2003年2月号に掲載した「配線レイアウトによるスキュー*1)」では、エッジ結合型の差動ペア配線における、さまざまなコーナーのベンド(折り曲げ)形状を検討した。そこで指摘したのは、コーナーに面取り部があってもなくても、内周よりも外周の方が長くなることである。その差は、90度で曲がるコーナーの場合、差動ペアの配線ピッチに1.5〜2(コーナー形状で決まる)を乗じた値になる。この差によって発生する伝搬時間の遅れをスキューと呼ぶ。
今回の記事で紹介するのは、全体のスキューを最小限に抑える2つの方法だ。第1の方法は、図1の点線内に示した6個のBGA封止LSIを用いて説明する。差動ペア配線Aは、下側のBGAから上向きに配線が伸びている。途中の経路には、右折が1回、左折が1回ある。従って、この配線のスキューは、2つのコーナーで発生するが、打ち消されてゼロになる。
一般的なレイアウトの場合、コーナーの数とその屈曲方向は、ドライバーとレシーバーの相対的な位置関係に依存する。差動ペア配線Aのように、始点と終点における配線の進行方向が同じであれば、渦巻き状にしない限り、途中経路のレイアウトによらず右折数と左折数は等しくなる。このようにLSIをレイアウトできれば、スキューをゼロにできる。
差動ペア配線Bでは、下側のBGAから右向きに配線が伸びている。上側のBGA(レシーバー)に入力できるように配線方向を上向きに変えるには、右折と左折を設けた上に、さらに左折が1つ必要だ。この配線全体のスキューは、1つの左折による差に等しくなる。
差動ペア配線Cは、スキューにとって最悪の条件となる。右向きに出発し、左向きに終わる。左折だけが2回必要となる。このようなコーナーの数に関する問題を簡単に解決したいなら、スキューがゼロになるようにLSIの配置(向き)に注意を払わなければならない。
ベンドをスキュー調整に活用する
第2の方法は、BGAに出入りする差動ペアの細かいレイアウトに関するものだ。この方法は、BGAだけでなく、コネクターやビア・ホールの配線レイアウトにも応用できる。特に有効なのは、BGAのボール間隔が、差動ペアの配線ピッチより大きい場合である。
図1中にDで示したBGAに出入りする差動ペア配線は、ボールに対してオフセットしてレイアウトされている。例えば、一番上の差動ペア配線の中心は、2つのボールの中心より、ピンク色の配線に寄っている(オフセットしている)。従って青色の配線は、ベンドによって線路長が若干長くなる。同様に、一番下の差動ペア配線は、青色の配線の方にオフセットしているため、ピンク色の配線が若干長くなる。このベンドを活用すれば最終的に配線長を調節できる。決して、完ぺきな方法とは言えない。しかしスキューをゼロにするという目的にはかなう。
ベンドを活用したスキューの調整は、ドライバーとレシーバーのうち、終端の状態が悪い端子の近くで行うべきである。そうすれば、スキュー調整の不完全さによる悪影響を、終端の状態が良い方の端子に与えることを避けられるからだ。配線の両端で良好な終端が実現できているのであれば、両側でスキュー調整を行うとよい。
ベンドを使わずに、完ぺきなレイアウトを実現したいエンジニアには、ローリング・ストーンズの1曲からの引用を進呈しよう。「欲しいものは、必ず手に入るわけではないさ。回り道をすれば、何かが見つかるはずだ」。
(ハワード・ジョンソン)*2)
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