的には、ダイオードを使った検出方式や発振器による方式、電流パルス符号を利用した方式などである*2)7)

複数のベンダーがICを発売

 PoEの標準化作業に注目してきた半導体ベンダーは、すでに給電機器と受電機器に向けたコントローラー回路をIC化し、製品として販売している。いずれの製品もPoEの標準規格IEEE 802.afに準拠しているとうたっている。ただしこれらの中には、標準規格が最終的に承認されるよりも前、すなわち標準規格案の段階の仕様に準拠したICもある。
 従ってこれらのICを使って機器を設計する場合には、ネットワークへ機器を接続したり切り離したりする際のアルゴリズムや、動作限界などを把握しておく必要がある。標準規格案の段階の仕様は、最終的に削除された項目も含んでいる。このため、こうした仕様に沿って開発されたコントローラーICは、最終承認を受けた標準規格に準拠していないかもしれない。最終承認された規格に準拠したICとの相互接続性を確保できない可能性もある。
 給電機器用コントローラーICと受電機器用コントローラーICは、標準規格に定められた順序にしたがって電源をネットワークに接続したり切り離したりする。ただし、ネットワーク機器のユーザーがこうした順序を守るとは限らない。ネットワーク給電された機器を突然切り離してしまうこともある。この場合は、ネットワーク接続用のRJ-45型コネクターや、切り離された機器のネットワーク・コネクターなどを静電気放電(ESD)によって破壊してしまう可能性がある。従ってPoEシステムの設計においては、サブシステムの保護が非常に重要だ。
 米テキサス・インスツルメンツ社*は給電機器用のコントローラーIC「TPS2383」を用意した。このコントローラーICは、ネットワークに接続された受電機器を検出し、その電力クラスを分類する機能を備える。出力ポート数は8つ。電圧出力をポートごとに制御したり、監視したりできる。最大8つのネットワーク・ノードに電力を供給可能である。給電機器のホスト・システムとのインターフェースはI2C。パッケージは64ピンのLQFPを採用した。1000個購入時の単価は7米ドルである。
 電圧出力をネットワークに接続するときと切り離すときに電流の変化量(di/dt)を制限して放射電磁雑音を抑える機能を搭載した。受電機器に組み込んだバイパス用コンデンサーを充電している間は、受電機器に流れ込む電流の大きさと時間をそれぞれ400mA未満、50ms以下に制限する。これは、450μFのコンデンサーを44Vまで充電するのに十分な電流値と時間である。
 電源供給の開始に必要な時間(ターン・オン時間)は50msである。電源供給開始後も、コントローラーICは受電機器に流れ込む電流の平均値とピーク値を監視し続ける。電流の平均値が10mA以下か375mA以上になった場合、または電流のピーク値が425mAを超えた場合は、コントローラーICが電源をイーサーネット・ケーブルから切り離す。電流値の測定は、コントローラーICに集積した12ビットA-D変換器を使う。デジタル値に変換した電流値はIC内部の読み出し用レジスターに格納しておく。
 給電機器から各ノードに供給する電力を管理したい場合は、電源供給開始時に受電機器の電力クラス分けを示す抵抗値を読み出せばよい。電力クラス分けが不要な場合には、クラス分け作業を実行しないようにコントローラーICをプログラムすればよい。電源供給開始までの処理を短縮できる。

4つの動作モードを備える

 米リニアテクノロジー社*は、給電機器用のコントローラーICを2品種販売中だ。「LTC 4258」と「LTC4259」である。パッケージは両ICともに36ピンのSSOP。1000個購入時の単価はLTC4258が6.35米ドル、LTC 4259が6.95米ドルである。
 いずれの品種も出力ポートを4つ備える。IEEE 802.3afに準拠した受電機器を4つまで検出し、電力クラス分けを実行できる。さらに各受電機器が取り外されていないかを監視し、各ポートの状態を給電機器システムに通知できる。コントローラーICのデバイス・アドレスは4ビット確保した。このため、このコントローラーICを16個使えば、最大で64ポートを制御可能である。
 このコントローラーICは、ホスト・システムと接続しなくても単独で使用することが可能である。もちろんホスト・システムと接続し、そのシステムから制御することもできる。ホスト・システムとの接続はI2Cインターフェースを使う。4種類の動作モードを用意した。それぞれを@マニュアル・モード、Aセミオート・モード、Bオート・モード、Cシャットダウン・モードと呼ぶ。
@マニュアル・モードでは、給電機器のホスト・システムから直接、電源ポートを管理する。ホスト・システムがコマンドを発行することで、このコントローラーICは受電機器の検出や電力クラス分けを実行する。その結果はポート・ステータス・レジスターに格納する。ホスト・システムでコントローラーICを制御して、電源ポートを切り離せる。
Aセミオート・モードでは、給電機器のコントローラーICがポートの状態を常にポーリングしている。受電機器の検出と電力クラス分けは自動的に行う。その結果は、ポート・ステータス・レジスターに格納する。ただし、電源供給のオン/オフは外部制御が必要である。具体的には、ホスト・システムからコントローラーICの制御用レジスターを書き換えることで電源供給をオン/オフする。
Bオート・モードでは、ポートの状態を常にポーリングする。受電機器の検出、電力クラス分けは自動的に行う。受電機器を検出すれば、直ちに受電機器に電力を供給し始める。
Cシャットダウン・モードでは、ポートをディスエーブルに設定する。受電機器の検出や受電機器への給電は行わない。この動作モードでは検出ビットとフォールト・イベント・ビット、ステータス・ビット、イネーブル・ビットをすべてクリアする。
 このコントローラーICは、過電流に対する保護機能を備えている。この保護機能は、いずれの動作モードのときにも働く。電圧出力ポートの過電流を検出すると、内蔵のタイマーが動作する。内蔵タイマーはあらかじめある時間に設定されている。この時間を経過しても過電流が流れ続けているときは、電圧出力ポートをイーサーネット・ケーブルから切り離す。
 このほかコントローラーICは、受電機器が切り離されたときに、ポートへ電圧を印加したままにしないように電力供給を停止する。このためコントローラーICは、通常7.5mA±2.5mAの受電機器の最小負荷電流を監視している。ポートが最小負荷電流を引き込んでいないことを検出すると、電源供給を停止する。LTC4259ではさらに、ポートのインピーダンスを監視することで受電機器が切り離されたことを検出する交流(AC)方式の検出機能も利用できる。
 いずれのコントロールICともに、パス・トランジスタとしてパワーMOSFETを外付けする必要がある。コントロールICは、このパワーMOSFETのゲートを直接制御する。さらに、パワーMOSFETに流れる電流を検出するために抵抗を外付けする。これを使って突入電流や供給電流を制御する。

制御端子を個別に用意

 米マキシム・インテグレーテッド・プロダクツ社*は給電機器用コントローラーIC「MAX5922」を用意している。このコントローラーICは出力ポートを1つだけ備える。パス・トランジスタとしてオン抵抗が0.45ΩのパワーMOSFETを集積した。特徴は2つある。1つは電流制限の値をユーザーが設定できること、もう1つは出力ポートに電流が流れていないことを検出する機能(ゼロ電流検出機能)である。パッケージは28ピンのTSSOPを採用した。1000個購入時の単価は3米ドルである。
 このコントローラーICは受電機器を検出すると、出力電圧のスルー・レートを100V/msに、電流のスルー・レートを35A/msにそれぞれ制限して電力供給開始時の放射電磁雑音を抑える。動作電圧範囲は32〜60V。UVLO*のしきい値電圧は外付けの抵抗で設定可能である。
 他社の給電機器用コントローラーICと異なり、デバイス・プログラミング用のシリアル・インターフェースは備えていない。その代わりに、ゼロ電流検出や、受電機器の検出、電力クラス分けを実行させる専用の制御端子を用意した。ホスト・システムはこれらの制御端子に直接、論理値を与えてコントローラーICを制御する。コントローラーICの状態も同様の方法で出力する。すなわち、過熱あるいは過電流を検出する故障検出端子、適正な電圧が出力されていることを通知するPOK(パワーOK)端子、およびゼロ電流検出端子をそれぞれ用意した。受電機器の電力クラスも専用に用意した3ビットのステータス端子を使って出力する。

受電機器向けICも登場

 受電機器に向けたコントローラーICでは、テキサス・インスツルメンツ社の「TPS2370」がある。給電機器に受電機器を認識させるための検出用抵抗や電力クラス分けの抵抗を外付けして使う。
 入力電圧が1.8〜10Vになると、検出用抵抗をイーサーネット・ケーブルに接続する。PoEシステムが受電機器の検出作業を行っている間は、このコントローラーICは最大12μAの電流を引き込む。入力電圧が15〜20Vになると、電力クラス分け抵抗をイーサーネット・ケーブルに接続する。入力電圧が20Vを超えると、電力クラス分け抵抗をイーサーネット・ケーブルから切り離して電力消費を抑える。その後、入力電圧が40Vに達するまではUVLO状態で待機を続ける。入力電圧が40Vに達すると、内蔵したパワーMOSFETを介して後段のDC-DCコンバーターに入力電圧を供給する。そしてDC-DCコンバーターのバイパス・コンデンサーを充電し始める。内蔵したパワーMOSFETのオン抵抗は300mΩである。
 このコントローラーICの「EN_DC」端子には、ソフト・スタート用コンデンサーを接続する。この端子はチップ内部で電流シンク回路と接続してある。DC-DCコンバーターへの出力電圧が、コントローラーICの入力電圧から1.5Vを引いた値を超えるまで、コンデンサーの充電を防止する役割を果たす。DC-DCコンバーターへの出力電圧が1.5Vの範囲内に入ると、受電機器コントローラーICの電流シンク回路をコンデンサーから切り離す。このようにしてDC-DCコンバーターをソフト・スタートさせる。パッケージは8ピンのTSSOPまたはSOIC。1000個購入時の単価は1.25米ドルである。
 リニアテクノロジー社も受電機器に向けたコントローラーIC「LTC4257」を販売している。このコントローラーICは、テキサス・インスツルメンツ社のTPS2370と同様な機能を実現できる。しかし、外付け部品はTPS2370よりも少なくて済む。受電機器の検出に使う抵抗や突入電流制限用の高精度抵抗を集積したからだ。電力クラス分け用の抵抗は外付けで用意する必要がある。入力電圧が−39Vに達するまで電圧入力を切り離しておくUVLO機能を備えた。このUVLOのヒステリシス分は約9Vである。電圧出力ポートの電圧監視機能(パワーグッド)を用意した。パワーグッド信号の出力はオープン・ドレイン形式を採用した。
 このコントローラーICは−48Vの電源ラインに接続することを前提に設計してある。しかし、入力電圧の絶対最大定格は−100Vと大きい。このため、安定化されていない電源を入力として使用できる。安全マージンは十分に確保できるだろう。8ピンのSOIC封止。1000個購入時の単価は1.65米ドルである。

相互接続性の検証が進む

 米ニューハンプシャー大学のインターオペラビリティー・ラボラトリー*は本稿の執筆時点で、複数のベンダーから入手したPoE対応機器やPoE機器用ICを使って実証試験を行っていた。複数ベンダーとは、米スリーコム社*米エクストリーム ネットワークス社*カナダのノーテルネットワークス社*イスラエルのパワーデザイン社*、テキサス・インスツルメンツ社である。この実験の結果は入手次第、米EDN誌のウエブ・サイトで紹介する予定である。
給電機器と受電機器のハンドシェーク方式

トッド・ネルソン*A-1) 米リニアテクノロジー社
Todd Nelson Linear Technology Corp.

 給電機器は、受電機器に内蔵した25kΩの検出用抵抗を使って受電機器を認識する。給電機器はまず、電力をイーサーネット・ケーブルに供給する前に、2.8〜10Vの電圧を使ってイーサーネット・ケーブルに接続された検出用抵抗を探す(図A-1)。このとき受電機器の検出用抵抗は、25kΩ±5%の抵抗に120nF以下のコンデンサーを並列に接続したようにみえる。ただしシステムには寄生抵抗が存在する。このため給電機器は、19k〜26.5kΩと比較的広い範囲の抵抗値に対応できるように設計しておく。
 受電機器は、電圧入力に保護用ダイオードを備えることが多い。このダイオードによって生じる電圧降下を補償するため、25kΩの検出用抵抗に最大1.9Vのオフセット電圧を加える。ところがこのオフセット電圧は、給電機器が受電機器の検出用抵抗値を測定する際の誤差要因になってしまう。さらに検出用抵抗には、受電機器のリーク電流によって10μA程度のオフセット電流が生じる。このオフセット電流も誤差要因になる。
 そこでこの誤差要因を取り除くために、給電機器は2点測定法を使って抵抗値を測定する。2点間の電圧は、受電機器において少なくとも1Vは異なっていなければならない。2点における測定値の差分を求めることで、オフセット電圧とオフセット電流による測定誤差を取り除く。

供給電力のクラス分け

 給電機器は受電機器を検出すると、検出した受電機器に電力を供給し始める。このとき、受電機器に供給する電力を決定するために電力クラス分けを実行する。これによって、給電機器はどのくらい電力が必要になるかを見積もり、それをポートに割り当てる。すべての受電機器が標準規格に定められた最大電力を必要とするわけではないからだ。Power over Ethernetの標準規格「IEEE 802.3af」では、1つの受電機器が受け取れる最大電力を12.95Wに定めている。ただし、この電力クラス分けは、オプションであり、実行しなくても構わない。その際には、各ポートに最大電力を供給することになる。
 給電機器に搭載したコントローラーICは、受電機器に電圧や電流を強制的に印加して、電力クラス分けの抵抗を探し出す。このとき受電機器のポートには15〜20Vが印加される。電力クラス分けを行う間、受電機器は定電流源として振る舞う。給電機器のコントローラーICはこの電流値を測定し、その結果によって受電機器の電力クラスを特定する。
 クラス分けの際に給電機器が使用する電圧源は、受電機器が動作不良を起こしていても損傷を与えないように100mA以下に抑える。さらに、受電機器の電力消費を抑えるために、クラス分けに費やす時間が75msを超えないようにする。
 PoEの標準規格では受電機器の電力クラスを4つに分類している。5番目のクラスは将来の拡張用に確保してある。クラス1、2、3はそれぞれ、「クオーター・パワー」、「ハーフ・パワー」、「フル・パワー」の受電機器を示す。クラス0はデフォルトである。受電機器に電力クラス分け抵抗が実装されていない場合は、クラス0に分類する。クラス4は将来の拡張用である。このため現在のところは、クラス4の受電機器を検出した場合は、給電機器はその受電機器をクラス0と見なす。
 給電機器が受電機器を検出し、電力のクラス分けに成功すると、次に給電機器は受電機器に電力を供給可能かどうかを判断する。受電機器に対して要求通りの電力を供給できると判断すれば、給電機器は電力供給を開始する。同時に、供給している電力を管理するためにポートの監視を始める。この監視方法は2つある。1つは10mAの最小負荷電流を監視する方法、もう1つは500Hz以下の周波数で33kΩ以下になる交流インピーダンスを監視する方法である。
 給電機器は、受電機器が切り離されたことを検出すると、300m〜400msの間だけ待機し、その後でイーサーネット・ケーブルから電源を切り離す。300msの最小待機時間を保証することで、誤った切り離しによりイーサーネット・ケーブルにスパイク雑音を発生させたり、供給電圧が突然降下したりしないようにしている。一方で、待機時間は最大でも400msである。このため、受電機器を取り外した後で給電機器が電力供給を停止しないうちに、PoEに対応していない機器が接続されることを防止できる。
 通常動作時には、給電機器は少なくとも400mAの電流を最短でも50ms間供給できる能力を要求される。さらに連続的には、15.4W(44V×350mA)の電力を供給できなければならない。ただし、これ以上の電流や電力が消費された場合には、給電機器を保護するために電圧出力を停止したり、出力電流を制限したりする必要がある。
 このため、給電機器は2つの電流制限を使って出力電流を制御する(図A-2)。1つは時限的な電流制限である。350m〜400mAの電流(ICUT)が、あらかじめ決めておいた時間(tICUTまたはtSTART)流れ続けたときに電圧出力を停止する。もう1つは連続的な電流制限である。400m〜450mAの電流(ILIM)が流れたときに、電圧出力用のパス・トランジスタ(パワーMOSFET)のゲートを制御してそれ以上の電流が流れないようにする。給電機器はこの2つの電流制限に加えて、出力電流(ISC)が常に450mA以下になるようにパス・トランジスタを制御する必要がある。
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用語解説 / 会社情報
【LAN】
local area network
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【IP】
internet protocol
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【VoIP】
voice over internet protocol
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【PBX】
private branch exchange
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【PoE】
Power over Ethernet
パワー・オーバー・イーサーネット。イーサーネット・ケーブルを使ってデータと同時に電力を伝送する方式を定めた標準規格。「IEEE 802.3af」として2003年6月に承認された。
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【IEEE】
Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.
米国電気電子技術者協会。もしくは米国電気電子学会。
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【パッチ・パネル】
patch panel
ネットワーク・ケーブルの配線用ソケット群を収容した配線盤。
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【PD】
Powered Device
受電機器
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【PSE】
Power Sourcing Equipment
給電機器
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【10BaseT】
10Mビット/秒のイーサーネットに対応する標準規格の1つ。IEEE 802.3jに準拠する。伝送媒体はカテゴリー3のUTP(シールドしていないより対線)。
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【100BaseTX】
100Mビット/秒のファスト・イーサーネットに対応する標準規格の1つ。IEEE 802.3uに準拠する。伝送媒体はカテゴリー5のUTP(シールドしていないより対線)。
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【100BaseT2】
100Mビット/秒のファスト・イーサーネットに対応する標準規格の1つ。IEEE 802.3yに準拠する。伝送媒体はカテゴリー3のUTP(シールドしていないより対線)。
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【UTP】
unshielded twist pair cable
シールドしていないより対線
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*1)
Israelsohn, Joshua, "Pumping data at gigabit rates," EDN, April 12, 2001, p. 81.
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【1000BaseT】
1Gビット/秒のギガビット・イーサーネットに対応する標準規格の1つ。IEEE 802.3abに対応する。伝送媒体はカテゴリー5のUTP。
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*2)
Lehr, Amir, "DTE Power via MDI: Method for Powered DTE (PDTE) Authentication," PowerDsine, January 2000.
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*3)
Thompson, Geoff, "802.3 report to SC25/WG3 regarding DTE power via MDI," Nortel Networks, January 2000.
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*4)
Stapleton, Nick, "More on stimulus and unique response," 3Com, January 2000.
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*5)
Dove, Daniel, "Power over the DTE: a simple and low-cost proposal," Hewlett-Packard, January 2000.
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*6)
Frazier, Howard, Karl Nakamura, and Roger Karam, "Power over the MDI," Cisco Systems, January 2000.
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*7)
Leonowich, Robert and Donald Stewart, "IEEE 802.3 DTE power via MDI: Power delivery mechanisms," Lucent Technologies, January 2000.
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【米テキサス・インスツルメンツ社】
Texas Instruments Inc.
米国の大手半導体メーカー。ホームページはhttp://www.ti.com/
日本法人は日本テキサス・インスツルメンツ。日本語ホームページはhttp://www.tij.co.jp/
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【米リニアテクノロジー社】
Linear Technology Corp.
米国のアナログ半導体メーカー。ホームページはhttp://www.linear.com/
日本法人はリニアテクノロジー。日本語ホームページはhttp://www.linear-tech.co.jp/
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【米マキシム・インテグレーテッド・プロダクツ社】
Maxim Integrated Products, Inc.
米国のアナログ半導体メーカー。ホームページは、http://www.maxim-ic.com/。日本法人はマキシム・ジャパン。日本語ホームページはhttp://www.maxim-ic.com/ja/
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【UVLO】
Under Voltage Lockout
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【米ニューハンプシャー大学のインターオペラビリティー・ラボラトリー】
University of New Hampshire, Interoperability Laboratory
ホームページはhttp://www.iol.unh.edu/
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【米スリーコム社】
3Com Corp.
ホームページはhttp://www.3com.com/
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【米エクストリーム ネットワークス社】
Extreme Networks
ホームページはhttp://www.extremenetworks.com/
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【カナダのノーテルネットワークス社】
Nortel Networks Ltd.
ホームページはhttp://www.nortelnetworks.com/
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【イスラエルのパワーデザイン社】
PowerDsine Ltd.
ホームページはhttp://www.powerdsine.com/
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*A-1)
トッド・ネルソン氏は現在、米リニアテクノロジー社でプロダクト・マーケティング部門のマネジャーを務めている。
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