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designideas
2003年2月号
電子部品の製造中止、
その対処方法を探る


 電子業界では、使用している電子部品よりも耐用年数が長い機器を設計することがごく普通に行われている。このため保守部品の確保が欠かせない。しかし電子技術の進歩は速い。絶えず新しい部品が登場し、古くなった部品は順次姿を消して行く。毎週、500品種もの電子部品が製造中止になっている。製造中止は突然やってくる。あなたの対処方法は万全だろうか。

グラハム・プロフェット
EDN Europe誌エディター
Graham Prophet  
 電子部品の製造中止に関する問題は、最近になって重大な関心を集めるようになってきた。技術が急速に進歩している技術分野では、新世代の電子部品が数カ月で前世代の電子部品に取って代わるのが当たり前だ。電子部品メーカーは、すべての世代のすべての品種をいつまでも保管しておくことはできない。従って、需要が減少し採算が合わなくなるとその電子部品は姿を消してゆく。英国のCOG (Component Obsolescence Group)*によると、電子業界全体で毎月2000品種の電子部品が製造中止になっているという(囲み記事「やむを得ない製造中止」参照)
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 電子業界において、部品の製造中止が大きな問題になるのは、搭載する電子部品の供給期間よりも電子機器の耐用年数の方が長くなるように機器を設計をしているからだ。こうした設計をしているのは一般の電子業界だけでない。軍用分野や航空宇宙分野、さらに高信頼性が求められるそのほかの分野でも同様だ。
 ただし、軍用や航空宇宙の分野では製造中止に対応する方法論が発展している。例えば、使用する電子部品は軍用(ミリタリー)規格を満たすだけでなく、長期にわたる入手可能性を保証する契約を交わした上で購入する。ところが、この10年で軍用分野や航空宇宙分野に一般用電子部品(COTS*)が浸透してきた。米国調査会社である米In-Stat/MDR社*などは、全世界の軍用/航空宇宙用IC市場におけるCOTSの占める割合は2005年までに35%に達すると予測している。
 この傾向には2つの理由がある。1つは、政府関係機関が軍用サプライ・チェーンはあまりにもコストがかかり過ぎると判断したこと。もう1つは、軍用部品は一般用部品よりも性能が劣っている場合があり、装置設計に支障を来す可能性があることだ。従って、MIL*規格を満足できる市販の電子部品やサブシステムを入手できる場合は、軍用システムに利用できるようになっている。

一般用部品には製造中止がつきもの

 しかし一般用の電子部品には、製造中止という弱点がある。MIL規格に準拠した電子部品は価格が高い。MIL規格品は、一般用部品よりも入手できる期間が長い分だけ、価格が高いといえよう。
 一般用部品を軍用システムに使うからといって、部品メーカーは特別な扱いをしない。通常の商習慣の範囲を超えて供給を保証することはない。従って、軍用のような寿命が長いシステムの設計者にとって、電子部品の製造中止は最大の問題になる。
 電子部品の製造中止は、決して軍用分野だけの問題ではない。特に次のような場合は深刻だ。例えば、プロジェクトが何10年も継続しており、電子機器を散発的に生産し続け、その間に性能改善や再設計を繰り返す。そして、こうした電子機器が今も稼働しているケースである。このケースを民生用パソコンと比較して欲しい。パソコンに搭載するマイクロプロセッサーやマザー・ボードの寿命は数カ月しかない。このケースがいかに厳しいかを理解できるだろう。
 一般的な電子機器でも、製造中止に関する問題に徐々に直面しつつある。特に、使用する電子部品の数量が増えている自動車産業がその代表例だ。自動車メーカーは、自動車の生産を終えても、その後の何年もの間保守用部品を確保している。すなわち従来、自動車メーカーに電子部品を納めていたメーカーは自動車の生産が終わっても、そこに使われていた電子部品を断続的に生産していたことになる。実際は自動車メーカーだけでなく、多くの電子機器メーカーでも、機器の生産が終了しても当初に採用した電子部品を保守用として継続的に入手できることを望んでいる。
 電子部品の製造中止を議論する際に、真っ先に取り上げるべきものは半導体だろう。半導体業界はかなり古い時期に、製造中止に関する標準プロトコルを定めた。今もなお有効である。このプロトコルは、LTB*(最終購入)という情報を半導体メーカーがユーザーに通知するというものだ。ある半導体デバイスの生産量が減少段階に入ると、LTB通知の対象になる。具体的には、サポート用に必要な数量を最後に購入できるまでの期間、すなわち半導体デバイスの残り寿命をユーザーに通知する。ただし使用量が少ないデバイスに関しては、LTB通知をしなくても構わない。
 LTBの期間が終了すると、一般に半導体メーカーは残りの需要を予測し、この需要に相当する数量を米ロチェスター・エレクトロニクス社*米ランズデール・セミコンダクター社*などに引き渡す。これらの企業は、製造中止になったデバイスをさまざまな形、多くはパッケージに収めないベア・チップの状態で保管する。ロチェスター社では、2億個以上のパッケージ封止済み品と、15億個以上のベア・チップを保有している。ベア・チップで保管しているものは、要求があればパッケージに封止して、試験し出荷する。

LTB通知に参加するには

 半導体メーカーは、そのデバイスの使用状況を予想することで、製品の供給期間を決めている。
 ディストリビューターから半導体デバイスを購入しているのであれば、このディストリビューターは数四半期、もしくは1年といった期間にわたりデバイスの販売を働きかけてくれる。しかし製品をしばらく購入しないと、こうした働きかけがなくなる。この場合は、ディストリビューターやメーカーに対して、そのデバイスを継続して使うことを通知しておく必要がある。もちろん通知したからといって、供給期間が延びるわけではない。しかし通知しておけば、LTBに参加できるようになる。
 さらに半導体メーカーは、製造中止を検討しているデバイスの内部リストを持っている。重要な電子部品のサプライ・チェーンと密接な関係を築いておけば、半導体メーカーの製造中止に関する意図を早い段階で警告として受け取ることができるだろう。
 しかし製造中止が突然に訪れた場合は、あらゆる手を尽くして、入手できる部品を探し出すことが求められる。そのステップを以下に示す。ただしステップによっては、設計をやり直す必要が出てくる。
ステップ1:当初のサプライヤーから調達ができなくなると仮定する。
ステップ2:そのサプライヤーが所有する流通網に在庫が残っているかどうか確認する。
ステップ3:半導体メーカーがそのデバイスを製造中止にした場合は、ロチェスター社やランズデール社などに在庫が残っているかを調べる。
ステップ4:完全に互換性のある製品を、ほかの半導体メーカーのカタログから探す。
ステップ5:そのデバイスを新たに製造できるか、どうかを確認する。最終在庫を持っている販売チャンネルがマスク・セットを保管している可能性があるからだ。半導体プロセスがまだ利用できるのであれば、新たに製造できる可能性がある。しかし製造中止の引き金となる最大の理由は、半導体プロセスの廃止であることに留意すべきだ。
 部品の製造中止に対処するため、米国防省はDMEA*(Defense MicroElectronics Activity)という組織を立ち上げた。DMEAはDMSMS*(Diminishing Manufacturing Sources and Material Shortages)」の事務局である。DMSMSは、製造中止という問題に遭遇した場合に必ず登場する略語である。
 DMEAは、軍用分野で使う半導体基幹デバイスの入手をサポートする組織である。入手が困難になった半導体デバイスの少量生産なども行う。実際にDMEAは、フレキシブルな半導体工場を所有している。ここで1μmや0.6μmの設計ルールを適用したCMOS素子や、アナログ・バイポーラICを製造している。
 半導体では、製品のタイプによって製造中止に至る過程が異なる。例えばディスクリート部品は頻繁にカタログから消える。しかし多くの場合は、機器側の再設計をしなくても、あるいは最小限の変更で、機能が同じ部品に置き換えられる。
 アナログ製品は、ロジック製品よりも製品寿命が長いという傾向がある。米アナログ・デバイセズ社*で高速アンプのプロダクト・ライン・ディレクターを務めるボブ・エスデール氏は「当社で最も初期の製造プロセスである36Vバイポーラ・プロセスは、今もなお稼働している。アナログ製品は、製造プロセスが使用できなくなるという理由ではなく、需要が減少することによって製造中止になることが多い」という。これに付け加えて同氏は、「5Vから3V以下への電源電圧の移行は、ユーザーにとって心配の種の1つだと思う。しかし当社は、これからもすべての電圧に対応して行く」としている。
 標準的なアナログ機能に関しては、優れた性能のデバイスが次から次へと登場する。従って古い世代のデバイスは、ディスクリート部品と同様に製造中止となるが、等価なデバイスやより優れたデバイスを入手できる。

問題はロジックICの製造中止

 製造中止において最も重大な問題は、複雑なロジックICやアナログ・デジタル混在ICで起こる。特にASICやメモリーICの古い製品は、深刻な問題になりやすい。
 半導体デバイスは一般に、製造プロセスを進化させることで、より大規模、より高速動作になることを期待されている。シリコン加工技術の世代が進めば、その技術をすぐに適用する。従って、古い順にカタログから削除される。今では、古いプロセスで製造された小容量のメモリーICは入手できない。ただし、この問題の解決方法は簡単だ。大容量のメモリーICを使ってその一部だけにアドレスを割り付ければよい。
 このほかパッケージの製造中止も大きな問題になりやすい。5〜10年以上前に設計した電子機器には、ほぼ100%の確率でDIP*封止品が使われている。しかし現在半導体メーカーは、表面実装タイプのパッケージに封止したデバイスしか供給していない場合が少なくない。

 こうした問題に対応する専門企業は数多くある。例えば、米アプタ・グループ社*の子会社である米ハイブリッド・メモリー・プロダクツ(HMP)社である。同社はメモリーICに特化したサービスを提供している。
 サービスの概要は以下の通りだ。まず電子機器メーカーは、使っていたメモリーICがLTB状態になったら、ベア・チップの在庫をHMP社に預ける。HMP社では、従来のメモリーICと同じピン配列のカスタム・モジュールを新しい世代のメモリー・チップを使って製造する(図1)。「製造中止になったメモリーICよりも、新しい世代のメモリーICの容量が大きくなれば、消費電力は当初のものよりも増えてしまう。しかしほとんどの場合、機能的にはまったく等価なモジュールを実現できる」と主張している。
 フットプリントの変換サービスもパッケージの製造中止の対処策として利用できる。例えば、米ウィンスロー・アダプティックス社*がこのサービスを提供している。標準パッケージにも、カスタム・パッケージにも対応可能だ(図2)。このアダプターは、現状のデバイスのピン配置を以前のデバイスのピン配置に合わせるといった使い方に限定される。しかし、製造中止になったデバイスの機能をエミュレートし、複数の部品で構成した小型モジュールを製造することもできる。

 「古い」ASICでは、製造中止に関する別の問題に遭遇する。特に、全生産量が少なかった場合に遭遇しやすい。ここでいう「古い」とは、例えば0.65μmプロセスを指す。ASICの大手メーカーでは、5年前に製造中止になったプロセスである。もう利用できない可能性が高い。
 この場合の対処策としては、新たなマスク・セットの作成を含むNRE*コスト(開発費)が高くつくが、最新のプロセスに合わせてASICを再設計するのも1つの選択肢であろう。1μmから0.25μmに再設計すれば、チップ寸法は大幅に小さくなる。しかし必要とするチップの数量が少ない場合は、半導体メーカーが対応できる最小の受注量の方がはるかに大きなものになってしまうという問題に遭遇する。

FPGAを古いASICの代わりに使う

 古いASICを交換するために少量のチップを新たに入手する必要がある場合は、プログラマブル・ロジックの利用を検討するべきだ。5〜10年前に1μm程度のプロセスで製造したASICは、万単位のゲート数を備えていることが多い。当時としては野心的だったかもしれないが、現在では小さなチップに収めることができる。
 すべてのFPGAベンダーが古いASICの置き換え市場に興味を示している。米アルテラ社*でヨーロッパ・マーケティング・ディレクターを務めるポール・ホリングワース氏は、「現在のプログラマブル素子ならば、たいていの古いASICに対応できるだろう」という。しかし同氏は「古いASICの設計に多レベルの組み合わせ論理を使っている場合は問題が起こる場合がある」と警告する。加えて同氏は、「HDL*で完全に記述された設計ならば、非常に簡単に変換できる。さらに、いかなる再設計プロジェクトにも当てはまることだが、設計の仕様書は完成度が高ければ高いほどよい。ただし完全に同じピン配列、同じ信号レベルを再現することはおそらくできない。このためプリント基板の再設計は必要になる。さらにSRAMを使ったデバイスを採用していた場合は、プログラミング・ビット・ストリームのためにメモリー空間を用意する必要がある」(同氏)と指摘している。
 米アクテル社*のアプリケーション・サポート・エンジニアも、ポール・ホリングワース氏と同じ点を指摘している。このため同社では、ASICの再設計に対するサポートとして、過去のフォーマットに適合させるために特別なパッケージを使ってベア・チップを再封止するサービスを用意している。
 米ラティス セミコンダクター社*のCEOであるキュロス・ツイ氏は「当社の「イン・システム・プログラマブル・デバイス」は軍用市場では強い立場にある」と主張する。ユーザーがプログラミング・ビット・ストリームを見ることができない機能を取り入れることで、軍用市場では不可欠である強力なセキュリティー機能を提供しているからだ。
 過去にプログラマブル・デバイスの採用をためらったことがあるエンジニアは少なくないだろう。しかし環境は次第に変化している。英ナラテック社*は英国防省からの委託で、「PLDに対する偏見は事実なのかどうか」、「PLDに対する偏見は素子の「ソフト」的な性質に基づいているものなのか」について調査した。その結果として、同社のシニア・システム・エンジニアを務めるデビッド・シャンド氏は、「ユーザーはプログラマブル・ロジックを「ハード」的なデバイスとして扱う必要がある。もっと幅広いプロジェクトで受け入れられるべきだ」と指摘している。
プログラマブル・ロジックは、シリコン製造技術の世代交代に基づく電圧レベルの変遷といった障壁を取り除く助けにもなる。0.65μm以前のプロセスで製造したチップの電源電圧は5V、ロジック信号レベルも5Vだけだった。しかし最新のプロセスで製造したチップは、電源電圧は3.3V以下になり、ロジック電圧の振幅レベルは多種多様になっている。プログラマブル・ロジックを使えば、この問題を解決できる。さまざまな信号電圧範囲を受け入れられるプログラム可能な入出力インターフェース・セルが用意されているからだ。

信号品質に注意せよ

 古い技術を新しい技術で置き換える場合、タイミングという問題が発生する可能性がある。使用するデバイスがASICやPLD、標準ロジック・ファミリーのいずれであってもこのことは変わらない。最新のデバイスは、製造中止になったデバイスよりも、おそらく劇的に性能が高まっている。当初の設計では十分に同期が取れていたはずだ。しかし新しい技術は、信号の動作速度が高い。信号の立ち上がりや降下に大きなエネルギーを有している。このため以前は存在しなかった信号品質(シグナル・インテグリティー)の問題が生じる可能性が高い。
 EDAツール・ベンダーである図研*でEMC開発マネジャーを務めているマーカス・バッカー氏は「高速ボード設計にかかわるエンジニアは、2つのタイプに分けられる」と指摘している。すなわち、その問題に取り組んでいるエンジニアと、問題が存在することも認識していないエンジニアである。
 新しい技術で製造したデバイスを、過去に設計したプリント基板に載せると、すぐに信号品質に関する問題が発生することがある。図3は、FR-4*を使ったプリント基板に設けた配線を流れる信号波形の解析結果である。配線の両端には、ロジック・ドライバーとレシーバーを接続した。図3(a)は標準ロジックのHCTファミリーを使った場合、図3(b)はACTファミリーに置き換えた場合だ。いずれも立ち上がり時間は0.62nsである。それにもかかわらず、ACTファミリーに置き換えた方がリンギングとオーバーシュートが0.5V程度増加している。これだけ増えれば、回路の動作が乱されてしまうことは確実だ。

 デバイスを置き換える際に、過去のデータを使ってプリント基板全体を解析することは、おそらく非現実的なことだろう。しかし、過去のプロジェクトを完全に文書化しておいたり、プリント基板のレイアウト・ファイルをすべて残しておけば、クリティカル・ネットを探し出せる。こうすればデバイスの置き換えによって、問題が発生するかどうかをあらかじめ見つけ出すことができる。

再構成可能なシステムを利用へ

 再構成可能(リコンフィギュラブル)なシステムを使うことも、電子部品の製造中止による問題を回避する手段になるだろう。例えば、多くのプログラマブル・ロジックでプラットフォームを構成しておく。こうしておけば、汎用ユニット(プラグイン・カードやモジュール)を備えるサブシステムのレベルで、必要な役割を果たすようにプログラムすることが可能になる。この手法は、プログラムの保守にも適用できる。従って、システム寿命中の絶え間ない進化に対して、汎用のプラットフォームを使って常に最新の技術に対応して行くことが可能になる。保守やサポートに費やすコストを下げられる。
 こうした設計思想で作られた製品は、まだほとんど稼動していない。しかし米カメレオン・システムズ社*や英ナラテック社などの企業がこうした設計思想のシステムを実現する具体的な指針を提供している。
 この指針によると、まず特定のハードウエアの実現から離れて、所要のシステム機能を抽出することが必要だ。さらに開発プロジェクトに関するIP*レベルの文書をすべて保存しておかなければならない。もしこの設計手法に聞き覚えがあるとするならば、この手法が「設計の再利用」に似ているからである。「ソフト」的なシステムを定義する作業については、設計の再利用を実行する際と同じルールを適用できる。
 どんな電子部品であれ、製造中止の問題に直面した場合は、とにかくインターネットで製品名を検索してみることも実行すべき選択肢の1つだ。ブローカー(仲買人)が提供しているサービスを利用することも試してみるとよい。これらのサービスの中にはインターネットを利用しているものがあり、製造中止の部品を供給してくれるソースを突き止めることができる。
 しかし、これらの選択肢を実行する場合には注意が必要である。トレーサビリティーや信頼性が疑わしい電子部品が含まれている可能性があるからだ。ブローカー(仲買人)によっては、その電子部品の保管方法について一切情報を提示しない場合もある。このようにして調達した電子部品は最低でも、オリジナルの仕様に従って再試験を行う必要がある。この方法でも代替品を探し出せなければ、プリント基板や製品の再設計に取りかからなければならない。

再設計コストの解析ツールが登場

 設計の改良や再設計は、コストがかかる選択肢である。これらの作業に取りかかる前に、コストがどのくらいかかるか、定量的に正確に調べる必要がある。この算出方法として、米メリーランド大学カレッジパーク校のピーター・サンドボーン教授が開発したプログラムがある。このプログラムではまず、ライフ・サイクルのモデル化や製造中止の予測などを含めて、フィールドの状況を詳細に調査する。こうした調査によって、従来は直感や必要性だけで決められていた設計改良や再設計の間隔を定量的に求めることが可能になる。
 限られた誌面では、このプログラムの名前だけしか記述できない。メリーランド大学CALCEセンター*の「MOCA( Mitigation of Obsolescence Cost Analysis)」である。1つだけ注目に値する数字を示しておこう。すべての要因を考慮に入れて解析した場合、製造中止の問題を処理するコストは、一般の部品の交換に費やすコストの10倍に達するということだ。このコストには、マニュアルやハンドブックの改訂、新たなプロジェクトに費やされる時間的な損失も含まれている。
 製造中止の問題には、技術的な問題ではなく、管理上の問題という側面もある。使用する電子部品の供給元すべてに注意を払い、その状況を絶え間なくモニターするシステムを構築する必要がある。電子部品の供給元から、供給期間の確約を定期的に更新するプログラムは有用だ。しかし、それとて保証にはならない。電子部品の供給元もまた、その電子部品に必要な部材の供給元を抱えているからだ。こうした供給元先が部材の製造を突然中止し、サプライ・チェーンを断ってしまう可能性もある。
 電子機器の設計現場での対応策としては、製品設計のすべてに関する完全で詳細な文書を残すしか方法はない。これを残しておかないと、突然に製造中止となった電子部品を置き換えることは非常に困難になる。使用したすべての電子部品の詳細を知っていた唯一のエンジニアが数カ月、あるいは数年前に設計チームを去ってしまった場合は、限りなく悪い状況になる。
 最近電子機器メーカーは、多くの機器製造を電子機器受託製造(EMS*)企業にアウトソーシングしている。このためEMS企業もまた、製造中止に関する経営戦略を立て直す必要性に迫られている。
 例えばシンガポールのフレクトロニクス社*では、同社の設計プロセスの一部として、世界中で調達している電子部品について製造中止の問題があるか、どうかについてくまなく調査している。このプロセスを自動化できるツールも開発中である*1)。
 DMEAやDMSMS問題に関連した団体のサポートを利用することもできる。例えば、米チーミング・グループ*は、主に軍用という枠組みの中で、独立系の製造中止マネジメント業者や政府機関を1つにまとめている。英国では、民間主導のCOGが、製造中止に関する経営戦略の立て方について簡単に説明した小冊子を発行している*2)。さらにCOGと英国通商産業省は「National Obsolescence Center」を設立した。このセンターでは、加入者に対してLTB通知の照合を行っている。

0.10μm以下には新たな不安が…

 電子部品の製造中止に関する問題は、悪化の一途をたどっているようだ。半導体プロセス技術の進化は、減速の兆しも見せない。古い製造プロセスは、その進化の速度と同じスピードで置き去られて行く。
 2003年に景気が回復すれば、電子部品の注文が増えて、半導体ウエハー処理工場の負荷が増大する。このときに古い製造プロセスが突然利用できなくなることに注意する必要がある。
 ロジック・デバイスの信号振幅レベルが1つでないことは、ここ数年で一般的なことと認知されるようになった。いまや数10という論理振幅レベルから選択できる。こうした状況の変化は、いや応なしにデバイスの多様化をもたらすことは間違いない。
 もうすぐ0.10μm以下の設計ルールのシリコン製造技術が利用可能になる。しかし、このプロセスには不安がある。長期信頼性に関する不安だ。現在、各半導体メーカーが調査が進めている。かなり難解な問題を調査しているようだ。例えば、極めて微細な幾何学寸法が、まったく新しい金属効果を引き起こす可能性である。将来に備えてベア・チップを所定の条件で保存した場合、保存中は不活性であったとしても、実際に使おうとしたときに「新規品」として扱えるかどうか分からない。END


やむを得ない製造中止

 多くの電子部品がさまざまな理由によって市場から姿を消して行く。その理由の1つに法令や規制がある。現在、電子業界では、電子機器の製造や組み立てから鉛を全廃しようとする動きがある。西欧では、EU(欧州連合)のWEEE*(廃電気電子機器)指令案をきっかけに、鉛全廃の動きが生まれた。この指令案は、電子製品に使用している材料をできるだけリサイクルし、リサイクルできない材料はできるだけ安全に処理することを狙ったもの。その結果、鉛の全廃が不可欠になったのだ。当初、鉛全廃を実現する目標達成時期を2004年に設定していたが、現在では2006年に延びている。同様な法案は欧州だけでなく、全地球上に広がりつつある。例えば日本やオーストラリアは、鉛フリーに最初に取り組んだ地域の1つである。

 もともと鉛の全廃は、米国が1990年代初めに提案したものだ。当初は、積極的な環境活動団体を有する国々が先走って取り組んだものとしてとらえられていたようだ。しかし現在では、着実に鉛の削減が進んでいる。最も進んでいるのは、おそらく日本だろう。日本の家電店で販売されている電子機器は、「鉛フリー」のラベルが張られていなくても、すでに鉛フリーに対応している。

 欧州では、防衛用や軍事用、航空宇宙用の電子機器は鉛全廃の対象から除外されている。ほかの地域でも同じような扱いになるだろう。こうした電子機器において鉛フリーに対応しようとすると、途方もなく大きな課題に直面することになるからだ。具体的には、鉛フリー対応の電子部品や製造プロセスを使うようになると、電子機器の再設計や、認証の取り直しといった作業が必要になる。

 さらに鉛フリーはんだ付け技術は、高い信頼性が求められる電子機器に大きな影響を与える可能性がある。例えば、すず鉛はんだの代替として開発中の新規合金は、そのほとんどが機械的な特性が異なる材料の接続になってしまう。すなわち、新しいはんだ材料に変更した場合は、さまざまな環境条件における再評価が不可欠になる。加えて、新しいはんだ材料(合金)のほとんどは、はんだ付け時のプロセス温度が従来よりも高くなる。これにより新たな問題が発生する。例えば、軍用機器で多く使われているハイブリッド・デバイスでは、その内部のはんだ接続に影響が出る可能性がある。このため、このデバイスの再評価や再設計が終わるまで使用できなくなってしまう。

 防衛や軍事、航空宇宙といった分野を免除することは、MIL規格に準拠した設計では鉛フリーに対応しないことを意味するのであろうか。そんなことはない。すでに、こうした分野には一般用部品(COTS)が浸透しつつあるからだ。従って、使用している電子部品の多くが、時間の経過と共に鉛フリーに対応して行く。受動部品では、すでにリード端子のコンタクト部にすず鉛めっきを施さなくなった。例えば、すずめっきにシフトしている。

 すず鉛に代わるものが登場すれば、その電子部品は「新しい部品」となる。しかし機能は、従来のままだ。あなたの会社では、こうした部品を「新しい部品」として認識しているだろうか。一部のメーカーは否定しているが、一般の電子機器で大量に使われている主要部品ですず鉛を採用した品種が製造中止になる可能性は高い。

 鉛フリーは、パッケージング技術にも影響を与える。新たな材料の採用は、新たな金属的な効果を引き起こす。例えば金属すずを使うと、ある使用条件、もしくはある保管条件のときに、すず鉛はんだでは見ることができない「ウィスカー」と呼ぶ結晶が自然に成長してしまう。これが狭ピッチのパッケージで問題を引き起こす。

 さらに環境問題も、電子部品の入手可能性に影響を与える。例えばカドミウムである。カドミウムは、鉄への腐食防止用めっき材料として広く使われている。しかし毒性が高い。このため削減しようとする動きが出てきた。軍事用機器では、カドミウムを継続的に使用する方向に傾いているようだ。しかし金属加工業者が突然「カドミウムはもう使わない」と通知してきた場合は対処のしようがない。カドミウムが使えなくなれば、ファスナーなどのごく普通の部品にも影響を与える。ねじやボルトも例外ではない。しかし、ねじやボルトのメーカーがLTB(最終購入)通知を出すことは、まず無いだろう。

 製造中止の問題は、いわゆる「ハイテク」が使われている電子部品だけの問題ではない。政治的に不適切な材料を含んでいる部品を使えるかどうかは、軍用であるか、一般用であるかに加えて、それを販売しようとしている国にも依存することになる。
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用語解説 / 会社情報
【COG】
Component Obsolescence Group
1997年に英国に設立された、電子部品/機械部品の製造中止に関する団体。
ホームページはhttp://www. cog.org.uk/
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【COTS】
commercial off the shelf
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【米In-Stat/MDR社】
米リード・ビジネス・インフォメーション社のハイテク・シンクタンク。ホームページはhttp://www.instat.com/
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【MIL規格】
military specifications
米国防総省が調達用に制定した部品規格。
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【LTB】
last time buy
最終購入
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【米ロチェスター・エレクトロニクス社】
Rochester Electronics Corp.
製造中止になった半導体デバイスを保管し、販売する米国企業。米インテル社や米テキサス・インスツルメンツ社、米AMD社など、主要な米国系半導体メーカーの製品を扱っている。
ホームページはhttp://www.rocelec. com/
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【米ランズデール・セミコンダクター社】
Lansdale Semiconductor Inc.
製造中止になった半導体デバイスを保管し、販売を行う米国企業。米国防省や米軍などが顧客という。ホームページはhttp://www.lansdale.com/
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【DMEA】
Defense MicroElectronics Activity
米国防省が設立した電子デバイスに関する組織。軍事システムに使用する電子デバイスのコスト削減や、製造中止への対処などに取り組んでいる。
ホームページはhttp://www.dmea.osd.mil/
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【DMSMS】
Diminishing Manufacturing Sources and Material Shortages
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【米アナログ・デバイセズ社】
Analog Devices, Inc.
日本法人はアナログ・デバイセズ。ホームページはhttp://www.analog.co.jp/
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【DIP】
dual in-inline package
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【米アプタ・グループ社】
APTA Group, Inc.
米国のパッケージ・メーカー。2000年にハイブリッド・メモリー・プロダクツ(Hybrid Memory Products)社を買収した。ホームページはhttp://www.aptagroup.com/
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【米ウィンスロー・アダプティックス社】
Winslow ADAPTICs
ICのフットプリント変換に向けたアダプターなどの開発/製造に取り組む米国企業。
ホームページはhttp:// www.winslowadaptics.com/
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【NRE】
nonrecurring engineering
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【米アルテラ社】
Altera Corp.
米国のPLDメーカー。ホームページはhttp://www. altera.com/
日本法人は日本アルテラ。ホームページはhttp://www.altera.co.jp/
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【HDL】
hardware description language
ハードウエア記述言語
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【米アクテル社】
Actel Corp.
米国のFPGAメーカー。ホームページはhttp://www. actel.com/
日本法人はアクテルジャパン。ホームページはhttp://www.actel.com/intl/japan
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【米ラティス セミコンダクター社】
Lattice Semiconductor Corp.
米国のFPGAメーカー。ホームページはhttp://www. latticesemi.com/
日本法人はラティス セミコンダクター。
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【英ナラテック社】
Nallatech Ltd.
FPGAなどを利用した再構成可能なモジュール/ボードを設計している英国企業。
ホームページはhttp:// www.nallatech.com/
国内連絡先は東京エレクトロンデバイス。103-3251-0159。
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【図研】
Zuken Inc.
国内のEDAツール・ベンダー。ホームページはhttp://www.zuken.co.jp/
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【FR-4】
flame retardant 4
FRは、プリント基板の部材である銅張積層板の耐燃性の等級を示す記号。FR-4は耐燃性ガラス基材エポキシ樹脂積層板のこと。FR-4を使ったプリント基板は、一般的にガラス・エポキシ基板と呼ばれている。
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【米カメレオン・システムズ社】
Chameleon Systems, Inc.
通信用途に向けた再構成可能(リコンフィギュラブル)なプロセッサー/システムの開発に取り組む米国のベンチャー企業。ホームページはhttp://www.chameleonsystems.com/
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【IP】
intellectual property
一般的には知的財産権のこと。
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【CALCEセンター】
Computer Aided Life Cycle Engineering Center
米国のメリーランド大学に設置された組織。
ホームページはhttp://www.calce. umd.edu/
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【EMS】
Electronics Manufacturing Services
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【フレクトロニクス社】
Flextronics Corp.
シンガポールに本社を置く電子機器受託製造企業。
ホームページはhttp://www. flextronics.com
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*1)参考文献
http://www.nemi.org/ newsroom/Articles/BoMwhitepaper.pdf
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【米チーミング・グループ】
Teaming Group
独立系の製造中止マネジメント業者や政府機関を1つにまとめている組織。電子部品の製造中止などに関する問題の解決策の共有化などを行っている。
ホームページはhttp://www.arinc.com/
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*2)参考文献
"The Obsolescence Minefield: A Guide to Tackling Disappearing Products," Component Obsolescence Group, www.cog.org.uk.
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【WEEE】
Waste Electronics and Electronic Equipment
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