差動配線を折り曲げてレイアウトすると、外側の線路の方が内側の線路よりも長くなる。この差によって、差動信号の間に小さなスキュー(伝搬遅延時間の差)が発生する。スキューは差動信号の一部をコモン・モード(同相)信号にモード変換してしまう。このため注意が必要だ。
まずはドライバーを調べよ
コーナーで発生するスキューが問題になるのは、ドライバーIC自身のスキューよりも十分に大きい場合である。従って、まずはドライバーICのスキューを調べるべきだ。通常、ドライバーICのスキューは仕様で規定されていない。この場合は、立ち上がり時間の10%、もしくはそれ以上と見込んでおく。一般にデジタルの差動ドライバーは、差動バランスがよいとはいえない。これに対して、アナログ・トランシーバーは差動バランスがよい。スキューの整合性に対して正確さを求めるアナログ用途に向けて設計されているからだ。
例えば、イーサーネットの「100BASE-TX」用トランシーバーでは、差動バランスが取れた出力トランスとコモン・モード・チョーク・コイルを採用すれば、コモン・モード信号の大きさを差動信号の1/1000に抑えられる。100BASE-TX信号の立ち上がり時間は約8nsである。これを電磁波の空気中の伝搬距離に換算すると2.4mになる。スキューがこの1/1000ということは、伝搬距離の差は2.4mmである。すなわちコネクターやコーナーにおける線路長の差は、合計で2.4mm以下になるように調整すればよいことになる。従って、2.4mmよりも十分に小さいスキューの要因は無視して構わない。
もっと高速な場合はどうか。2.5Gビット/秒のシリアル・リンク・ドライバーは、立ち上がり時間が200psと短い。ただしドライバーIC自身のスキューが20ps以上とかなり大きい(もっと大きいかもしれない)。この場合は、20ps程度のスキューに注意すればよいことになる。
コーナー形状はほぼ無関係
図1は、3種類のコーナー形状におけるスキューの計算値を示したものである。配線ピッチ(2本の配線の中心間距離)をρとする。長さを比較するため、同じ長さの部分を水色、屈曲部を濃い青色、長さの差に当たる部分を桃色で示した。線路長の差は、左から順に2ρ、1.65ρ、1.57ρとなる。この結果、差動配線のレイアウトでは、コーナー部に面取りや曲線部を設けても、スキューを大きく改善できないことが分かる。
配線ピッチρを0.5mm、線路の伝搬速度を6.4μs/mとした場合、図1のコーナーにおけるスキューは最大で2×(0.0005×6.4μs/m)=6.4ps、最小で1.57×(0.0005×6.4μs/m)=5.0psになる。この値が、ドライバーIC自身のスキューよりも非常に小さければ、配線レイアウトによるスキューは無視しても構わない。
スキューが問題になる場合は、以下の2つの方法で解決する。1つ目は、配線ピッチを狭くする方法である。配線ピッチが狭くなればなるほど、スキューは小さくなる。これは結合が大きい2つの配線における、数少ない利点の1つである。2つ目は、ドライバーICを出たときの信号の進行方向と、レシーバーICに入るときの信号の進行方向を同じにすることだ。こうすれば、渦巻き状の配線にしない限り、途中経路のレイアウトにかかわらず、右折数と左折数が自動的に同数になる。従って、全体の線路長の差をゼロにできる。
(ハワード・ジョンソン)*1) |