ヘンドリック
W. ボーデ*氏が1945年に執筆した「ネットワークの解析とフィードバック増幅器の設計」はフィルター理論とフィードバック理論を体系化した名著である。約60年経過した現在でも、エレクトロニクス設計で活用されている。
彼はこの本の中で多くの秘密を解き明かした。その中で私が最も気に入っている記述は定抵抗終端に関するものだ。図1は定抵抗終端回路の一例である。この回路において、時定数であるZ0CINがL2/Z0に等しくなるように各電子部品の値を調整する。そうすればステップ入力に対する応答は、RC直列回路のアドミタンスによる減少分と、LR直列回路のアドミタンスによる増加分が正確に一致するようになる。すなわち回路全体のインピーダンスZ(f)は、全周波数範囲にわたって一定の値に設定できる。少なくとも、回路の寄生成分が無視できなくなるか、コンデンサーとインダクターが本来の役割を果たせなくなる周波数まではインピーダンスの値は一定だ。
この回路は、デジタル・システムの終端回路ネットワークとして頻繁に利用されている。ここでCINは受信回路の入力容量を表すと仮定する。この入力容量に対して、R1とR2、Lを接続することでCINの値に関係なく反射波を一切発生しない終端回路ネットワークを構成できる。
この終端回路の場合、受信信号は受信回路の入力端子に達する前にR1を通過し、R1とCINで構成したフィルターを通過する。このとき受信信号は、フィルターの群遅延分(τgroup=R1CIN)だけ遅れる。さらに、このフィルターの立ち上がり時間の影響を受ける。この結果、受信信号の立ち上がり波形を劣化させてしまう。なおフィルターの立ち上がり時間(10%から90%に達するまでの時間)はτ10-90%=2.2×R1CINで記述できる。フィルターの群遅延と立ち上がり時間の影響が無視できるレベルであれば、この終端回路ネットワークは理想的に動作する。
受信等化フィルターに有用
定抵抗終端回路は、このほかにも多くの回路構成が考えられる。一般理論によれば、インピーダンスの関係式がb=Z02/aで記述できる場合、CINを回路ネットワークaで、L2を回路ネットワークbで置き換えることが可能であれば、回路全体の入力インピーダンスは周波数に依存せずにZ0に等しくなるとされている。この注目すべき特性は、一般的な代数学を使って証明できる。ただし計算は極めて複雑で時間がかかる。ボーデ氏はこの理論を完成させるまで、ベル研究所の彼のオフィスでどれだけの夜を明かしたのだろうか。いまとなっては、想像する以外に方法はない。
この定抵抗終端ネットワーク回路に関する一般理論は極めて重要だ。特に、長い伝送線の終端に接続する等化フィルターを設計する場合に有用な理論である。まずインピーダンスaを注意深く設計することで、任意の等化機能を受信器の入力端子に構成する。次にインピーダンスbを利用して、回路ネットワークのバランスを取る。この結果、完ぺきな終端回路を構成できるようになる。
定抵抗フィルターは、カウアー(Cauer)・フィルターのような一般的な無損失のLCラダー・フィルターとはまったく異なるものである。無損失フィルターは、回路ネットワークを介して電力を通過させるか、もしくは電力を反射させ電源側に戻すような働きをする。一方の定抵抗フィルターは、回路ネットワークを介して受信回路へ電力を通過させるか、もしくはフィルター内のバランス回路に電力をバイパスし、そこで回路に悪影響を与えることなく電力を熱に変える。
(ハワード・ジョンソン*1))
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