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designfeature
2003年12月号
各種のモーターを熟知し、
用途に最適な品種を選ぶ


機械的な可動部の位置や速度などを制御する位置決め制御システムでは、適切なモーターを選ぶことが極めて重要である。ステップ(ステッピング)・モーターは雑音や振動は大きいが、システム・コストは低い。直流ブラシ・モーターとブラシレス直流モーターは滑らかな動作を実現できるが、位置決め制御システムを構成するには位置や回転数を検出するエンコーダーが必要になる。用途に最適なモーターを選べば、システムのコストや性能、使い勝手を大きく改善できる。(本誌)

チャック・リューイン* 米パフォーマンス・モーション・デバイセズ社
Chuck Lewin Performance Motion Devices, Inc.
 モーション(運動機構)制御エンジニアがシステムの性能を高めようとする場合、最も重要な仕事はモーターの選択である。どのモーターを使うべきかをエンジニアが熟知していれば、機械設計プロセスを簡略化でき、それに費やすコストを低減できる。さらに設計対象システムの性能を大きく改善できる(表1)
 モーション制御は、機械的な駆動において位置と速度、トルクを精密に制御するための技術であり、科学でもある。モーション制御システムは、DSP*のような数値演算機能と増幅器、モーターから成る(図1)。これら3つの要素で制御ループを構成する。ループ中の各要素を、コストと性能の点において最適化することが可能だ。しかし、どのような種類のモーターでもこの要素がすべて必要だというわけではない。モーターの種類が異なれば、電子的なフィードバック手法や制御機構が異なり、それによってシステム全体のコストや性能が変わる。
 位置決め制御システムでは、ステップ(ステッピング)・モーターや直流ブラシ・モーター、ブラシレス直流(永久磁石)モーターを使うことが多い。電気モーターはすべて、電磁界を利用してトルクを作り出す。ただしトルクの向きはモーターによって異なる。すなわち回転軸に沿って発生させるものと、平面上の直線方向に作り出すものである。しかし回転型であっても直線型であっても、トルクを発生させる基本原理は同じである。

コストが低いステップ・モーター

 ステップ・モーターは自ら位置を決めることができるため、基本的にはエンコーダー*を必要としない。しかし高精度な応用では、運転中の停止を検出するためにエンコーダーを追加する。
 ステップ・モーターは一般に、ローター(回転子)とステーター(モーター・フレームに固定される静止部分、固定子)に磁性材料を使わない。このため体積は大きくなるが、コストは低い。またステップ・モーターはブラシレスである。つまりローターに対して電気的にも機械的にも直接接触する部分を持たない。このような構造により、機械的なブラシや金属整流子で発生するアーク放電や物理的な摩耗といった問題が起きないことが大きな特長である。総じてステップ・モーターは、単位体積や単位重量に対するトルクが高い。
 このような特長がある一方で、ステップ・モーターには欠点がある。最も大きな欠点は、可聴周波数帯での雑音や、負荷に影響するような振動を発生することだ。マイクロステッピング技術や機械的なダンパー(緩衝材)はこれらの不要な振動を抑えるのに効果があるとされているが、問題を完全には解決できない。
 ステップ・モーターのもう1つの欠点は回転速度が低いことである。ほとんどのステップ・モーターは最高5000rpm(毎分5000回転)までしか期待できない。さらに、回転速度が高まるにつれてステップ・モーターから得られるトルクは急激に低下するという問題がある。加えて、ステップ・モーターは一般に数100W以上の出力領域では使えない。NEMA (米国電機工業会)*が定めたステップ・モーター規格では、フランジの寸法は17型(1.7インチ=43mm)と23型(2.3インチ=58 mm)、34型(3.4インチ=86mm)となっており、高出力モーターとして使うことが難しい。
 図2は、ステップ・モーターの駆動に使う電圧波形を示している。ステップ・モーターは多相信号で駆動する。つまり回転運動を起すために、複数のコイルを電気的に異なった位相で駆動させる必要がある。モーション・コントローラー回路がこの動作を認識していなくても問題はない。モーション・コントローラー回路が出力するステップ信号と方向指示信号を増幅器に入力すれば、増幅器でこれらのデジタル信号を正しい順番に変換してモーターの各コイルに電流を供給する。ほとんどのステップ・モーターは、2つのコイルを備えた2相駆動タイプである。しかし、3相や5相で駆動するものもある。
 ステップ・モーターは、転流*制御が不要だと考えているエンジニアが多いだろう。しかし実はそうではない。ステップ・モーターの業界では、増幅器に適用する転流技術を「フルステップ駆動」、「ハーフステップ駆動」または「マイクロステップ駆動」と呼んでいる。これらの名前は1電気サイクルの間に各モーターのコイルに供給する電圧レベル数に基づいて名付けられている。フルステップ駆動は「オール・オン」または「オール・オフ」の2段階を使う。ハーフステップ駆動は「オール・オフ」と「ハーフウエイ・オン」、「オール・オン」の3段階に分けている。マイクロステップ駆動は正弦波に近い信号を供給する。波形が正弦波に近づくほど制御精度が高まり、滑らかな制御が可能になる。
 いずれの駆動方法でも、駆動波形を電気的に前方または後方に進めることによりモーターは前進または後進するように回転する。1フルステップは電気角において90度進むことを意味する。一般的にステップ・モーターは、1フルステップ(電気角90度)が1.8度の回転角になるように設計されている。従って、モーターを1回転させるためには、1フルステップ当たり1.8度であるため、200フルステップが必要になる。
 マイクロステップ駆動方式では、位置決めの分解能(確度ではない)は、1フルステップ当たりのマイクロステップ数に、モーター1回転当たりのフルステップ数を掛けることで簡単に計算できる。従って、1フルステップ当たり64マイクロステップ数で、モーター1回転当たり200フルステップのステップ・モーターの場合、モーター1回転に対して1万2800個の位置を指定して回転角を制御できる。
 しかしステップ・モーターでは、分解能と確度は違う。ステップ・モーターは完全なリニア動作でなければ、完全に滑らかな動作をするわけでもない。従ってユーザーが指定した位置は、モーション・システムが移動する理論的な位置と一致しないこともある。

手軽に使える直流ブラシ・モーター

 直流ブラシ・モーターは位置決めを必要とするさまざまな用途や、速度制御、トルク制御といった用途に使われる。電動工具や台所器具のような日用品は、汎用モーターとして知られる直流サーボ・モーターを使う。直流サーボ・モーターは安価であり、ステップ・モーターと同程度の価格であることが多い。
 しかし、直流ブラシ・モーターだけでは位置を検出できない。位置決めが必要な用途では、エンコーダーを接続しなければならない。エンコーダーはコントローラーと接続し、コントローラーに位置情報をフィードバックする。コントローラーはPID*アルゴリズムなどのサーボ制御*方式を使い出力コマンドを生成する。
 直流ブラシ・モーターは1kWを超える高い出力を得ることができる。1万rpm以上の高速回転も可能だ。回転は滑らかで比較的静かである。しかし直流ブラシ・モーターは2つの大きな欠点を持っている。第1の欠点は転流を実行するために機械的な素子が必要なことである。例えばブラシを使うと摩耗したり、逆起電力による電気放電が発生することがある。第2の欠点は、単位体積当たりのトルク出力が比較的低いことである。これは、電流がローターに巻いたコイルを通じて流れるためである。熱力学の観点から見ると、ローターはモーター・フレームにしっかりと固定されているわけではない。従って、全体のエネルギー量のうち、ほんの一部しかコイルから取り出せない。このため、トルク出力が限られてしまう。
 直流ブラシ・モーターは、ローターを順方向または逆方向に回転させるために正と負の2つの信号を必要とする。正電圧を与えればモーターは正の方向に回転し、負電圧を与えれば負の方向に回転する。電流の転流は、内部の機械的接点を利用する。この結果、ローターの角度に応じて異なるコイルに次々に電流を供給することを可能にしている。直流ブラシ・モーターは、ローターの電気角/磁気角を、常にステーターの電気角/磁気角から90度ずらすことによって、ある磁界に対して最大のトルクが得られる(図3)

注目集めるブラシレス直流モーター

 ブラシレス直流モーターは、ここ数年大きな注目を集めている。多くの用途において、性能を犠牲にすることなくサーボ制御できるためである。ブラシレス直流モーターは比較的滑らかで静かな動作をする。転流のための機械的ブラシは不要である。さらに、トルクを発生させる電流はモーターのケースに直接固定したステーターを流れるため、発生した熱が即座に拡散する。きょう体の体積当たりのトルクは比較的大きい。これらの特長があるため、ブラシレス直流モーターは1kWを超える高出力の領域も含めて広い出力範囲で使える。高速回転も可能だ。3万rpmを超えるモーターもある。
 こうした長所がある一方で、短所がいくつかある。1つは、直流ブラシ・モーターと同様に、位置を検出するためにエンコーダーが必要なこと。2つ目は、大きなトルクを得るために希土類磁性材料が必要なことである。従って、直流サーボ・モーターやステップ・モーターよりも高価になる。3つ目は、外部回路で転流する必要があることだ。このため制御系の構成が複雑になる上に、ホール・センサー*の使用や、光エンコーダー・ディスク上に位相追跡用トラックを設ける必要がある。
 転流動作の制御は、ホール・センサーの出力に基づいて実行する。ホール・センサーはデジタル値の基準信号を出力する。このためコントローラーは、モーターの回転軸の角度に応じて、3つの位相コイルに適切なタイミングで電流を流すことができる。図4はブラシレス直流モーターの代表的な転流波形である。
 正弦波による転流は、ここ10年間で普及した高性能な方法である。この方法は、モーターのエンコーダーあるいはレゾルバー*を使い、連続的に変化する正弦波信号を生成する。3相のブラシレス直流モーターの場合、各相の駆動信号は互いに120度ずつずれている。正弦波転流は、ホール・センサーの出力信号が不連続にならないため、モーターの動きがより滑らかになるという長所がある。不連続になる場合には、サーボ制御の安定性に問題が生じることがある。

正しいモーターを選択する

 モーション・コントロールのプロジェクトを始める前に、エンジニアはシステムの要求条件を全体的に検討する必要がある。もちろん、この検討には制御システムのコストを含むモーターのコストも対象になる。さらに、PID/サーボ制御や外部転流などの制御系を強化し、ユーザー独自の使い勝手を追求することも重要である。
 この15年の間に、位置決め制御の業界を一変させる新しいタイプのモーターが2種類登場した。可変またはスイッチド・リラクタンス・モーター(バーニア・モーターとも呼ばれる)と交流誘導モーターである。
 ただしスイッチド・リラクタンス・モーターは最近開発されたモーターというわけではない。その歴史は機関車に初めて使用された1838年までさかのぼることができる。しかし、最近になってその低コスト性、高効率性、および可変速駆動能力が再認識され、使用頻度が高まっている。
 スイッチド・リラクタンス・モーターは磁石を使わない。通常は4端子モーターで、そのうちの3端子はコイルを駆動し、残りの1端子は高電圧電源線である。ステーターとローターの極数が違う(最も一般的なのはステーターが6つとローターが4つ)ため、転流制御は複雑になる(図5)。また、複雑な波形を使わなければ、振動と雑音が問題になる可能性がある。最近の制御技術を利用すればこれらの複雑な問題に対処できるが、それでも完全ではない。スイッチド・リラクタンス・モーターに位置決め機能を持たせるために電子制御回路を追加すると、このモーターは高価になる。当分の間、スイッチド・リラクタンス・モーターは、民生機器で使われるだろう。この市場で、最も近い競合相手である交流誘導モーターと、コストと可変速、効率の点で激しく競うことになる。
 交流誘導モーターは、位置決めを必要としない世界から必要とする世界へのもう1つの懸け橋となったモーターである。過去1世紀にわたって、「コンセントに挿すとすぐ回転するモーター」として広く使われてきた。交流誘導モーターはスイッチド・リラクタンス・モーターと同様に永久磁石を使わない。しかしスイッチド・リラクタンス・モーターと違い、単純な正弦波で制御できる。位置決めが必要な用途で最も一般的に使用されているブラシレス直流モーターと同様に、3端子3コイル構成のモーターである。しかし、ブラシレス直流モーターとは違い、位置決めモードではより複雑な磁束ベクトルを制御する必要がある。そのためにエンコーダーの追加が不可欠になり、システム・コストはかなり高くなってしまう。位置決めが必要な用途における利点が少なくなってしまう。
 モーション・プロセッサーと呼ばれている市販のモーション・コントロール・チップは、フロント・エンドとバック・エンドの2つの領域に分かれている(図6)。フロント・エンドは、一般的なモーション言語で設計できる制御部である。一方、バック・エンドはモーター特有の位相制御と信号生成の管理を担当する。モーション・プロセッサーの例として、米パフォーマンス・モーション・デバイセズ社が販売している「MC2340」がある。このプロセッサーは、標準的なモーション制御機能を備えている。具体的には、S字曲線の生成機能や、フィードフォワード*によるサーボ制御ループを使ったPID制御機能、複数のターゲット・ブレーク・ポイント*機能を備えている。このプロセッサーはブラシレス直流モーター用にオンボードの正弦波転流機能も持つ。このプロセッサーを使う場合、ユーザーは単純にモーター1回転当たりのエンコーダー数を指定すればいい。そうすればプロセッサーは転流を処理し、さらにパルス幅変調(PWM)信号を生成する。このプロセッサーと同じ製品群の中には、直流ブラシ・モーターやステップ・モーターに向けた品種もある。

用語解説 / 会社情報
チャック・リューイン*)
チャック・リューイン (Chuck Lewin)氏は、米パフォーマンス・モーション・デバイセズ社で社長を務める。モーション制御に関する仕事に12年間従事し、DSPを使ったモーション制御システムの設計を8年間担当している。同氏は50本以上の論文を執筆した。この論文の多くに、モーション制御システムの構築に対する実用的なアドバイスが収められている。
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【DSP】
digital signal processor
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【エンコーダー】
encoder
モーターの回転数を測定する際に利用するセンサー。モーターの軸にスリットを設けたディスクを取り付け、これに光を照射する。モーターが回転するとスリットが光を遮る。この結果、回転速度に応じた光パルス信号が得られる。
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【NEMA】
National Electrical Manu-facturers Association
米国電機工業会。電力機器や電源、モーター駆動機器などを対象に標準化活動を行っている。ホームページはhttp://www.nema.org/
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【転流】
commutation
モーター内にある複数の巻線(コイル)間で、電流を流す巻線を次々と切り替えること。
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【PID】
PID
Pはproportional(比例)、Iはintegral(積分)、Dはdifferential(微分)を示す。比例、積分、微分を利用した位置制御方式の1つ。
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【サーボ制御】
servo control
制御対象を測定し、基準値と比較して、その差を解消するようにフィードバックをかけて制御する方式のこと。
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【ホール・センサー】
Hall sensor
微小な磁気を検出するためのセンサー。ホール効果を利用する。ホール効果とは、金属や半導体の板に電流が流れているときに、電流に対して垂直に磁界をかけると、両者に垂直な方向にホール電圧と呼ばれる電圧差が現れる現象。この電圧を監視することで磁界の有無を検出する。
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【レゾルバー】
resolver
2相の交流モーターに似た構造を有する回転角度センサー。ステーターとローターの両方に巻線方向が互いに直交する2つのコイルを組み込む。この状態でステーターのコイルに交流電流を流すと、ローターの回転角によってローターの2つのコイルが出力する交流電圧の位相が変化する。この位相情報を取り出すことで、ローターの回転角を求める。
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【リラクタンス】
reluctance
磁気回路の抵抗。透磁率と磁気回路の断面積に反比例する。
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【フィードフォワード】
feedforward
入力情報の変化によって影響が制御系に現れる前に必要な訂正制御を行う方式。制御量と目標値を比較して、これらを一致させるように制御する。
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【ブレーク・ポイント】
break point
プログラムの実行を止める場所のこと。
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