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EDN GLOBAL REPORT
July 2005

垂直統合に向けて
デジタル・メディア・デバイスの登場により、ベンダーは製品開発の垂直統合の再検討を迫られている。
 
 
馬本 隆綱, EDN Japan, Editor
 
 10型以上の液晶テレビの世界需要は、2004年の798万台に対し、2009年は5900万台と予測されている。2004年から2009年までの年平均伸長率は49.2%と驚異的な成長を続ける予想だ。PDPテレビも同様に、2004年の232万台に対し、2009年は1160万台が見込まれている。平均伸長率も38.0%と高い。この予測は、電子情報技術産業協会(JEITA)がまとめ、2005年2月に発表した。
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 今後は2006年のサッカー独ワールドカップや2008年の中国・北京オリンピックなど、家電機器の需要を刺激する世界的なスポーツイベントがある。また、グローバルに進められているアナログ放送から高品位なデジタル放送への移行などが、薄型大画面テレビの需要を押し上げる。
 同様に、DVDレコーダ/プレーヤーの世界需要も、2002年にVCRと逆転し、その後も順調に拡大を続ける。2004年の8491万8000台に対し、2009年は1億860万台と予測している。このうちレコーダは2004年の850万台から、2009年には4558万台が見込まれている。

コストを決める最終消費者

 デジタル家電機器は需要拡大が続く中で、課題は価格下落が業界の予想を上回る速さで進んでいることだ。家電機器メーカーからのデバイスに対する価格圧力はこれまでもあった。しかし、従来は厳しいながらも、各メーカーの企業努力で何とか苦境を乗り切ってきた。今回の場合、ほぼ1年間で製品の売価が25〜30%下落するなど、大半の機器メーカーは「売っても儲からない」状況になりつつある。その代表例は薄型テレビやDVDレコーダである。
 半導体産業の成長をけん引するキラーアプリケーションが、これまでのパソコン市場からデジタル家電製品にシフトしていく中で、コスト構造が変わってきた。ルネサス テクノロジで社長兼CEOを務める伊藤達氏は「これまではメーカーのコスト力の中で売価が決まっていた。現在、デジタル家電製品は需要を創出するための価格メカニズムが働いている。価格設定の主導権はメーカーから流通に移り、流通では売れる価格で販売している。つまり、最終消費者がコストを決めている。そういう意味でコストプレッシャーは昔と大きく変わった」と、デジタル家電機器市場の現状を指摘する。
 価格設定の主導権を持つといわれている家電流通業界は、家電量販最大手のヤマダ電機が2005年2月下旬に連結売上高1兆円を超えた。これに対し、ミドリ電化を子会社化したエディオンやヨドバシカメラ、ビッグカメラなども売上高は5000億円あるいはそれ以上の規模となり、これら上位にいる大型店同士のし烈な対決は、店頭での売価を押し下げている。


ソフトウエア開発の負荷増大

 コスト構造の変革に対してルネサスの伊藤社長兼CEOは、「半導体メーカーは総合力が必要だ」という。例えば、製品を安く製造する力であり、製造コストを下げるための開発、設計力だ。デジタル家電機器や携帯電話機などでは、ソフトウエアの開発負担が増大する。そうなると、顧客である機器メーカーと一体になってシステム開発を進めるのが基本だ。顧客は新しいソフトウエアの開発負担が重くなり、ハードウエア開発は必然的に半導体メーカーへの依存度が高まる。顧客の負担を軽くするためにも、「半導体メーカーはシステムとして開発する力を身に付けていかなければならない」というのが伊藤社長兼CEOの考えだ。
 そのために重要視してきたのがプラットフォーム戦略だ。2004年4月にシステムソリューション統括本部を設置した。同社が重点分野とするモバイルや自動車、PC/AVの3分野に対し、ソリューション提供型のビジネスを展開する。システムLSIやカスタムLSIをベースに、ミドルウエアの領域までルネサスがサポートしていく。


キーデバイスを内製化

 機器メーカーでも大手企業ではキーデバイスを社内で開発、製造することで機器のトータルコスト低減や内蔵する機能のブラックボックス化を図る。また、社内標準のプラットフォームを準備し開発効率を高めるなど、新たな垂直統合型のビジネスモデルを打ち出す。従来型の垂直統合と大きく異なるのは、技術の抱え込みではなく、開発したキーデバイスの外販やパートナーとの協業など、オープンな姿勢だ。
 その一例がソニーだ。ソニー・グループは東芝や米IBM社などと新型プロセッサ「Cell」を共同開発した。微細化技術や動作周波数の高速化などで進化を続けてきたこれまでのプロセッサに対し、Cellはネットワーク上で複数のチップが結びついて、全体で演算性能を高めていく発想である。最新のパソコン向けプロセッサに比べ10倍以上の演算性能を持つといわれている。
 ソニー・グループは、Cellを次世代の家庭用ゲーム機器やデジタルテレビ、ホームサーバーなどの心臓部に搭載していく計画だ。一方でCellの外販も積極的で、デジタル家電以外へもCellの用途を拡大していく。
 競合メーカーに比べソニーは大画面液晶テレビ事業で出遅れた。液晶パネルの調達問題や価格競争力を高めるため、キーデバイスとなるTFT液晶パネルに関し、韓国Samsung社と合弁会社を2004年4月に立ち上げた。次世代プロセッサやフラットディスプレイ、CCD/CMOSイメージセンサなどキーデバイスを内製化することで、機器事業の競争力を高めていく。
 松下電器産業は、携帯電話機からホームAV機器までデジタル家電機器の開発に幅広く対応する統合プラットフォーム「UniPhier」(Universal Platform for High-quality Image-Enhancing Revolution)戦略を2004年9月に発表した。従来、商品分野ごとにハードウエアやソフトウエアを開発していた。それを松下電器全社で横断的に、共通資産として相互活用するための手法である。
 開発するアプリケーションによって、あらかじめ準備されたハードウエアやソフトウエアの中から、必要なものを組み合わせる。これによって、非プラットフォーム型に比べソフトウエア開発効率は2〜3倍向上するという。総合的な開発効率は5倍以上と同社では見ている。投資回収を行なうために、UniPhierは社外にも販売していく。
 韓国Samsung社でも、DRAMやフラッシュメモリー、液晶ディスプレイ、PDPなど世界トップのデバイス事業を展開する中、携帯電話機向けLCDドライバICなど社内の機器部門とのシナジー効果を生かせる半導体の社内開発に注力する。
 90年代に半導体需要をけん引したパソコン産業や通信業界は、半導体設計と製造の国際水平分業体制を発展させた。これに対し、今後のキラーアプリケーションとなるデジタル家電業界は、大手家電メーカーを中心にキーデバイスの内製化やプラットフォーム戦略を前面に押し出した新垂直統合のビジネスモデルに移りそうだ。
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