能動デバイスの扱いはますます困難になり、性能を引き出すためには周辺回路の電気的/機械的な細かな設計にまで注意が必要になりつつある。このため新たな問題が生まれている。「最高の性能を達成するために、集積度を高める必要があるのか」という問題である。
少なくとも現時点では、答えは「ノー」である。ディスクリート部品を使っても、データ・シートに記載された理想に近い結果を得ることができるからだ。しかし現実には、集積度を高めた製品が次第に有力な選択肢になりつつある。例えば、米インターナショナル
レクティファイアー社が販売している組み立て済みの電力変換モジュールや、米フェアチャイルドセミコンダクター社が開発中のマルチチップ・パッケージ品や積層チップ品が代表例だ。このほか
米オン・セミコンダクター社*なども開発に取り組んでいる。
今後の製品開発が向かうべき指標の1つに、
米モトローラ社*のインテリジェント・ハイサイド・スイッチIC「MC33982」がある。このICは従来からあった「スマート・パワー(smart
power)」の概念を取り入れたものだ。現在の製造プロセス技術を導入することで再検討が加えられている。
かつて、1つのデバイスにインテリジェントな回路と大電力を扱う回路を作り込もうとする試みは、大電力回路で発生する熱に悩まされた。損失が大きいパワー・スイッチの近くに制御回路を配置しなければならないからだ。そこでモトローラ社では、非常にオン抵抗が低い、つまり発熱の非常に少ないパワー・スイッチを実現する新プロセス技術で製造することでこの問題を軽減した。
MC33982は、オン抵抗が2mΩのスイッチを搭載する。6〜27Vの電圧で動作し、連続で60Aまでの電流を出力できる。放熱に関する特性は、最大動作温度やパッケージの熱抵抗とヒート・シンクの熱抵抗から計算して求める。最大電流は接合部(ジャンクション)の温度から決定される。パッケージはリードレスで、外形寸法が12mm×12mm×2mmの小型表面実装タイプである。大電流を外部に流す経路は、パッケージ裏面部の大半を占める端子を利用する。このため電流と熱の問題に対処することが可能になる。出力電流が30A(出力電圧12Vで負荷が400W)のときは、接合部とヒート・シンクの温度差は0.5℃である。
このICの制御は、SPIバスを介して行う。具体的には、チップのオン/オフやPWMモードの制御、過電流の過電圧の報告、ウオッチドッグ・タイマー機能、スルー・レート制御などを実行できる。さらにプログラム可能な「集積化ヒューズ」機能を内蔵している。この機能はモーターのほか、抵抗性/容量性負荷で使用できる。同社のジャンクリストフ・ボデ氏は、「高密度なTMOS技術を採用することでパワー・スイッチを製造し、25℃で1.7mΩというオン抵抗を達成した」と説明している。このICは、内部接続にワイヤ・ボンディングを使う。ただし複数のワイヤを並列に接続することで大電流動作を可能にした。
同社はこのICを並列に6個使用して、連続動作時は150A、50ms間におけるピーク動作時は800Aという電流を処理する自動車用のスターター・ソレノイドを構成するデモを行った。ボデ氏は「このICは、電力と熱の伝導にリフローはんだ付けしたパッドを使う。こうしたスタイルは、例えば自動車の電力制御を扱う多くのユーザーには新たな取り組みになる。このため、製造技術として不可欠なはんだ付け技術に移行させる必要性が出てくる」と念を押す。「集積化に向かう傾向が続く限り、当社はパワーMOSFETとアナログ回路の集積化を行うだろう」(ボデ氏)という。しかしボデ氏は、こうしたICにマイコンも集積することについては否定的だ。この理由として同氏は、「将来は、1つのマイコンを使って、複数のスイッチを制御するようになる」ことを挙げている。
降圧型のDC-DCコンバーターにおいて、実装面積を最小に抑えたいと考えている技術者には、オランダのフィリップス・セミコンダクターズ社が最近製品化した「PIP250」の検討を勧める。このICはシングル・チップの降圧型DC-DCコンバーターである。出力電流が7〜15Aの範囲で、入力電圧5Vを出力電圧1〜1.3Vに降圧する。集積した機能は、PWM制御回路と駆動回路、制御用FET、同期用FET、ショットキー・ダイオードである。パッケージは外形寸法が10mm×10mm×0.85mmの「HVQFN68」を採用した。このパッケージは、熱特性を改善したプラスチックQFPである。制御信号の接続は、パッケージの4端に設けた端子を使い、電力と熱の伝導にはパッケージ裏面部の大きな領域を利用する。