電子部品の製造中止に関する問題は、最近になって重大な関心を集めるようになってきた。技術が急速に進歩している技術分野では、新世代の電子部品が数カ月で前世代の電子部品に取って代わるのが当たり前だ。電子部品メーカーは、すべての世代のすべての品種をいつまでも保管しておくことはできない。従って、需要が減少し採算が合わなくなるとその電子部品は姿を消してゆく。英国のCOG (Component Obsolescence Group)*によると、電子業界全体で毎月2000品種の電子部品が製造中止になっているという(囲み記事「やむを得ない製造中止」参照)。
電子業界において、部品の製造中止が大きな問題になるのは、搭載する電子部品の供給期間よりも電子機器の耐用年数の方が長くなるように機器を設計をしているからだ。こうした設計をしているのは一般の電子業界だけでない。軍用分野や航空宇宙分野、さらに高信頼性が求められるそのほかの分野でも同様だ。
ただし、軍用や航空宇宙の分野では製造中止に対応する方法論が発展している。例えば、使用する電子部品は軍用(ミリタリー)規格を満たすだけでなく、長期にわたる入手可能性を保証する契約を交わした上で購入する。ところが、この10年で軍用分野や航空宇宙分野に一般用電子部品(COTS*)が浸透してきた。米国調査会社である米In-Stat/MDR社*などは、全世界の軍用/航空宇宙用IC市場におけるCOTSの占める割合は2005年までに35%に達すると予測している。
この傾向には2つの理由がある。1つは、政府関係機関が軍用サプライ・チェーンはあまりにもコストがかかり過ぎると判断したこと。もう1つは、軍用部品は一般用部品よりも性能が劣っている場合があり、装置設計に支障を来す可能性があることだ。従って、MIL*規格を満足できる市販の電子部品やサブシステムを入手できる場合は、軍用システムに利用できるようになっている。
一般用部品には製造中止がつきもの
しかし一般用の電子部品には、製造中止という弱点がある。MIL規格に準拠した電子部品は価格が高い。MIL規格品は、一般用部品よりも入手できる期間が長い分だけ、価格が高いといえよう。
一般用部品を軍用システムに使うからといって、部品メーカーは特別な扱いをしない。通常の商習慣の範囲を超えて供給を保証することはない。従って、軍用のような寿命が長いシステムの設計者にとって、電子部品の製造中止は最大の問題になる。
電子部品の製造中止は、決して軍用分野だけの問題ではない。特に次のような場合は深刻だ。例えば、プロジェクトが何10年も継続しており、電子機器を散発的に生産し続け、その間に性能改善や再設計を繰り返す。そして、こうした電子機器が今も稼働しているケースである。このケースを民生用パソコンと比較して欲しい。パソコンに搭載するマイクロプロセッサーやマザー・ボードの寿命は数カ月しかない。このケースがいかに厳しいかを理解できるだろう。
一般的な電子機器でも、製造中止に関する問題に徐々に直面しつつある。特に、使用する電子部品の数量が増えている自動車産業がその代表例だ。自動車メーカーは、自動車の生産を終えても、その後の何年もの間保守用部品を確保している。すなわち従来、自動車メーカーに電子部品を納めていたメーカーは自動車の生産が終わっても、そこに使われていた電子部品を断続的に生産していたことになる。実際は自動車メーカーだけでなく、多くの電子機器メーカーでも、機器の生産が終了しても当初に採用した電子部品を保守用として継続的に入手できることを望んでいる。
電子部品の製造中止を議論する際に、真っ先に取り上げるべきものは半導体だろう。半導体業界はかなり古い時期に、製造中止に関する標準プロトコルを定めた。今もなお有効である。このプロトコルは、LTB*(最終購入)という情報を半導体メーカーがユーザーに通知するというものだ。ある半導体デバイスの生産量が減少段階に入ると、LTB通知の対象になる。具体的には、サポート用に必要な数量を最後に購入できるまでの期間、すなわち半導体デバイスの残り寿命をユーザーに通知する。ただし使用量が少ないデバイスに関しては、LTB通知をしなくても構わない。
LTBの期間が終了すると、一般に半導体メーカーは残りの需要を予測し、この需要に相当する数量を米ロチェスター・エレクトロニクス社*や米ランズデール・セミコンダクター社*などに引き渡す。これらの企業は、製造中止になったデバイスをさまざまな形、多くはパッケージに収めないベア・チップの状態で保管する。ロチェスター社では、2億個以上のパッケージ封止済み品と、15億個以上のベア・チップを保有している。ベア・チップで保管しているものは、要求があればパッケージに封止して、試験し出荷する。
LTB通知に参加するには
半導体メーカーは、そのデバイスの使用状況を予想することで、製品の供給期間を決めている。
ディストリビューターから半導体デバイスを購入しているのであれば、このディストリビューターは数四半期、もしくは1年といった期間にわたりデバイスの販売を働きかけてくれる。しかし製品をしばらく購入しないと、こうした働きかけがなくなる。この場合は、ディストリビューターやメーカーに対して、そのデバイスを継続して使うことを通知しておく必要がある。もちろん通知したからといって、供給期間が延びるわけではない。しかし通知しておけば、LTBに参加できるようになる。
さらに半導体メーカーは、製造中止を検討しているデバイスの内部リストを持っている。重要な電子部品のサプライ・チェーンと密接な関係を築いておけば、半導体メーカーの製造中止に関する意図を早い段階で警告として受け取ることができるだろう。
しかし製造中止が突然に訪れた場合は、あらゆる手を尽くして、入手できる部品を探し出すことが求められる。そのステップを以下に示す。ただしステップによっては、設計をやり直す必要が出てくる。
ステップ1:当初のサプライヤーから調達ができなくなると仮定する。
ステップ2:そのサプライヤーが所有する流通網に在庫が残っているかどうか確認する。
ステップ3:半導体メーカーがそのデバイスを製造中止にした場合は、ロチェスター社やランズデール社などに在庫が残っているかを調べる。
ステップ4:完全に互換性のある製品を、ほかの半導体メーカーのカタログから探す。
ステップ5:そのデバイスを新たに製造できるか、どうかを確認する。最終在庫を持っている販売チャンネルがマスク・セットを保管している可能性があるからだ。半導体プロセスがまだ利用できるのであれば、新たに製造できる可能性がある。しかし製造中止の引き金となる最大の理由は、半導体プロセスの廃止であることに留意すべきだ。
部品の製造中止に対処するため、米国防省はDMEA*(Defense MicroElectronics Activity)という組織を立ち上げた。DMEAはDMSMS*(Diminishing Manufacturing Sources and Material Shortages)」の事務局である。DMSMSは、製造中止という問題に遭遇した場合に必ず登場する略語である。
DMEAは、軍用分野で使う半導体基幹デバイスの入手をサポートする組織である。入手が困難になった半導体デバイスの少量生産なども行う。実際にDMEAは、フレキシブルな半導体工場を所有している。ここで1μmや0.6μmの設計ルールを適用したCMOS素子や、アナログ・バイポーラICを製造している。
半導体では、製品のタイプによって製造中止に至る過程が異なる。例えばディスクリート部品は頻繁にカタログから消える。しかし多くの場合は、機器側の再設計をしなくても、あるいは最小限の変更で、機能が同じ部品に置き換えられる。
アナログ製品は、ロジック製品よりも製品寿命が長いという傾向がある。米アナログ・デバイセズ社*で高速アンプのプロダクト・ライン・ディレクターを務めるボブ・エスデール氏は「当社で最も初期の製造プロセスである36Vバイポーラ・プロセスは、今もなお稼働している。アナログ製品は、製造プロセスが使用できなくなるという理由ではなく、需要が減少することによって製造中止になることが多い」という。これに付け加えて同氏は、「5Vから3V以下への電源電圧の移行は、ユーザーにとって心配の種の1つだと思う。しかし当社は、これからもすべての電圧に対応して行く」としている。
標準的なアナログ機能に関しては、優れた性能のデバイスが次から次へと登場する。従って古い世代のデバイスは、ディスクリート部品と同様に製造中止となるが、等価なデバイスやより優れたデバイスを入手できる。
問題はロジックICの製造中止
製造中止において最も重大な問題は、複雑なロジックICやアナログ・デジタル混在ICで起こる。特にASICやメモリーICの古い製品は、深刻な問題になりやすい。
半導体デバイスは一般に、製造プロセスを進化させることで、より大規模、より高速動作になることを期待されている。シリコン加工技術の世代が進めば、その技術をすぐに適用する。従って、古い順にカタログから削除される。今では、古いプロセスで製造された小容量のメモリーICは入手できない。ただし、この問題の解決方法は簡単だ。大容量のメモリーICを使ってその一部だけにアドレスを割り付ければよい。
このほかパッケージの製造中止も大きな問題になりやすい。5〜10年以上前に設計した電子機器には、ほぼ100%の確率でDIP*封止品が使われている。しかし現在半導体メーカーは、表面実装タイプのパッケージに封止したデバイスしか供給していない場合が少なくない。
こうした問題に対応する専門企業は数多くある。例えば、米アプタ・グループ社*の子会社である米ハイブリッド・メモリー・プロダクツ(HMP)社である。同社はメモリーICに特化したサービスを提供している。
サービスの概要は以下の通りだ。まず電子機器メーカーは、使っていたメモリーICがLTB状態になったら、ベア・チップの在庫をHMP社に預ける。HMP社では、従来のメモリーICと同じピン配列のカスタム・モジュールを新しい世代のメモリー・チップを使って製造する(図1)。「製造中止になったメモリーICよりも、新しい世代のメモリーICの容量が大きくなれば、消費電力は当初のものよりも増えてしまう。しかしほとんどの場合、機能的にはまったく等価なモジュールを実現できる」と主張している。
フットプリントの変換サービスもパッケージの製造中止の対処策として利用できる。例えば、米ウィンスロー・アダプティックス社*がこのサービスを提供している。標準パッケージにも、カスタム・パッケージにも対応可能だ(図2)。このアダプターは、現状のデバイスのピン配置を以前のデバイスのピン配置に合わせるといった使い方に限定される。しかし、製造中止になったデバイスの機能をエミュレートし、複数の部品で構成した小型モジュールを製造することもできる。
「古い」ASICでは、製造中止に関する別の問題に遭遇する。特に、全生産量が少なかった場合に遭遇しやすい。ここでいう「古い」とは、例えば0.65μmプロセスを指す。ASICの大手メーカーでは、5年前に製造中止になったプロセスである。もう利用できない可能性が高い。
この場合の対処策としては、新たなマスク・セットの作成を含むNRE*コスト(開発費)が高くつくが、最新のプロセスに合わせてASICを再設計するのも1つの選択肢であろう。1μmから0.25μmに再設計すれば、チップ寸法は大幅に小さくなる。しかし必要とするチップの数量が少ない場合は、半導体メーカーが対応できる最小の受注量の方がはるかに大きなものになってしまうという問題に遭遇する。
FPGAを古いASICの代わりに使う
古いASICを交換するために少量のチップを新たに入手する必要がある場合は、プログラマブル・ロジックの利用を検討するべきだ。5〜10年前に1μm程度のプロセスで製造したASICは、万単位のゲート数を備えていることが多い。当時としては野心的だったかもしれないが、現在では小さなチップに収めることができる。
すべてのFPGAベンダーが古いASICの置き換え市場に興味を示している。米アルテラ社*でヨーロッパ・マーケティング・ディレクターを務めるポール・ホリングワース氏は、「現在のプログラマブル素子ならば、たいていの古いASICに対応できるだろう」という。しかし同氏は「古いASICの設計に多レベルの組み合わせ論理を使っている場合は問題が起こる場合がある」と警告する。加えて同氏は、「HDL*で完全に記述された設計ならば、非常に簡単に変換できる。さらに、いかなる再設計プロジェクトにも当てはまることだが、設計の仕様書は完成度が高ければ高いほどよい。ただし完全に同じピン配列、同じ信号レベルを再現することはおそらくできない。このためプリント基板の再設計は必要になる。さらにSRAMを使ったデバイスを採用していた場合は、プログラミング・ビット・ストリームのためにメモリー空間を用意する必要がある」(同氏)と指摘している。
米アクテル社*のアプリケーション・サポート・エンジニアも、ポール・ホリングワース氏と同じ点を指摘している。このため同社では、ASICの再設計に対するサポートとして、過去のフォーマットに適合させるために特別なパッケージを使ってベア・チップを再封止するサービスを用意している。
米ラティス セミコンダクター社*のCEOであるキュロス・ツイ氏は「当社の「イン・システム・プログラマブル・デバイス」は軍用市場では強い立場にある」と主張する。ユーザーがプログラミング・ビット・ストリームを見ることができない機能を取り入れることで、軍用市場では不可欠である強力なセキュリティー機能を提供しているからだ。
過去にプログラマブル・デバイスの採用をためらったことがあるエンジニアは少なくないだろう。しかし環境は次第に変化している。英ナラテック社*は英国防省からの委託で、「PLDに対する偏見は事実なのかどうか」、「PLDに対する偏見は素子の「ソフト」的な性質に基づいているものなのか」について調査した。その結果として、同社のシニア・システム・エンジニアを務めるデビッド・シャンド氏は、「ユーザーはプログラマブル・ロジックを「ハード」的なデバイスとして扱う必要がある。もっと幅広いプロジェクトで受け入れられるべきだ」と指摘している。
プログラマブル・ロジックは、シリコン製造技術の世代交代に基づく電圧レベルの変遷といった障壁を取り除く助けにもなる。0.65μm以前のプロセスで製造したチップの電源電圧は5V、ロジック信号レベルも5Vだけだった。しかし最新のプロセスで製造したチップは、電源電圧は3.3V以下になり、ロジック電圧の振幅レベルは多種多様になっている。プログラマブル・ロジックを使えば、この問題を解決できる。さまざまな信号電圧範囲を受け入れられるプログラム可能な入出力インターフェース・セルが用意されているからだ。
信号品質に注意せよ
古い技術を新しい技術で置き換える場合、タイミングという問題が発生する可能性がある。使用するデバイスがASICやPLD、標準ロジック・ファミリーのいずれであってもこのことは変わらない。最新のデバイスは、製造中止になったデバイスよりも、おそらく劇的に性能が高まっている。当初の設計では十分に同期が取れていたはずだ。しかし新しい技術は、信号の動作速度が高い。信号の立ち上がりや降下に大きなエネルギーを有している。このため以前は存在しなかった信号品質(シグナル・インテグリティー)の問題が生じる可能性が高い。
EDAツール・ベンダーである図研*でEMC開発マネジャーを務めているマーカス・バッカー氏は「高速ボード設計にかかわるエンジニアは、2つのタイプに分けられる」と指摘している。すなわち、その問題に取り組んでいるエンジニアと、問題が存在することも認識していないエンジニアである。
新しい技術で製造したデバイスを、過去に設計したプリント基板に載せると、すぐに信号品質に関する問題が発生することがある。図3は、FR-4*を使ったプリント基板に設けた配線を流れる信号波形の解析結果である。配線の両端には、ロジック・ドライバーとレシーバーを接続した。図3(a)は標準ロジックのHCTファミリーを使った場合、図3(b)はACTファミリーに置き換えた場合だ。いずれも立ち上がり時間は0.62nsである。それにもかかわらず、ACTファミリーに置き換えた方がリンギングとオーバーシュートが0.5V程度増加している。これだけ増えれば、回路の動作が乱されてしまうことは確実だ。
デバイスを置き換える際に、過去のデータを使ってプリント基板全体を解析することは、おそらく非現実的なことだろう。しかし、過去のプロジェクトを完全に文書化しておいたり、プリント基板のレイアウト・ファイルをすべて残しておけば、クリティカル・ネットを探し出せる。こうすればデバイスの置き換えによって、問題が発生するかどうかをあらかじめ見つけ出すことができる。
再構成可能なシステムを利用へ
再構成可能(リコンフィギュラブル)なシステムを使うことも、電子部品の製造中止による問題を回避する手段になるだろう。例えば、多くのプログラマブル・ロジックでプラットフォームを構成しておく。こうしておけば、汎用ユニット(プラグイン・カードやモジュール)を備えるサブシステムのレベルで、必要な役割を果たすようにプログラムすることが可能になる。この手法は、プログラムの保守にも適用できる。従って、システム寿命中の絶え間ない進化に対して、汎用のプラットフォームを使って常に最新の技術に対応して行くことが可能になる。保守やサポートに費やすコストを下げられる。
こうした設計思想で作られた製品は、まだほとんど稼動していない。しかし米カメレオン・システムズ社*や英ナラテック社などの企業がこうした設計思想のシステムを実現する具体的な指針を提供している。
この指針によると、まず特定のハードウエアの実現から離れて、所要のシステム機能を抽出することが必要だ。さらに開発プロジェクトに関するIP*レベルの文書をすべて保存しておかなければならない。もしこの設計手法に聞き覚えがあるとするならば、この手法が「設計の再利用」に似ているからである。「ソフト」的なシステムを定義する作業については、設計の再利用を実行する際と同じルールを適用できる。
どんな電子部品であれ、製造中止の問題に直面した場合は、とにかくインターネットで製品名を検索してみることも実行すべき選択肢の1つだ。ブローカー(仲買人)が提供しているサービスを利用することも試してみるとよい。これらのサービスの中にはインターネットを利用しているものがあり、製造中止の部品を供給してくれるソースを突き止めることができる。
しかし、これらの選択肢を実行する場合には注意が必要である。トレーサビリティーや信頼性が疑わしい電子部品が含まれている可能性があるからだ。ブローカー(仲買人)によっては、その電子部品の保管方法について一切情報を提示しない場合もある。このようにして調達した電子部品は最低でも、オリジナルの仕様に従って再試験を行う必要がある。この方法でも代替品を探し出せなければ、プリント基板や製品の再設計に取りかからなければならない。
再設計コストの解析ツールが登場
設計の改良や再設計は、コストがかかる選択肢である。これらの作業に取りかかる前に、コストがどのくらいかかるか、定量的に正確に調べる必要がある。この算出方法として、米メリーランド大学カレッジパーク校のピーター・サンドボーン教授が開発したプログラムがある。このプログラムではまず、ライフ・サイクルのモデル化や製造中止の予測などを含めて、フィールドの状況を詳細に調査する。こうした調査によって、従来は直感や必要性だけで決められていた設計改良や再設計の間隔を定量的に求めることが可能になる。
限られた誌面では、このプログラムの名前だけしか記述できない。メリーランド大学CALCEセンター*の「MOCA(
Mitigation of Obsolescence Cost Analysis)」である。1つだけ注目に値する数字を示しておこう。すべての要因を考慮に入れて解析した場合、製造中止の問題を処理するコストは、一般の部品の交換に費やすコストの10倍に達するということだ。このコストには、マニュアルやハンドブックの改訂、新たなプロジェクトに費やされる時間的な損失も含まれている。
製造中止の問題には、技術的な問題ではなく、管理上の問題という側面もある。使用する電子部品の供給元すべてに注意を払い、その状況を絶え間なくモニターするシステムを構築する必要がある。電子部品の供給元から、供給期間の確約を定期的に更新するプログラムは有用だ。しかし、それとて保証にはならない。電子部品の供給元もまた、その電子部品に必要な部材の供給元を抱えているからだ。こうした供給元先が部材の製造を突然中止し、サプライ・チェーンを断ってしまう可能性もある。
電子機器の設計現場での対応策としては、製品設計のすべてに関する完全で詳細な文書を残すしか方法はない。これを残しておかないと、突然に製造中止となった電子部品を置き換えることは非常に困難になる。使用したすべての電子部品の詳細を知っていた唯一のエンジニアが数カ月、あるいは数年前に設計チームを去ってしまった場合は、限りなく悪い状況になる。
最近電子機器メーカーは、多くの機器製造を電子機器受託製造(EMS*)企業にアウトソーシングしている。このためEMS企業もまた、製造中止に関する経営戦略を立て直す必要性に迫られている。
例えばシンガポールのフレクトロニクス社*では、同社の設計プロセスの一部として、世界中で調達している電子部品について製造中止の問題があるか、どうかについてくまなく調査している。このプロセスを自動化できるツールも開発中である*1)。
DMEAやDMSMS問題に関連した団体のサポートを利用することもできる。例えば、米チーミング・グループ*は、主に軍用という枠組みの中で、独立系の製造中止マネジメント業者や政府機関を1つにまとめている。英国では、民間主導のCOGが、製造中止に関する経営戦略の立て方について簡単に説明した小冊子を発行している*2)。さらにCOGと英国通商産業省は「National
Obsolescence Center」を設立した。このセンターでは、加入者に対してLTB通知の照合を行っている。
0.10μm以下には新たな不安が…
電子部品の製造中止に関する問題は、悪化の一途をたどっているようだ。半導体プロセス技術の進化は、減速の兆しも見せない。古い製造プロセスは、その進化の速度と同じスピードで置き去られて行く。
2003年に景気が回復すれば、電子部品の注文が増えて、半導体ウエハー処理工場の負荷が増大する。このときに古い製造プロセスが突然利用できなくなることに注意する必要がある。
ロジック・デバイスの信号振幅レベルが1つでないことは、ここ数年で一般的なことと認知されるようになった。いまや数10という論理振幅レベルから選択できる。こうした状況の変化は、いや応なしにデバイスの多様化をもたらすことは間違いない。
もうすぐ0.10μm以下の設計ルールのシリコン製造技術が利用可能になる。しかし、このプロセスには不安がある。長期信頼性に関する不安だ。現在、各半導体メーカーが調査が進めている。かなり難解な問題を調査しているようだ。例えば、極めて微細な幾何学寸法が、まったく新しい金属効果を引き起こす可能性である。将来に備えてベア・チップを所定の条件で保存した場合、保存中は不活性であったとしても、実際に使おうとしたときに「新規品」として扱えるかどうか分からない。END
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