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2003年8月号
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差動伝送におけるEMI低減法
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差動信号は、シングル・エンド信号よりも放射雑音(EMI)のレベルを抑えられる。これは差動信号が有するメリットの1つである。放射雑音を抑えられる理由は、差動ペア配線を流れる相補信号によって発生する電磁界が互いに打ち消し合う(キャンセルする)ためだ。相補信号が完全に平衡状態にあれば、このキャンセル効果は配線の間隔で決まる。配線の間隔を狭くすれば、キャンセル効果は高くなる。しかし平衡が完全でない場合は違った結果になる。配線の間隔では決まらない。キャンセル効果は、差動ペア配線のコモン・モード・バランスで決まる最小値に限定されてしまう。
多くのデジタル・ドライバー回路は、コモン・モード・バランスが決して良好とは言えない。このため差動ペア配線による放射雑音は、差動モードよりもコモン・モードの方がはるかに寄与度が高い。こうした状況では、差動ペア配線の間隔をある程度以上狭めても、放射雑音の観点では何の効果も得られない。
問題はコモン・モード
図1は、差動モードで動作する2つのマイクロストリップ配線から放射される電磁波の利得(放射利得)の理論値を、配線間隔の関数としてプロットしたものである。測定アンテナは配線を実装したボードと同一の平面上にあり、配線から10m離れた場所に配置したと仮定した。これは最悪のケースを想定したものだ。
一方の配線から放射された、振幅が等しく位相が逆の電磁波は、もう一方の配線から放射された電磁波を打ち消す。このキャンセル量は2πs/λの関数で表現できる。ここでλは最大周波数の自由空間における波長、sは配線間隔である。この2つの値が、ほぼ相補関係にある2つの電磁波の相対的な位相関係を決める。キャンセル量はr/r+sの関数でもある(rは配線とアンテナの距離)。この比は、相補関係にある2つの電磁波がアンテナに到達する際の相対的な強度を表す。図1の中に記述した式は、差動モードにおけるキャンセル効果は配線間隔が狭まるとととも大きくなり、放射雑音のレベルが下がることを示している。
次にコモン・モード信号による放射雑音を考えてみる。コモン・モード信号を原因とする、2本のマイクロストリップ配線から放射される雑音は、互いに打ち消すのではなく、逆に強め合う。従ってコモン・モード信号による放射雑音は、配線間隔にほとんど依存しない。このためコモン・モード・バランスが良好なドライバー回路を使った場合を除けば、配線間隔で放射雑音を調整することは難しい。
配線間隔は0.5mmで問題なし
0.5mm間隔のマイクロストリップ配線ペアを完全な差動モードで動作させたと仮定する。この配線ペアから放射される雑音の利得(理論値)は、FCC*クラスBの測定条件においては、1GHzで−40dBになる。この値はシングル・エンド配線で同じ信号を送った場合よりもはるかに小さい。さらに配線間隔を狭めれば、放射雑音はもっと低く抑えられるはずである。しかし実際は、放射雑音の利得を−40dBに抑えることはかなり困難である。なぜならば、差動ドライバー回路が出力する2つの信号のバランスが影響を与えるからだ。例えば、出力バランスを99%確保しても、1%のコモン・モード成分が存在することになる。この成分を原因とする雑音が放射されてしまう。従って、差動ペア配線の間隔をゼロにしても、放射雑音の利得を−40dBに抑えることはできないだろう。
ただし差動ペア配線の間隔が0.5mmでも、放射雑音は実用上問題のないレベルに抑えられる。一般にプリント基板で主に問題になるのはコモン・モード信号による放射雑音である。放射雑音低減のために、差動ペア配線の間隔を0.5mm以下に狭める苦労をする必要はない。
(ハワード・ジョンソン*1)
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| 用語解説 / 会社情報 |
【FCC】
Federal Communications Commission
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*1)
ハワード・ジョンソン(Howard Johnson)氏 同氏は、「High Speed Digital
Design:A Handbook of Black Magic」(Prentice-Hall, 1993)の著者。オックスフォード大学などで、デジタル・エンジニアを対象にしたテクニカル・ワークショップを頻繁に開催している。ご意見は、次の電子メール・アドレスまで。www.sigcon.comまたはhowie@sigcon.com。
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