今後の展望
コストが低いモーター制御によって、かつてのモーター技術が再び呼び起こされている。そのような技術は、今後のモーター制御を背負って立つ存在になるかもしれない。SR(switched reluctance)モーターは19世紀に誕生したが、その制御は、これまで非常に困難なものであった。このSRモーターは、低コスト、スタート時の高トルク性、高速回転、高効率性、高信頼性という長所を持っている。また、ほかの形のモーターに比べて用途に合わせた設計が容易である。コストが低いDSC(digital signal controller:デジタル・シグナル・コントローラ)を使用すれば、SRモーターのこのような長所を電化製品市場で活かすことが可能である。
SRモーターの機械的構造は単純である。ローターは型打ちした鋼製のラミネーションを軸に取り付けただけのものであり、巻線は使用されていない。ステータは、BLDC(brushless dc:ブラシレスDC)モーターのものと類似している。ローター巻線もブラシも取り付けられていないSRモーターは、メーカーにとって信頼性が高く、コストが低く抑えられるモーターとして位置付けられる傾向がある。業界専門家の中には、いつかSRモーターが最も経済的なモーターになると予測する者もいる。
今日、SRモーターは困難な設計の中に活路を見いだしている。そこでは、SRモーター特有の機能により、SRモーターを選択することが最良となる。掃除機の「Dyson DC12」はその一例である。英Dyson社は先頃、小型かつ高性能が求められる日本市場にこのDyson DC12を投入した。求める性能水準を限られたスペース内で達成するために、英Dyson社のエンジニアは新たなファンを設計した。それは、10万回転/分のSRモーターにより駆動する構造となっていた。この高性能な掃除機は、診断情報をDyson社のヘルプ・ラインに報告することさえも可能である。この報告は、内蔵スピーカーに近づけた電話機を介して行われる。
SRモーターは、振動と音が非常に大きい。そのため、掃除機や送風機など、元々騒音が発生する製品に使用される場合がほとんどだった。しかし、DSCを使えばこの問題を解決することができる。エンジニアは、モーターの各種エミッション(RF、熱的、電気的、物理的)の削減に取り組んでいる。ここで、ある手法が有望と見られている。「ランダム・トルク・パルス生成(random torque pulse generation)」と呼ばれるその手法は、次のような観察結果に基礎を置いている。モーターのトルクは、1回転ごとに同一レベルのパワーが供給される限り保持され、回転中のパワー供給のタイミングには影響されない。これによりエミッション全体の半分以上カットされているが、この手法を有効とするには高い処理スピードが必要である。
モーターの設計上有望なもう一つの手法として、多相式も挙げられている。なお、「多相」とは相巻線が三相(標準的なモーターによく使用される)以上のものを指す。相巻数が増えるに従い、1相当たりの供給電流は減少する。電流レベルが低くなるにつれて、使用できるドライバも安くなり、ひいては、製品に使用されるドライバの総コスト削減にもつながる。多相巻線全体に渡って小さな電流ピークを発生させることにより、電流リップル、機械ノイズ、電気ノイズが低減される。多相モーターには冗長機能も備わっている。そのため、巻線に障害が発生した場合でもなお多相モーターは出力を落として運転を継続することができる。これは、交通手段のほか、故障しても運転を継続することに価値を見いだす用途において強みとなる。多相モーターの制御には、DSCを始めさらに多くの要件が必要となる。例えば、さらなるPWM出力およびセンサー入力、そして一段と高い性能が求められる。
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