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designideas
2003年11月号
1つのICで±10の利得を設定できる回路

モシェ・ガーステンヘイバー、チャールズ・キッチン 米アナログ・デバイセズ社
Moshe Gerstenhaber, Charles Kitchin Analog Devices, Inc.
  自然界のさまざまな情報を電気的なアナログ信号として検出し、デジタル信号に変換して記録するシステムでは、検出したアナログ信号をA-D変換器のフルスケール入力まで増幅する回路が必要である。
 ほとんどの場合、増幅回路には利得誤差や温度ドリフトが存在する。例えば、オペアンプに2個の抵抗器を組み合わせて利得を設定する増幅回路を考えてみる。この方法では利得の設定精度は高くない。すなわち利得の確度や温度ドリフトがかなり大きくなってしまう。抵抗値の誤差が1%と標準的な抵抗器を使用した場合、利得誤差は2%に達する可能性がある。また温度によっても利得は変化してしまう。抵抗器ごとに抵抗値の温度特性が異なるからだ。設定した利得の精度を高めるには複数の抵抗器を集積したネットワーク抵抗器(抵抗アレイ)を用いればよい。しかしこの方法では部品コストが高く、実装面積が大きくなってしまう。
 図1および図2に示す回路では、小型のμSOIC*パッケージに封止した計装用アンプIC「AD628」(IC1)を1つだけ使う。必要な抵抗器は計装用アンプICに内蔵してある。外付け部品は不要だ。利得の設定精度を高めつつ、部品コストと実装面積を抑えられる。
 IC1は、2つの増幅器を内蔵している。すなわち、利得を0.1に固定した差動増幅器A1と、A1の出力を入力としたバッファー・アンプA2である。A2の利得は可変だ。IC1の端子のうち、適当な端子を定電位に固定したり、接地に接続したりすることで、利得の値を設定できる。 
 図1は、回路全体の電圧利得が10になるようにIC1の端子を接続した例である。この例では入力信号VINをA1の入力端子ではなく、VREF端子(3番端子)に接続した。このときA1の非反転入力の電圧値はVIN×(100kΩ/110kΩ)、すなわちVIN×(10/11)である。一方、A2の反転入力であるRG端子(6番端子)は接地に接続した。
 A2の出力に設けた帰還ループは、A2の非反転入力の電位を強制的に0Vにするように働く。従ってA1の出力も0Vになる。またA1の反転入力の電位はA1の非反転入力の電位に等しい。これらより、A2の出力電圧VOUTは次の式で求められる。

 この結果からこの回路全体の利得が10になることが分かる。
 図2は、回路全体の電圧利得が−10になるように接続した例である。この例では入力信号VINをA2の反転入力端子に接続した。動作は図1の回路と同様である。ただしこの例では、A2はVINの位相を180度回転させる。
 VREF端子を接地に接続したので、A1の非反転入力の電位は0Vである。帰還ループによって、A1の反転入力の電位も0Vになる。A1の利得は0.1に固定してあるので、A1の反転入力の電位を0Vにするために必要なA2の出力電圧VOUTは−10×VINになる。
 2つの接続例は入力インピーダンスがそれぞれ異なる。利得を10に設定する接続、すなわちVREF端子(3番端子)に信号を入力する場合は、接地に対する入力インピーダンスは110kΩになる。利得を−10に設定する接続、すなわちA2の非反転入力端子(6番端子)に信号を入力する場合は約50GΩである。
 いずれの回路でも、利得誤差は最大0.1%に抑えられる。利得の温度係数も最大5ppm/ ℃だ。−3dB帯域幅は入力信号の電圧振幅が10mVのときに約110kHz、100mVのときに約95kHzである。回路の電源としては±15Vの2電源を用意するのが適当だ。ただし±2.25〜±18Vの範囲の2電源でも動作する。

用語解説 / 会社情報
【μSOIC】
Micro Small Outline IC
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