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designideas
2003年6月号
10G光モジュール、
3つの仕様が乱立へ


小型で、活線挿抜可能な10Gビット/秒対応の光トランシーバー・モジュールの進化の軌跡が3つの方向に分かれ始めた。「Xpak」と「X2」は、すでにアーキテクチャーが確立している従来の共通仕様「Xenpak」に由来するもので、これに非常に似た仕様である。3つ目の「XFP」は小型であることが特徴だ。しかしチャンネル設計に新たなノウハウを必要とする。どの仕様が、設計中の機器に適合するのか。さまざまな観点から検討する必要がある。

ジョシュア・イズラエルソン
Joshua Israelsohn
 現在、10Gビット/秒のデータ伝送速度に対応した通信ノードに注目が集まっている*1)。その背景には2つの理由が考えられる。1つは、データコム(データ通信)とテレコムの境が消えたこと。もう1つは、複数のプロトコルに対応できる物理層技術が開発されたことである。
 この市場が1つ、もしくは2つの入出力アーキテクチャーと外形寸法に収束する兆しを見せたのは、つい1年前のことだ。しかしその数四半期後には、新たな物理層を採用した3つの光トランシーバー・モジュールが登場した。この結果エンジニアは、設計中のアプリケーションに最適なモジュールを決める際に、多くの疑問について自問自答する羽目に陥っている。この混乱は、さまざまな影響をエンジニアに与える。複数の物理層を区別するという技術的な問題に始まり、ある物理層を採用する際には、その物理層の長期的な見通しまでを検討する必要があるだろう。

MSAが普及を促進

 光インターフェースの入出力部をモジュール化するメリットは多い。データコムやテレコムのポート(入出力部)の開発や製造、保守の面で多くの恩恵をもたらす。いくつか例を挙げよう。
●通信ポートをモジュール化すると、ライン・カード上で高い周波数で動作するアナログ回路の設計やプリント基板材料、製造、テストなどの問題を、それ以外で発生する問題と分離できる。
●通信機器ベンダーは、組み立て後の工程で、最も高価なライン・カード(アダプター・ボード)を取り付けられるようになる。この結果、製品コストを最小限に抑えられ、在庫管理費用を低減できる。
●通信機器ベンダーは、必要に応じて必要な通信密度(ポート数/実装面積)のカードを通信装置に組み込める。このため不必要な通信容量への投資に悩まされない。
●相互接続性に関する問題は、モジュール・レベルで分離できるようになる。このため、システム・ベンダーやボード・サプライヤー、ボード・ユーザーは、すでに相互接続性が実証されている入出力ポートを使って動作を確認できる。
●あらかじめ定義され、すでに市場で受け入れられている認定制度がある。このため新規メーカーが参入しやすく、競争が促進される。さらにカスタム設計の場合に比べて、大規模なサプライ・チェーンの確保が約束される。
 モジュール化した光トランシーバーには、SFF(small form factor)やSFP(small form factor pluggable)、200PIN、300PINなどがある。いずれもMSA*(マルチソース・アグリーメント)の元で、早くに複数のメーカーが開発したものだ。こうしたモジュールが登場したことで、光技術が市場で受け入れられるための障壁が低くなり、装置ベンダーが製品を市場に投入するまでの時間を短縮できるようになった。
 MSAにはもう1つ功績がある。多くのモジュール・メーカーや部品ベンダーを、1つの共通仕様に一致させる新しいモデルを作り出したことだ。共通仕様は、電気的、光学的、機構的なものを含む。手がける範囲は、標準化団体よりも広い。
 数年前に光トランシーバー・モジュールの共通仕様「Xenpak MSA*」が発表された。(図1)この出来事は、光トランシーバー・モジュールの進化において1つの重要なステップに位置づけられる。なぜならば、ライン・カードやそのほかのカードの動作を妨げることなく、モジュールの差し替えを可能にしたからだ。すなわちフロント・パネルにおける活線挿抜(ホットプラグ)を可能にしたのだ。ただし、こうしたモジュールは、ボードに搭載するタイプのモジュールには必要なかった機能(電気的、機械的なものを含む)をいくつか必要とする(pp.52-53の「光ファイバー通信システムの保守技術」参照)。

Xenpakの小型版

 Xenpakの外形寸法は、フロント・パネルにおける活線挿抜ができない従来のモジュールに比べれば、確かに魅力的である。しかし、市場が要求する外形寸法には対応しきれていない。Xenpakはプリント基板の占有面積は小さいが、10Wの消費電力に耐えられるように設計されているためにモジュールの背が高い。このため実装はモジュールをプリント基板に貫通させる形になり、プリント基板のカットアウト(くり抜き)が必要になる。カットアウトは、プリント基板の製造コストを増やすだけでなく、貴重な配線スペースを減らしてしまう。こうした要因が、Xenpakの外形寸法に対する批判の的になっている。これに加えて、Xenpakで採用されている機能分割の手法は、確かに成功しているが、決して唯一絶対の解ではない。
 2002年に、光トランシーバー・モジュールに関する2つのマルチソース・アグリーメント(MSA)仕様が新たに発表された。「Xpak MSA*」と「X2 MSA*」である。いずれもXenpakを踏襲したもので、非常に良く似ている。高密度のライン・カードやPCIアダプター、そのほかの小型インターフェース・カードに向けた。外形寸法が小さいことが最大の特徴である。
 Xpak MSAは、独インフィニオンテクノロジーズ社*米インテル社*米ピコライト社*によって策定された。その後参加企業を募り、現在は27社程度が参加している。このモジュールの仕様は、Xenpakに非常に良く似ている。すなわち入出力チャンネルをモジュール化し、これを1つのセグメントとした。セグメントの境界は、物理層とMAC*層の間に設定した。この2つの層の接続には、4レーンのXAUI*を使う。
 Xpakのピン配置はXenpakと同じだ。しかし最新のXenpak規格では、1対のクロック信号が削除された。従って、この点が違いになった。Xpakはクロック端子を備えているため、10GFC(10Gビット/秒対応のファイバー・チャネル)や10GbE(10Gビット/秒対応のイーサーネット)、OIF*が定めたSFI*4-P2にも対応できる。さらにSFI4-P2に向けたピンをもう1つ用意している。
 Xpakモジュールの高さは、Xenpakほどではない。このためプリント基板のカットアウトは不要で、PCIカードの表面に普通に実装できる(図2)。Xpakには2つのバージョンがある*2)。両者共に、実装(基板占有)面積は約36.07mm×約75.69mm(1.42インチ×2.98インチ)で同じである。高さの違いで2つのバージョンがある。1つは低背バージョンで、プリント基板の表面からの高さは最大約9.93mm(0.391インチ)である。PCIカードの規格仕様が搭載部品に求めている高さ制限に収まる。この低背バージョンは、4Wの消費電力まで対応できる。従って、PCIのネットワーク・インターフェース・カードや、インフィニバンドのHBA(ホスト・バス・アダプター)やTCA(ターゲット・チャンネル・アダプター)などに適用可能だ。
 こうした小型カード以外の長距離伝送用途に向けたのが高背バージョンである。これには冷却フィンが付いており、全体の高さは最大約22.38mm(0.881インチ)である。高背バージョンのモジュールでは、実装面積や、プリント基板への取り付け部の設計を、テレコム装置向けプリント基板の端部や中央に実装することを想定して決めた*3)。SAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)や交換局などに向けた装置の場合は、多くのチャンネルの実装が必要になる。この場合は、きょう体密着(belly to belly)実装と呼ぶ配置を利用すれば、431.8mm(17インチ)幅のプリント基板に20個のモジュールを実装できる。
 Xpakの保持機構は、SFPで採用した機構に似ている。すなわち回転ワイヤー・ベールを使った機構で、モジュール・ホルダーを使って取り付ける。光ファイバー・ケーブルをXpakモジュールに接続するときにケーブルのコネクターを使って、ワイヤー・ベールが実装位置から外れることを防ぐ。ケーブルを外すと、簡単なラッチ機構によってモジュールを交換できる。このため2つの専用ちょうねじを使って保持するXenpakに比べると、モジュールの交換に要する時間は短くなる。
 さらにXpakのラッチ機構は、EMI*のシールド用に使われている導電性ガスケットに一定量の圧縮力を加えることができる。Xpakにはもう1つのモジュール実装オプションがあり、これを使えば塗装面があるシステムにおけるEMI遮へいを可能にする。
 光ファイバー・モジュールの外形寸法や実装方法、実装面積、冷却方法には、さまざまなものが用意されている。装置メーカーのエンジニアは、この中から必要なものを選択し、入出力部の熱設計を行う。熱的な挙動をシミュレーションするという手段もある。この場合は、シミュレーション結果と実際の測定との相関を取る必要性がある。
 Xpak MSA仕様の付録(Appendix)A1は、熱測定を行うための有用な入門書である。簡単なテスト・チャンバーの外形寸法や、テスト・チャンバーへの取り付け方法、温度測定やエアーフロー測定を行うときの推奨位置、モジュールの動作条件などが記載されている。この付録の著者も指摘している通り、この付録はモジュール・メーカーと装置メーカーのエンジニア同士で、放熱に関する要件を議論する際のガイド役として利用できる。

もう1つのXenpakの小型版

 Xpak MSAの発表後すぐに、別のコンソーシアムであるX2 MSAグループが新たなモジュール仕様を発表した*4)。このグループは8社から成る。米アギア・システムズ社*米アジレント・テクノロジー社*米JDSユニフェーズ社*三菱電機*NEC*米オプネクスト社*スウェーデンのオプティリオン社*米タイコ・エレクトロニクス社*である。なおアギア・システムズ社は、X2 MSAの調印後に、同社の光エレクトロニクス事業を米トライクイント・セミコンダクター社*に売却してしまった。
 X2もまた、Xenpakの電気的インターフェースを踏襲する。ただし違いが数点ある。1つは、ポート・アドレス空間のビット数である。X2は、XenpakやXpakに比べて1ビット少ない4ビットである。もう1つは、X2では電源ピンの数を減らして、電気的な接地面ときょう体を共通にした点である。このほかX2では、Xenpakと同様に4つのベンダー固有ピンを用意している。光インターフェース側に関しては、10Gビット/秒のイーサーネットやSONETのOC-192、10Gビット/秒のファイバー・チャネルなどをサポートする*5)。
 X2とXpakの外形寸法は、良く似ている(表1)。しかし機構面の互換性はない。ガイド機構に、異なる手法を採用しているからだ。

表1 モジュールの外形寸法
表中のピッチとは、モジュールの中心点と、隣り合ったモジュールの中心点との距離を指す。
MSAの名称 幅(mm) 長さ(mm) 高さ(mm) ピッチ(mm)
Xenpak 36.07 120.9 17.4 47.5
Xpak(low) 36.07 75.69 9.8 41.91
Xpak(tall) 36.07 75.69 22.25 41.91
X2(low) 36.07 76.2 11 43.94
X2(mid) 36.07 76.2 13.39 43.94
X2(high) 36.07 76.2 22.86 43.94
XFP 18.34 71.12 8.51 23.5

 Xpakでは、高さが異なる2つのモジュールに異なるガイド機構をそれぞれ採用している。一方、X2は高さが異なる3つのモジュールに共通のガイド機構を採用した*6)。米アジレント・テクノロジー社は、この点をX2のメリットとして挙げている。このメリットとして理解しやすい例は、ガイド用部品の在庫が減ることである。このほかのメリットがあるとすれば、それは以下の2つの条件を満足した用途に当てはまる。すなわちプリント基板の中央に実装せざるを得ない場合か、もしくはモジュールの位置がパネルのカットアウトによって、ある特定の高さになる場合である。この場合は、X2では複数タイプのモジュールを混合して使えるため、大きなメリットになるだろう。
 しかしXpakでは、最終ユーザー(装置メーカーのエンジニア)が高さの異なるモジュールを混在させないようにしているという見方もある。このメリットを決して過小評価してはならない。高さの異なるモジュールが混在すると、通信装置内の空気の流れに問題が発生する場合があるからだ。この熱的な影響については、装置メーカーのシステム・エンジニアでは、すぐに理解できない可能性が高い。
 アジレント・テクノロジー社では「X2はEMI特性と熱特性の点で優れている」と主張する。X2ではフランジに対するEMIガスケットに、Xenpakで使っているものを流用できる。従って、外形寸法が大きいモジュールのEMI遮へい特性を受け継いでいると言える。一方、XpakのEMI遮へい部の形状はもっと小さい。これで十分であるかどうかは、両方のMSAグループが実際に示すべきで、推測するものではない。
 ただし両グループともに、EMI特性を評価する作業は大変だろう。外形寸法や動作条件などの評価方法の小さな差異が、大きな違いとなって現れるからだ。EMIに求める要件は、応用分野に強く依存する。従って、多くの用途では、固有のEMI評価基準を採用している。EMI特性を公表したり、比較したりする場合は、評価基準を特定するか、その評価方法を資料で提示する必要がある。
 XpakとX2のモジュールの違いは、目で見れば明らかだ。この違いが、熱特性の違いを示唆している。しかし熱特性が実際にどれだけ違うかについては、見た目だけでは分からない。ベンダーは、自社製品の優位性を主張する。これらの主張は、いくつかの用途については当てはまるかもしれない。しかし熱特性についても、評価条件の特定などは行われていない。ベンダーが動作条件や評価基準をはっきり示し、測定結果を検証するまでは、こうしたデータは光トランシーバー・モジュールの検討時の参考にとどめることを勧める。
 ところでX2が公表している資料には機械的な図面しか掲載されていない。このためXpakとX2の比較には、あまり役立たない。X2グループが最初に仕様を発表してから9カ月以上経過するが、ピン配置のリストを付けたデータ以外は更新していないようだ。

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Xenpakの系統以外も登場

 3番目のMSAグループは「XFP MSA*」である。これはXenpakのアーキテクチャーと4レーンのXAUIから離れ、独自の手法を採用したモジュールである。XFPでは、単一レーンのシリアル・アーキテクチャーであるXFI(10Gビット・シリアル・インターフェース)*を使って接続する。モジュールにはSERDES(シリアライザー・デシリアライザー)*が不要なため、小型で安価になる。しかも消費電力が少ない。ただしSERDESがないため、プリント基板上の伝送線路はほかのMSAの4倍に相当する速度で動作させる必要がある。
 設計対象の問題がポートの収容密度にある場合は、XFPは非常に強力な解になる。具体的には431.8mm(17インチ)幅のプリント基板の片側に16個のモジュールを搭載できる。さらにきょう体密着(belly-to-belly)実装を行えば、同じ幅のプリント基板にこの2倍のモジュールを搭載できる。
 XFPとXenpakの小型版(XpakとX2)には、多くのトレード・オフがある。このため採用に当たっては熟慮が必要だ。XFPとXpak、X2のパラメーターを比較する際には、必要とするチャンネル数の総数を比較しなければならない。XFPは、ほかのMSAとは異なるチャンネル分割法を採用している。このため単にモジュールだけを比較するのではなく、1つのチャンネルの隅から隅まで、開発コストや材料コスト、消費電力、製造コスト、保守コストについて調べなければならない。
 光トランシーバーのモジュール化による恩恵に関する話題に戻る。XFP仕様は、各チャンネルごとにSERDES機能を搭載するのではなく、1つのプリント基板に1つだけ載せればよい。このためFR-4基板上の高速通信に特化した企業が製品化しているマルチチャンネルのSERDESチップと、その企業が提供する技術を利用できる。この柔軟性はコストを若干下げる方向に働く。さらにほかの仕様では対抗できないような、高いチャンネル密度を実現できる可能性がある。
 単一レーンを使うXFIは、4つのレーンを利用するXAUIに比べて、配線レイアウトの面積が小さくなる。さらに差動配線ペアをレイアウトする際に、8本の伝送線路をクラスター状にまとめる必要がないため、等長配線や曲がり角数を等しくするといった作業が簡単になる。ただし、FR-4基板を使って、10Gビット/秒の伝送線路をレイアウトする作業は、2.5Gビット/秒の場合よりも格段に難しい。従って設計チームは、高品質な高速ボードを実現するために必要な技術リソースを確保することに努めなければならない。
 XFIは、プロトコルに依存しないインターフェースである。データ伝送速度は9.95G〜10.7Gビット/秒に対応する。ファイバー・チャネルやOC-xに対応したSFPモジュールと同様に、2線式のI2Cシリアル・インターフェースを備えている。これを使って動作の監視や制御といった機能を実現できる。さらにいくつかの制御線も用意した。リセットや、モジュール検出、割り込み、モジュール・ノット・レディなどの信号を出力する。

間もなく搭載が始まる

 興味深いことに、XpakとX2のMSAグループのメンバーは、ほとんどすべてがXFPのメンバーである。従って、10Gビット/秒の光トランシーバー・モジュール市場は2つに分かれて行くように見える。すなわちXenpakより外形寸法が小さいXpakとX2が占める市場と、さらに外形が小さなXFPが占める市場である。同じ市場でぶつかるXpakとX2は、悪名高き「VHS対ベータマックスの戦い」を再現するかもしれない(p.54の「決定木の枝の上で足場を失うな」参照)。
 XpakとX2の市場における採用が遅れれば、XFPを使ってFR-4基板上で10Gビット/秒の信号を扱えることを装置設計者に示す時間をモジュール・メーカーやSERDESチップ・メーカーに与えることになる。装置メーカーに新たな技術的な負担を掛けることになるが、XFPは普及に向けた1つの足場を確保できるようになる。
 今回紹介したMSAに準拠したモジュールは、現在各メーカーがサンプル出荷を始めている。このほか、いくつかのメーカーが2003年第2四半期には出荷を始める予定だ。ほとんどのメーカーは、量産価格を設定していない。今後数カ月の間には価格を設定するはずである。購入する際は、メーカーに直接確認した方が良い。
 最近、米国の市場調査会社であるiSuppli社*が発表した報告によれば、10Gビット/秒に対応した光トランシーバー(トランスポンダー)の価格は現在は数1000米ドルだが、2004年には50%程度下がるという*7)。各光トランシーバー・メーカーがいち早く市場の潮流に乗れれば、3つのMSAはいずれもこの予測をほぼ確実に達成できる、とiSuppli社では見ている。
 一方で、光ファイバー通信のインフラストラクチャー事業が非常に困難な状況に直面しつつある。こうした状況に加えて、インテル社が引用している米IDC*の統計が示すように、すでに導入されたネットワークの85%以上はイーサーネットに基づく技術を採用している*8)
 さらにイーサーネットが支配的な企業の通信環境には、PCIバスが広く行き渡っているという事実もある。XpakやX2の仕様に準拠した光トランシーバーが市場を形成するには、ノード数は少なくても、いち早く採用されることが重要ではないだろうか。 END

光ファイバー通信システムの保守技術
 10Gビット/秒で動作する光トランシーバー・モジュールを、フロント・パネルにおける活線挿抜に対応させる概念自体は簡単なものだ。しかし実際に設計する際には、いくつかの技術的な経験が必要となる。
 モジュールに対しては、アタッチメント機構やEMI、消費電力、相互接続性といったパラメーターがある性能を満たすように求められる。これを達成するには、機構や熱、光、RF、電力管理といったすべての技術を効率的に組み合わせなければならない。
 モジュールの電気機械的な設計については以下の2つの点について注意する必要がある。1つは、導電性シールによるEMI遮へい技術。もう1つは、電源や制御信号、RF信号を伝送する高密度なマルチサービス・コネクターである。
 EMI遮へいにおける接地への切断可能な接続は、低インピーダンスにしなければならない。さもないと、接続によって遮へいの有効性を損なうことになる。このほかモジュールを据え付ける際にXenpakモジュールのフランジとフロント・パネルの間にガスケットを入れることで、モジュールのフロント部のEMI遮へいを実現する。モジュールは70ピンのコネクターを搭載しており、このうち16ピンは差動信号ラインで、入力と出力それぞれ4つの信号を伝送する。信号のデータ伝送速度は通常3.125Gビット/秒である。
 Xenpak MSA(マルチソース・アグリーメント)の機構的な設計の重要な点としては、モジュール・ガイドの設計と止め機構、ケースの設計がある。ガイドと止め機構によって、モジュールの迅速な交換や、適切な接触位置の決定、接触力の確保を実現する。さらにこれらの機構は、作業者の乱暴な扱いからモジュールとライン・カードの損傷を防ぐといった役割を果たす。
 ケースの設計は、モジュールの密度や熱負荷に対する制約になるため、緊張が伴う重要な仕事である。なぜならば、この設計が、プリント基板の設計に物理的、熱力学的な影響を与えるからだ。チャンネル数やチャンネル当たりの伝送速度、接続(リンク)長などを左右することになる。
 Xenpakアーキテクチャーでは、システム側とのインターフェースに4レーンのXAUI(10Gigabit Attachment Unit Interface)を採用した。このためIEEE802.3aeとの適合性が高い。IEEE802.3aeは、10Gビット/秒のLANや、OC-192に対応したWANのペイロードの物理層インターフェース、7つのPMD(physical media dependent)インターフェースを定義している(表A) *A-1)
 このインターフェースは、電源ラインと制御ライン、ステータス・ライン、データ・ラインから構成されており、活線挿抜保護機能を提供する。電源ラインの保護には簡単な管理方法を採用しているが、ある範囲の電源電圧と電流で機能するように設計されている。しかし制御ラインとステータス・ライン、データ・ラインの保護方法は、アプリケーションに特化しているため、信号の周波数帯域幅や振幅、極性などに注意する必要がある。

決定木の枝の上で足場を失うな

 X2 MSA(マルチソース・アグリーメント)グループが、そのモジュールの仕様を発表して間もなく、業界ウオッチャーは「X2とXpakがいつ統合されるだろうか」と推測し始めた。2つのMSAの類似性はそれほど顕著で、両者の違いについてはほとんど資料として公開されていない。このため2つのMSAグループの外部では、推測による議論はあっても、測定を基に議論を行う場はほとんど無かった。仕様の発表から約9カ月経った時点でも、X2が公開している資料では、そこはブランクのままだ。X2に関心を持つ数社は、X2よりも完成度が高いXpak MSAに対して、漠然とした苦情と非難の声を投げかけている。従って現在は、一部の業界関係者は煙にまかれ、他方の業界関係者の憶測を呼ぶ、という状況になっている。
 この市場に参入している企業の複数はオフレコということで、「X2の最大の魅力は、Xpakではないことだ」と話してくれた。この意見は、「モジュールの供給元(サプライヤー)が競合企業になることを、多くの人は好まない」という事実を理解していなければ、暗号のように聞こえることだろう。
 米インテル社はこの業界における有力な企業の1つである。同社は、Xpak MSAの共同創設者であり、さらにXpak準拠のモジュールを最初に製造したメーカーでもある。同社が、半導体メーカーとして通信市場にフォーカスしたことによる論理的な帰着と言える。しかしインテル社がモジュール・メーカーになることは、同社も認めているように、これまでの顧客との関係を厄介なものにしてしまう。しかし、いままで顧客だった企業の市場に参入することを防止する法律はない。集積化の歴史は、機能統合の物語なのである。
 インテル社はXFPの会員でもある。しかし、これに関する批判はない。インテル社がXpakの共同創立者であることに対して批判がないことと同様に、不思議なことと言える。いずれにせよ、世界最大の半導体メーカーが、興味のある市場に参入する前に、その許可を事前に求めることはあり得ない。
 あら探しには、技術的な興味はほとんどない。しかし、その「あら」が生まれた過程には興味がある。市場では、実体を反映した以上のメッセージが飛び交っている。メッセージの中には、単にミスリードを狙ったものがある。MSAに準拠した製品を評価するときには、このメッセージに注意する必要がある。
 まずは、アプリケーションに最も良く適合する基板占有面積を有するMSAを選択することが大切だ。さらに性能や、市場投入までの期日、モジュールの価格、チャンネル動作の余裕度も考慮する必要がある。こうして1つのMSAに絞れれば、残る作業はそのグループの中で設計経験や供給能力、品質、価格などを考慮してメーカーを選ぶだけだ。決定木(decision tree)を注意深く登り、誰かが枝を切り落とそうとしていないか注意を払う必要がある。
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用語解説 / 会社情報
*1)参考文献
Israelsohn, Joshua, "Fiber lights the short haul," EDN, March 21, 2002, p. 61
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【MSA】
multisource agreement
マルチソース・アグリーメント。複数の企業がグループを構成し、その構成企業が1つの決まった仕様の製品を提供する形態を指す。

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【Xenpak MSA】
IEEE802.3aeで定めらた10Gビット・イーサーネット規格に採用されているXAUI(10Gigabit Attachment Unit Interface)プロトコル上で動作する光コネクターと光トランシーバーの共通仕様。米アギア・システムズ社と米アジレント・テクノロジー社によって開発された。参加企業数は、2003年4月末の時点で24社。
ホームページはhttp://www.xenpak.org/
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【Xpak MSA】
2002年3月に、独インフィニオンテクノロジーズ社と米インテル社、米ピコライト社によって策定された、10Gビット/秒対応の光トランシーバー仕様。参加企業数は2003年4月末の時点で、上記の3社を含めて27社(スポンサーやコントリビューターを含む)。ホームページはhttp://www.xpak.org/
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【X2 MSA】
2002年7月に発表された10Gビット/秒対応の光トランシーバー仕様。米アギア・システムズ社と米アジレント・テクノロジー社、米JDSユニフェーズ社、三菱電機、NEC、米オプネクスト社、スウェーデンのオプティリオン社、米タイコ・エレクトロニクス社の8社が策定した。参加企業数は2003年4月末の時点で12社(上記の8社を含む)。ホームページは、http://www.x2msa.org/
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【独インフィニオンテクノロジーズ社】
Infineon Technologies AG
日本法人はインフィニオンテクノロジーズジャパン。ホームページはhttp://www.infineon.jp/
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【米インテル社】
Intel Corp.
日本法人はインテル。ホームページはhttp://www.intel.co.jp/
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【米ピコライト社】
Picolight Inc.
1999年に設立されたベンチャー企業。光ファイバー通信に向けた光トランシーバーなどの開発、製造に取り組んでいる。ホームページはhttp://www.picolight.com/
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【MAC】
media access control
メディア・アクセス・コントロール
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【XAUI】
10Gigabit Attachment Unit Interface
4つのトランシーバーを使って、合計10Gビット/秒のデータを伝送するインターフェース。1つのトランシーバーが3.125Gビット/秒のデータを受け持つ。差動伝送でデータをやり取りする。なおXAUIのXは10Gビットを指す。ザウイ、もしくはゾウイと発音する。
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【OIF】
Optical Internetworking Forum
高速な光通信に関連する規格の標準化に取り組む業界団体。光通信関連のシステム・メーカーや部品メーカーなどが300社以上参加している。ホームページはhttp://www.oiforum.com/
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【SFI】
Serdes Framer Interface
OIFで策定された、光トランシーバー・モジュールと信号処理LSIの間のインターフェース。SFI4は10Gビット/秒に、SFI5は40Gビット/秒に対応する。
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*2)参考文献】
"A cooperation agreement for a small form factor pluggable 10 Gbit/s transceiver package," Xpak MSA Group, Revision 2.2, December 2002.
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*3)参考文献
"Xpak MSA group announces build-to specification availability, enhancements to small-form-factor 10-Gigabit Ethernet standard," Xpak MSA Group press release, Sept 3, 2002.
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【EMI】
electromagnetic interference
電磁波妨害
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*4)参考文献
"A cooperation agreement for a small versatile 10 Gigabit transceiver package," X2 MSA group, issue 0.9, July 31, 2002.
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【米アギア・システムズ社】
Agere Systems Inc.
米国の通信向け半導体メーカー。ホームページはhttp://www.agere.com/。日本法人はアギア・システムズ。
ホームページはhttp://www.agere.co.jp/
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【米アジレント・テクノロジー社】
Agilent Technologies, Inc.
米国の計測器メーカー。このほか、主に通信分野に向けた半導体/電子部品の開発、製造にも取り組んでいる。ホームページはhttp://www.agilent.com/。日本法人はアジレント・テクノロジー。
ホームページはhttp://www.agilent.co.jp/
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【米JDSユニフェーズ社】
JDS Uniphase Corp.
米国の大手光通信向け部品メーカー。ホームページはhttp://www.jdsu.com/
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【三菱電機】
Mitsubishi Electric Corp.
同社の光モジュール関連のページは以下の通り。http://www.mitsubishielectric.co.jp/device/opto/
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【NEC】
NEC Corp.
同社の光モジュール関連のページは以下の通り。http://networks.nec.co.jp/on/dd/
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【米オプネクスト社】
Opnext, Inc.
日立製作所の米国子会社である。通信用部品事業を担当する。2002年6月に日立半導体グループの光素子事業部門もオプネクスト社に移管した。ホームページはhttp://www.opnext.com/。日本法人は日本オプネクスト。ホームページはhttp://japan.opnext.com/
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【スウェーデンのオプティリオン社】
Optillion AB
スウェーデンのストックホルムに本社を置く光ファイバー通信用部品メーカー。ホームページはhttp://www.optillion.com/
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【米タイコ・エレクトロニクス社】
Tyco Electronics
米国の電子部品メーカー。コネクター・メーカーの米アンプ社やPTC素子メーカーの米レイケム社などを買収した。ホームページはhttp://www.tycoelectronics.com/。日本法人はタイコ エレクトロニクス アンプ(ホームページはhttp://www.tycoelectronics.com/japan/)とタイコ エレクトロニクス レイケム(同http://www.raychem.co.jp/)。
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【米トライクイント・セミコンダクター社】
TriQuint Semiconductor, Inc.
米国の半導体メーカー。主に通信用途に向けた高周波の半導体やモジュールを製造している。ホームページはhttp://www.triquint.com/
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*5)参考文献
"Industry leaders announce 'X2' multi-source agreement for 10 Gigabit pluggable optical transceivers," X2 MSA group, July 22, 2002.
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*6)参考文献
"X2 MSA Q&A document," Agilent Technologies, July 22, 2002.
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【XFP MSA】
10 Gigabit Small Form Factor Pluggable MSA
2002年3月に10社によって策定された10Gビット/秒対応の光トランシーバー仕様。10社とは、米ブロードコム社や米JDSユニフェーズ社、米タイコ・エレクトロニクス社など。ホームページはhttp://www.xfpmsa.org/
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【XFI】
10Gbit Serial Interface
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【SERDES】
serializer deserializer
低速なパラレル(並列)・データを高速なシリアル(直列)・データに変換するシリアライザーと、高速なシリアル・データを低速なパラレル・データに変換するデシリアライザーを収めた回路。「セルデス」、「サーデス」などと読む。
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【米iSuppli社】
iSuppli Corp.
米国の市場調査会社。ホームページはhttp://www.isuppli.com/
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*7)参考文献
Rebello, Jagdish, "10 Gigabit Ethernet in LANs, MANs, and WANs: real or just plain hype?" i-Suppli, April 2002.
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【米IDC】
米国の市場調査会社。ホームページはhttp://www.idcresearch.com/
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*8)参考文献
"Evolution of Gigabit technology: from the backbone to the desktop," Intel, 2001.
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*A-1)参考文献
A. Thatcher, Jonathan, "10 Gigabit Ethernet: brief introduction to the IEEE 802.3ae project," Networld +Interop presentation, May 2000.
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