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signalintegrity
2003年5月号
損失がある配線の特性インピーダンス

 図1は、損失のある伝送線路*1)の特性インピーダンスに、表皮効果と誘電体損が及ぼす影響を示したものだ。表皮効果と直流抵抗による損失のみが存在する伝送線路(誘電体は完全であると仮定)、誘電体損のみが存在する伝送線路(抵抗はゼロと仮定)、表皮効果と誘電体損の両方が存在する伝送線路の3つの条件で特性インピーダンスを求めた。

特別な相殺関係

 図1の上部にある3つの曲線は、上記の3つの条件に対応する特性インピーダンスの実数部、下部の3つの曲線は虚数部を示す。2つの損失が存在しない基本ケースと比較すると、表皮効果による損失は、表皮効果が始まる周波数ωδ付近でインピーダンスの実数部を増加させる。一方、誘電体損は、同様の周波数付近でインピーダンスの実数部を減らし始める。
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 この2つの効果は、周波数ωδ以上の帯域でほぼ相殺関係にあると言える。このため表皮効果と誘電体効果の両方が存在する場合、周波数ωδ以上の帯域における特性インピーダンスは、どちらかの効果が単独で存在するケースに比べて、急速かつ完全にZ1で示した漸近値に収束する。
 この相殺関係は、偶然以外の何ものでもない。実際の設計では、インピーダンスを安定させる目的で、この相殺関係に頼ってならない。この理由は、ほとんどの物質の誘電体損は温度や湿度によって大きく変化するからだ。
 誘電体損は、周波数が高くなるに従い、配線の有効な静電容量を減少させる。この結果、特性インピーダンスは、周波数の上昇に伴い増加する。傾きは右肩上がりになる。この傾きは時間軸で見ると、短時間で測定した実効インピーダンスは長時間で測定した実効インピーダンスよりも大きいことを意味する。図2は、まさにこの効果を表現していると言えるだろう。
 損失がある伝送線路のTDR*応答波形を詳細に見ると(図2中の右上に示した拡大図)、最初の平坦部には3つの異なる波形がある。1つは、表皮効果と直流抵抗損失のみが存在する伝送線路の応答波形(誘電体は完全であると仮定)、2つ目は、誘電体損のみが存在する伝送線路の応答波形(抵抗はゼロと仮定)、3つ目は表皮効果と誘電体損の両方が存在する場合の応答波形である。
 最初の平坦部で、誘電体損は負の傾きを作る。抵抗性の損失は正の傾きを形成する。同時に作用することで、2つの影響はほぼ相殺され、どちらかの影響が単独で存在する場合よりも傾きは小さくなる。これも前述の相殺効果と同様に、特別な偶然なのである。
 なお最初の平坦部で、誘電体損によって発生した傾きはひずんでしまう。このため1回のTDR測定からでは、配線抵抗を正確に求めることはできない。
(ハワード・ジョンソン*2

用語解説 / 会社情報
*1)
線路幅が150μm(6ミル)、特性インピーダンスが50ΩのFR4基板上のストリップ線路を想定している。
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【TDR】
time domain reflectometry
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*2)ハワード・ジョンソン(Howard Johnson)氏。
同氏は、「High Speed Digital Design: A Handbook of Black Magic」(Prentice-Hall, 1993)の著者。オックスフォード大学などで、デジタル・エンジニアを対象にしたテクニカル・ワークショップを頻繁に開催している。ご意見は、次の電子メール・アドレスまで。www.sigcon.comまたはhowie@sigcon.com
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