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signalintegrity
2003年6月号
ディファレンシャルからコモンへの変換

 平衡伝送チャンネルに不平衡回路素子が存在する場合、ディファレンシャル・モード*1)の信号とコモン・モードの信号が結合する領域が伝送線路上に生まれる。この結合によって、良好なディファレンシャル・モード信号の一部をコモン・モード信号に変換してしまう。もしくは、この逆の変換が発生する。
 こうしたディファレンシャル・モードからコモン・モードへの変換は、LANアダプターの設計時などでよく問題になる。例えば、図1においてトランスの出力側巻線で、A点と接地の間、B点と接地の間にそれぞれコンデンサーC1が接続されていると仮定する。この2つのコンデンサーの静電容量が完全に等しければ(さらにより対線ケーブルと出力トランスが完全に対称形であるとする)、ケーブル上のディファレンシャル・モード信号は等しくなり、2つのコンデンサーに流れる電流は逆方向になる。
 すなわち機器のきょう体において、この2つの電流は完全に相殺される。完全に相殺されるということは、より対線ケーブルと周囲のきょう体の間には、循環電流が存在しないことを意味する。しかし、実際にはコンデンサーの静電容量が完全に等しくなることはあり得ない。

2pFの違いで大きな影響

 コンデンサーC2(2pFと仮定)は、A点とB点の寄生容量に対する不平衡成分である。このコンデンサーに流れる電流を算出し、電流の経路を確認することで、この電流が問題になるかどうかを判断できる。10Base-Tに対応したイーサーネットを想定する。この場合、スイッチング時間を25nsにすると、ケーブル上の駆動信号振幅は約2Vppになる。従って、コンデンサーC2に流れる電流は次式で求められる。

 i(t)PEAK=C2 dv/dt = (2pF) 2V/25ns =160μA

 この電流はコンデンサーC2を通って、機器のきょう体へと流れ込む。機器のきょう体は、緑色の接地ワイヤ、または機器のきょう体と大地の間の寄生容量を介して大地と電気的に結合している。大地とケーブルには容量性の結合があるため、電流はより対線ケーブル上をトランスに向かってコモン・モード電流として流れる。従って、電流ループを形成することになる。
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 前述のように、A点と接地の間とB点と接地の間のコンデンサーの静電容量が完全に同じ平衡負荷であれば、コモン・モード電流は発生しない。なぜならば、2つのコンデンサーに流れる電流は相殺されて、この伝送システムにはコモン・モードに関連するものが存在しなくなるからだ。図1に示した例では、容量性負荷が不平衡であるため、コモン・モード電流が発生する。
 不平衡な容量性負荷がある場合、その静電容量が2pF程度と小さいものでも大きな問題になる。電磁気的に遮へいされていないケーブル上に160μAの高周波のコモン・モード電流が流れると、国際的なEMI*規格に明らかに違反してしまうからだ。
(ハワード・ジョンソン*2))

用語解説 / 会社情報
*1)
ノーマル・モードと呼ぶ場合もある。
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【EMI】
electromagnetic interference
電磁波妨害
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*2)ハワード・ジョンソン(Howard Johnson)氏
同氏は、「High Speed Digital Design: A Handbook of Black Magic」(Prentice-Hall, 1993)の著者。オックスフォード大学などで、デジタル・エンジニアを対象にしたテクニカル・ワークショップを頻繁に開催している。ご意見は、次の電子メール・アドレスまで。www.sigcon.comまたはhowie@sigcon.com
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