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EDN GLOBAL REPORT
うれしい誤算
何が携帯電話のサービスや機能を決めるのか
なぜそれが他の製品設計者に影響を及ぼすのか

 
 
Bill Schweber, Executive Editor, EDN Worldwide
 
 グローバルスタンダードとなるように設計され、最先端のプロセッサー、電源システム、超コンパクトなメカニカルデザイン、高機能なOSや機能を持った製品は何であろう。他にもいくつかあるかもしれないが、携帯電話機は最も端的な例として考えられるだろう。
 携帯電話機は、グローバル化が進む今日のエンジニア領域において、設計者にとって格好の参考書ともなっている。携帯電話機を分解してみると、どのような技術が実装されているかを目の当たりにすることができる。例えば、画像処理や音楽処理のような付加機能を内蔵しているプロセッサーや超小型のチップ部品などである。
 初期の携帯電話は会話ができれば良かった。しかし、21世紀に入るとすぐに、全ては変った。携帯電話は大変便利なモノとなったのだ。オーディオやビデオ機能の搭載によって携帯電話機の存在意義が会話のための装置から小規模なマルチメディア・センターへと変化した。サービス・プロバイダーはいろいろのサービスや付加的な機能で人々を誘惑した。今やサービス・プロバイダーが主導権を握るようになってきたのである。音声通話で得た収益を使ってマーケット・シェアを獲得してきた今、サービス・プロバイダーは写真の転送、音楽販売などのサービスにより収益を向上させる必要に迫られている。
 一方、携帯電話機メーカーも、付加する機能や形で他社との差異化を図っている。その結果、メーカーのシェアに変化が生じた。2003年3月、主な携帯電話機メーカーであるNokia社、Motorola社、Sony Ericsson社の携帯電話機のシェアは、合計60%であり、Samsung社、LG社、NECのアジア系メーカーは11%であった。しかし、1年後にはNokia社、Motorola社、Sony Ericsson社のシェアは44%に下がり、アジア系メーカー3社は43%にシェアを大きく伸ばした(図1)。
 
部品への考察
 
 今日の技術はシステム設計者だけに厳しくなっているわけではない。部品メーカーも困難にさらされている。ICベンダーは注意深く協業する携帯電話機メーカーを選ばなくてはならない。技術的な理由と競争上の理由から、部品を全ての企業に提供することはできないからである。その上、部品ベンダーは電力増幅器などのモジュールを組み立てる協力企業とも一緒に仕事をしなくてはならない。
 さらに、サービス・プロバイダーが携帯電話機に要求する機能の多くは、既存のICや部品の能力では実現できないものであったりする。ベンダーは新しい部品を開発すべきかの賭けをせざるを得ない。開発費用を回収し、利益を生むほどの売り上げがあげられるか分からない。どんなに細心の注意を払って実行しても、部品や最終製品の設計者は、携帯電話の利用者が簡単に電話機を交換するのと同じように、協業するメーカーや機能を簡単に変えてしまうサービス・プロバイダーの気まぐれに左右されてしまうのである。
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 多くの新しい機能はいままでの携帯電話の範囲を超えてしまうものとなっているが、それらの機能こそユーザーが求めているものなのかもしれない。例えば、日本の消費者は第3者が勝手に電話をかけたり、個人情報にアクセスするのを防止するために指紋認証を使ったロック機能を使っている。現在、単にその上で指を滑らせるだけでよい細長い形のセンサーが、従来の指紋センサーにとってかわっている。中には指紋認証とカーソル・コントロールを一体化できる部品を供給しているベンダーもある。Authentec社、富士通マイクロエレクトロニクス、Atmel社などはこの市場に参入しており、これらの技術は他の製品にも必ず活用されることになるであろう。
 一方カメラ付携帯は、CMOSやCCDの画像処理ICメーカーにビジネス・チャンスを与えつつ、マーケット・シェアを伸ばしている。このことはイメージ・センサーの価格を引き下げ、他の製品での採用を促進させることになるであろう。Agilent Technologies社、Hynix社、OmniVision Technologies社、Samsung 社、東芝、IC Media社など数多くのベンダーがこの市場には存在している。最近では、携帯電話は静止画のスナップ写真を撮るだけではなく、電話機内部のメモリー量とデータ転送帯域に依存しながらも、ほぼ完全な擬似動画を撮ることができるようになっている。
 携帯電話機本体については、さらに数多くの企業にビジネス・チャンスが存在している。実際、携帯電話機などの製品を取り巻く関連市場には、携帯電話機本体に関わる会社と同様のチャンスがある。パソコンを例に取ると、多くの企業がハードウエアの付属品によって利益を上げている。最も利益を上げているのはプロセッサーやパソコン本体のメーカーではなくソフトウエアを販売している企業であることを見ても、その他の企業にとってのこの市場におけるチャンスの大きさがわかるだろう。
 携帯電話ではコンテンツがより重要になってきている。Motorola社がApple社からiPod技術のライセンス供与を受けたことでも明らかなように、音楽ダウンロードのビジネスは今後大きく発展するであろう。Disney社などエンターテイメント業界の主力コンテンツ企業も参入を望んでいる。
 Disney社は今のところ静止画のコンテンツを提供しているに過ぎないが、動画も近いうちに携帯電話において提供することになるだろう。電波を通して動画を送り込む方法を見つけることさえできれば、動画はサービス・プロバイダーにとっての新たな収益源となる。あるいは、ただ単に携帯電話機の設計者はテレビ受像機能を付加すれば良いだけなのかもしれない。東芝によるテレビ機能付電話の例はp.36の囲み記事「高い機能を詰め込む」を参照。テレビの受像はバッテリーに新たな負荷を加えることになるが、電話、カメラ、テレビ、音楽再生機能が一体となった携帯電話機は、モバイル世代のティーンエイジャーにとって、どこにいても何でもできる新種の道具なのである。
 
広がる影響
 
 携帯電話機本体の場合、例えそれが携帯電話に必要とされる必要最小限の基準を超えるものであっても、設計、テスト、製造の工程が世界的な規模で行われているという特性を考えると、世界的な基準を設ける必要があるだろう。例えば、多くの国では鉛を使わないように設計をすることが求められている。もしくは、すぐに求められるようになる。このことは、部品ベンダーは無鉛化に対応しなければならないと同時に、仕入先、製造委託先などサプライ・チェーン全般において無鉛であることを掌握できるようにしなければならないことを意味する。設計者は代替品がないような主要部品が無鉛化対応となっていることを確認して、BOM(部品表)を考えなくてはならない。
 設計チームは、製造委託先の基板のはんだ付け工程が、十分な経験に基づき完璧にテストがなされているか、また、使用される部品や金属のスペックにあった温度になっているかなどを確認しなくてはならない。過去10年、20年の間、このようなことはあまり問題とはなっていなかった。しかし、高密度の多層基板が利用された当初と同様に、今またこれらが問題となっている。さらに問題を難しくしている要因として、設計チームが世界的な規模で分散していたり、これほどの幅広い責任範囲を担ったことがない未熟な設計チームがあったりすることがあげられる。
 次に携帯電話機の機械部分、外装、部品などについて考えてみよう。例えば、折りたたみ式のデザインでは、小さなヒンジにフレキシブルな配線やコネクターを入れなくてはならないため、ヒンジを簡素化する全く新しいシリアル・インターフェースの技術が求められている。この新しいシリアル・インターフェースは携帯型ゲーム機、PDA、GPS機器などでも応用されるであろう。
 他の部品も同様に、他製品の設計に応用されるかもしれない。目に見えないほど小型化された高性能の受動部品(Vishay社、村田製作所など)、電力増幅器やRFフロントエンド部に利用される低ノイズ型増幅器(NEC、RF Micro Devices社、Anadigics社)、高性能バッテリー関連回路(Micrel社)などは、携帯電話以外の製品へ組み込むことがすぐにでも可能である。携帯型データ装置、長寿命のモニター、ユビキタス・センサー、メッシュ型ネットワーク、そして未だ研究者のひらめきでしかないような製品がその主な対象となるだろう。
 これらの新しい技術、設計の方法、製品の制約は、携帯型無線装置の設計者だけではなく、全ての設計者に影響を与える。ほとんどどんなことでもでき、ユーザーの望むどんな形にもなりうる無線装置に対する需要は、設計者が新しいアーキテクチャーを検証するための大きな励みとなっている。アナログ式携帯電話がデジタル式になったのと同様に、今日の第2世代(2G)携帯電話は第3世代(3G)そしてその先の規格に発展していくであろう。
 同時に、技術者は革新的な技術の実現をさらに進めるだろう。例えば、Vanu Systems社やMorpho Technologies社などの設計者はSDR(software-defined-radio)を推している。SDRを利用した電話は多くの通信フォーマットの処理や、現場でのアップグレード、市場の変化に伴い新しい役割を担うといったことを可能とする。この考え方は、製品のライフサイクルの範囲内において、ユーザーが求める、少なくとも製品のマーケティング・マネジャーが求める、いかなる要求にも応える製品を提供しなくてはならないという宿命を負っているエンジニアにとって、地上の楽園のように思えるかもしれない。
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