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EDN GLOBAL REPORT
システムの乱用
標準がエンド・ユーザーの役に立たないとき
 
 
Joshua Israelsohn, Technical Editor, EDN
 
 標準の歴史は、少なくとも9000年前、人類が初めて重さと時間を計った古代のエジプトおよびバビロニアの時代にまでさかのぼる。時が流れ、標準は当時では想像もできないほど洗練されたものになった。

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 しかしながら、標準化を歴史的に見ることよりも、むしろその考え方に基づいた活動の範囲の方に十分興味を持てる。もともと、基準は単純で共通な計り方の合意によってなされている。すなわち、現在の重さの基準である「キログラム」を定義する物理的な原器の目的は、エジプトの先祖が考えたことと本質的に同じだ。しかし重量単位は物理的な原器で定義された究極の基本単位である。他の基準は、時間の基準がセシウム原子の振動であるように、普遍的な物理現象によって定義されている。
 基礎的な計量基準の定義の進化は、基準がどのように使用されるかに密接に関係している。2つの集団の間で、物理的な寸法や時間、温度、そのほかの共通パラメーターの計量基準を合意するだけでは十分ではない。そのような取り決めは世界的な範囲で行われなければならない。例えば、北京の1秒は、バンガロール、ブリスベーン、ブリストルあるいはボストンでも正確に同じ1秒である。
 基準は単にパラメーター的な量を定義することを越えて広がった。静電気電圧の耐量測定のような、より複雑な基準は設備および備品、材料および寸法、試験手順および結果の分類方法を指定しなければならない。通信方式の標準化は複雑な変調方式、ハンドシェークの方法およびエラー訂正の体系を定義しなければならない。標準(基準)の発展は、ひとりの権威者がキログラムやメートル、秒を定義し、全世界がそれを参照できた時期まで戻ることは決してない。そのような仕事は終わったのだ。

 しかし、標準についての今の考え方は、グローバルなエレクトロニクス産業にとって、とてつもない複雑さの源となっている。現在、物体、現象、手法あるいはやり方について、互換性のない標準を定義する多様な競争が存在している。このような状態がもたらす利益は、多様なアイデアこそが市場で競争できるということである。それは一つのサイズが全てに合うことはめったにないという事実を、顧客が暗黙に受け入れていることによる。
 しかしながら、多様な標準によるいろいろな代価は、その応用分野の性質に依存する。それらは、市場での混乱や抑制(ホーム・ビデオ市場におけるBetamax対VHS戦争の歴史的に重要な要素)、あるいはその市場規模における経済性において十分な投資をできなくしている(現在の衛星放送に影響する要因のうちの1つ)。

 データ通信領域において2つの有益な事例があげられる。
VDSL(very-high-speed DSL)の初期においてQAM(quadrature amplitude modulation)とDMT(discrete multitone)の2つの変調方式に企業が名前を連ねた。どちらも新しい標準として採用されるよう競っていた。後から考えれば、戦いが続いたことにより、負けた競合者が「他の」変調方式に適合しなければならないことで勝者が得る利益より、VDSLの公開が大幅に遅れたことによるデメリットの方が大きかったことがわかるだろう。

 恒久に市場を占有する技術はない。遅れた時間は回復不可能であり、勢いを失ったことでVDSL採用にブレーキをかけた。皮肉なことに、その標準は有線サービスにおける変調方式の選択が地域的な問題であり、両方の変調方式の許可を結局(かつ適切に)認めることになった。VDSL ICメーカーは、地域の選択とは無関係に、世界的に競合する両方の変調方式用のチップセットを開発しなければならなかった。
 802.11g 無線LAN技術に関する戦いの結果、1つの主要な変調方法(OFDM:orthogonal frequency division multiplexing)、2つ以上の802.11b互換性(Baker方式とCCK)、2つのオプション方式(PBCCおよびCCKヘッダーを使用するOFDM互換のバリエーション)をサポートすることになった。その結果、24Mbpsの802.11g準拠デバイスはすべて相互の運用性を持つことになるだろう。802.11gで定義された最高通信速度54Mbpsを実現するには、ネットワークの両端は、標準に対応した拡張を実装しなければならない。すなわち、その変調方式は認可されたがコンプライアンスのクレームにすることは求められなかった。
装置のバイヤーは、自分たちが何を買いたいのかもわからない。せいぜいメーカー1社からすべての装置を購入することにより、損害を防ぐくらいだ。それがまさに標準および相互運用性の保証を不要にする方法なのだ。
 802.11gの歴史は標準化組織が弱体になる一方で、会員会社が強くなったことを示している。どの企業が財務上のリスクを想定しながら技術を市場へもたらすかを考えることは意味をなすかもしれない。しかしながら、企業は自分たちを有利にし、競合他社を犠牲にして初期の市場で自分たちの地位を固めるために、標準を乱用していることはますます明白だ。この振る舞いは、最良のテクノロジーの客観的な探求者としての標準化組織のより高い使命が偽りであることを示している。
 確かに、現状ではエンド・ユーザーの利益を代表する標準化組織の声は聞けない。この理想にほど遠い現実の結果は、本来持っているはずの技術的レベルを使う場合よりも、より大いなる機会損失、貧弱な性能、経済活動の規模を引き下げることとなってしまうのだ。
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