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EDN GLOBAL REPORT
July 2005

シリコンを巡る覇権争い
通信向けチップのIPコアにおいて、プログラマブル・ロジックは、ASSP、ASIC、プロセッサと競合関係にある。
 
 
Maury Wright, EDN North America, Editor at Large
 
 携帯電話基地局、電話回線交換機、企業向けルーターなどの複雑なシステムを構成するシリコン技術の選択が、これほど難しくなったことは今までなかった。設計チームは、システム要件の変化に伴う基準の変化に対応していく必要性に迫られている。消費電力およびコストは、民生機器向け素子のように常に最優先事項であることはないが、無視できない要素である。最終的には、信頼性とサービスの水準が、通信装置を設置する通信事業者にとって最重要課題となることは確かである。
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 従って、設計段階ではASICの性能やASSPの低コスト性ではなく、プログラマブル・ロジックの柔軟性を重視することにより、既知のシステムにおいてICの適切な組み合わせを見出す必要がある。また、通信以外の用途を目的とする多くのシステムも同じ課題を抱えている。 
 通信装置(有線および無線)は、依然としてプログラマブル・ロジックのベンダーにとって最も重要な市場であり続けている。米Xilinx社の例で見ると、16億米ドルの年間収益のうち約47%を通信部門が稼いでいる。2000〜2001年にかけての、いわゆる「ネットバブル崩壊」以前は、プログラマブル・ロジック・ベンダーの収益においてさらに大きな割合を通信産業関連収益が占めていた。 
 このネットバブル崩壊による低迷は、比較的記憶に新しく苦い思い出として残っている。にもかかわらず、通信事業の魅力は色褪せていない。近年、技術産業を牽引しているのは家電製品であると考えられることが多い。その一方、帯域幅に対する需要を生み出しているのは、多くの一般的な民生向け素子であり、音楽、写真の共有、動画配信などの通信装置に対する需要も民生用途のために創り出されたものである。 
 通信部門はまた、チップベンダーが自社の顧客のニーズのみならず、顧客の顧客、さらには、顧客の顧客のそのまた顧客のニーズまでも、いかにして十分に理解しなければならないかということを示す格好の例である。通信業界において、チップベンダーは、装置ベンダーのニーズ並びに通信事業者が導入を予定している技術、さらにはエンドユーザーが求める機能を理解する必要がある。またこのような機能が予測されるのは、装置メーカーとの協力関係においてとなる。

携帯電話基地局でのFPGA

 携帯電話基地局の市場、それに加えて分かりやすい1つの事例について考えてみる。この事例には、ICベンダーと通信事業者の関係のあり方と、プログラマブル・ロジックが携帯電話基地局市場にもたらす利益の双方が示されている。 
 2000年代が幕を明けて間もない頃、Xilinx社は日本の移動通信事業者DDIポケット電話(現ウィルコム)と提携を行った。DDIは、当時データ通信可能なネットワークを構築しており、なおかつ3GPP(Third Generation Partnership Project)リリース5へのアップグレードを可能とする装置の設置が必要であった。また、2002〜2003年の頃には、これらの作業の完了を見込んでいた。なお、「3GPP」はGSM(global system for mobile communications)規格を策定した国際標準化団体である。また、「リリース5」の仕様では、音声トラフィックおよびデータトラフィックの両方をIP(internet protocol)ベースの転送方式に移行することが定められていた。 
 Xilinx社とDDIは、直接協力してシステム要件の定義を行った。次いでDDIは、FPGA(field programmable gate array)に基づくアーキテクチャを選択する旨を装置サプライヤに通知し、装置サプライヤはそれを受けて契約に名乗りを上げた。DDIは、最終的に16万カ所に上る移動電話基地局を日本全国約2000の都市に設置した。またFPGAを採用したアーキテクチャにより、移動電話基地局をリモートでリリース5対応にアップグレードできるようになった。それまでDDIでは、基地局のアップグレードを1局ずつ手作業で行う必要があった。そのため、同社の予測によれば、控えめに見積もっても1局当たり300米ドル、合計4800万米ドルの費用がさらに必要となるはずであった。
 「移動電話基地局市場において競争力を維持しつつ、なおかつ最終的には利益も上げながらシステムをアップグレードするのは、FPGA技術の採用なくしては困難かつほぼ不可能に近かったでしょう」。ウィルコム執行役員兼技術本部長、近 義起氏はそのように述べている。 
 Xilinx社と同様、米Altera社も携帯電話基地局をFPGAにとって魅力的な市場と考えている。Altera社の携帯電話事業部門シニアディレクターArun Iyengar氏によれば、GSM規格に基づく基地局市場を早々から優位に立たせたのはASICとDSPであったという。しかし、3GPPのリリース5およびリリース6では、装置メーカーに対して、基地局用のASICを一から作り直すよう求めている。「このような経緯から現在はDSPとFPGAが競う構図となっている」と、Iyengar氏は語っている。
 Altera社製の装置は、基地局内のさまざまな場所に浸透している。例えば、同社の「Stratix U」など、最新のFPGAに組み込まれているDSP機能では、ICをデジタル方式のアップコンバージョン/ダウンコンバージョンに適用できるようになる。この場合、ベースバンド周波数は、ブロードバンド周波数と相互変換を行う。そうIyengar氏は主張する。 
 また、FPGAは内部論理構成を直ちに再構成できるという事実からも、このFPGAチップに適した使い道が定まる。その一例としてIyengar氏は、PA(power amplifier)においてFPGAが適用可能となるポイントを挙げている。「PAはパルスの送信並びにレスポンス受信を、要求に応じて1秒間に何千回も実行する」と彼は言う。FPGAを適用すれば、デジタル・プリディストーション機能(PAの線形化)、クレストファクタ低減機能(PAの効率性向上)、RFチャンネルに基づき動的な変化を可能とする機能などをPAで実行できるようになる。
 さらに念頭に置くべきことは、基地局は通常、多数のチャンネルを同時にサポートしており、それらのチャンネルのデータ転送速度は、われわれが第2から第3さらに第4世代へと移行するにつれて、一定の割合で増加し続けているということである。「高速データ転送速度について考える場合、FPGAの並列処理機能がわれわれにとって有利に働く」とIyengar氏は述べて、同社の製品とDSPのシーケンシャルな性質とを比較して見せた。 
 基地局市場において、Xilinx社やAltera社はそれぞれ自社のハイエンド製品を推し進める傾向にある。なおそれらの製品には、しっかりとしたDSP機能が備わっている(それぞれ「Virtex」と「Stratix」)。その一方で、米Lattice Semiconductor社は、より集積度の低い「LatticeECP-DSPファミリ」に積和演算ユニットを組み込んだ。「ECP(economy plus)ファミリ」は、集積度、低消費電力性、さらに基地局における“レイク受信”などの機能を組み込むときの費用の低さ、こうした要素をすべて兼ね備えた製品となる。同社の戦略マーケティング・マネジャーを務めるGordon Hands氏はそのように語っている。レイク受信は、無線構造におけるマルチパスに起因して発生するフェージングを打ち消すものであり、同社はそのようなレイク受信用のリファレンス・デザインを提供している。

基地局重視のDSP

 これまで自信を持って機能の優位性を唱えてきたFPGA陣営ではあるが、DSP側には、基地局市場を譲り渡す気配はない。それどころか、米Analog Devices社の「TigerSHARC」担当マーケティング・マネジャーであるAndy McCann氏は、ASICおよびASSPは今なお高速フィルタリングの面で優れており、DSPは第3世代基地局のデジタル・ベースバンドにとって最良の選択である、と確信している。「アンテナデータのバッファリング数を多くする必要があり、FPGAメモリーではそのタスクを処理し切れない」と、McCann氏は言い切っている。
 さらに、TigerSHARCには24Mビットのオンチップ・メモリーが内蔵されており、DSPはこのメモリーに対して最高のクロック速度(現時点では600MHz)でアクセスすることができる、とも指摘する。これとは対照的に、FPGAには約4Mビットのメモリーしか内蔵されておらず、なおかつそれは最高クラスの素子に限られているという。「第3世代ベースバンドにおいてFPGAはあまり表舞台に出ることがないだろう」。McCann氏はそう予測する。「FPGAは、バックプレーンのインターフェースとして用いられているのだ」。 
 競争は明らかに激戦を強いられている。その最中、DSP技術とFPGA技術は、ごく狭い別々の分野においてそれぞれ勝利を収めている。事実、米Xilinx社は今年の初めに、携帯電話基地局向けの正式なプログラマブル・プラットフォームを発表した。同社は最近のデータを公表していないが、これまでの発表では、2003年の収益のうち6000万米ドルが携帯電話基地局によるものとなっている。 
 近年、少なくともGSM規格が採用されている基地局のエアインターフェースからはシリコンが姿を消しつつある。そのシリコンとはASSPのことである。絶え間なく続くネットワークの発展のせいで、ほとんどのメーカーおよびベンダーがその発展に遅れをとり、脱落していったように思われる。ただ、CDMAの分野では、依然として米Qualcomm社が“エアチャンネル”を支配している。そのため、同社製のASSPはCDMA規格の基地局市場において主役を務めている。一方で、FPGAはせいぜいサポート役に留まっている。

FPGAを追撃するASSP

 ASSPは、無線通信機器および有線通信機器の双方において、バッファ管理やトラフィック管理など、今もなお多くの役割を担っている。例えば、米IDT社が大量生産しているフローコントロール・マネジメントICファミリは、バッファリング、キュー処理、多様なインターフェースの接続機能を専門としている。同社の「88P834xファミリ」は、例えばバックプレーンとスイッチなどの中間に使用され、SPI-3(System Packet Interface Level 3)インターフェースとSPI-4インターフェースとの間を接続する。 
 米IDT社の主張によれば、同社のフローコントロール素子は、一般にFPGAを搭載した設計と置き換えて使用できる。これに対するFPGAベンダーの考えは、そのような場合、設計担当はFPGAを使用する手法を好んで選択するという。これは、FPGAのカスタマイズにさらなる付加価値を見いだせるからである。しかし、この点についてIDT社プロダクト・マネジメント・ディレクターのMichael Olsen氏は次のようにコメントしている。「チップ間でのデータ転送機能は、機密事項とは捕らえていない。当社が実現しようとしている共通機能は、多くの顧客がそれを実現しようとして現在も苦労を重ねているものだ」。 
 同氏が主張する例の1つが「Multi-Queueファミリ」素子である。Multi-Queueファミリ素子は、約5Mビットのメモリーを内蔵し、スケジューリング、バッファリング、同期などのニーズに合わせて32個ものキューを設定することができる。近日発表が予定されている「72P51777」は、このMulti-Queueファミリ素子を拡張して10Mビットのストレージ容量と128個のキューを装備させたものである。Olsen氏によれば、その一方でFPGAはそれほど拡張性があるわけではなく、マルチキューを処理することができない、という。FPGAが処理可能なオン/オフ・チップのデータ転送速度は、実行されるキューの数に反比例する、とOlsen氏は言う。

ストラクチャードASICによる救援策

 一部の有線通信機器では、FPGAが発揮できる性能についてもまた問題となっている。Lattice社、Xilinx社、Altera社は、おのおの、ハイエンドFPGAにマルチギガビット対応のSERDES(serializer deseriarizer)チャンネルを組み込んでいる。それでもなお、プロジェクトによっては、チャンネル、メモリー、内部クロックレートの組み合わせとの関係上、ASICが選ばれることがある。 
 Fujitsu Microelectronics社マーケティング・ディレクターを務めるMarwan Majid氏は、動画サーバーを構築しているシステムハウスの例を引き合いに出した。同氏によれば、Fujitsu Microelectronics社は、そのシステム水準において要求される性能に見合うFPGAを見つけることができなかった、という。しかし、同社のストラクチャードASIC技術「AccelArray」を採用することにより、24本の動画チャンネルのサポートと、4Mビットのメモリー搭載、さらには内部150MHzの動作を実現するICを作り上げた、と同氏は語っている。 
 同氏によれば、おそらくさらに重要となるのは、AccelArray技術により、ネットリストの完成からたった9週間半でサンプルを配布できるようになったことである。さらに同社では、今後6ヶ月以内にこのサイクルタイムを8週間まで短縮できると考えている。新しいストラクチャードASIC技術により、ASIC設計におけるコスト的障害および時間的障害は明らかに解消されつつある。 
 動画配信ネットワークは、あらゆる形態の高集積デジタルICが役立つもう1つの分野となっている。ちょうどFujitsu社が動画にASICビジネスの機会を見出したように、米Actel社はソフトIP(intellectual property)コア搭載型FPGAでの勝利を主張している。さらに、米Actel社成功の理由は驚くべきものといえる。場合によってはFPGAがASIC以上にセキュアなことがある、と同社は断言する。 「Actel ProASICファミリ」は、一般的な高集積FPGAに使用されるSRAMではなく、フラッシュ・メモリーに構成データを記憶する点において、ほかと一線を画している。Actel社は、SRAM搭載FPGAがIPの盗用を招く一方、同社のフラッシュ方式ではIPが保護される、と長い間主張し続けてきた。 
 動画の場合は、ProASICプログラミング方式により、さらに別のセキュリティ機能が加わる。設計段階において、AES(Advanced Encryption Standard)暗号化コアをProASIC設計に取り入れ、なおかつキーをフラッシュ・メモリーに記憶させることができる。「FPGAは一つ一つに名前を書き込めるが、ASICでは到底無理な話だ」とは、Actel社マーケティング担当バイス・プレジデントDennis Kish氏。セキュリティキー機能では、ビデオヘッドエンド機器において同社のIP暗号コア搭載型FPGAが勝利している。 
 一般的に、ProASIC FPGAがターゲットとしているIPコアは制御プレーン用のものであって、データプレーン用のものではない。また、その用途が無線型ネットワーク装置であるか、基地局であるかを問わない。同氏はそのようにも語っている。Actel社はこれまで、データプレーンでの使用に耐える高速なSERDESの開発を行ってこなかった。 
 同氏によれば、ProASICアーキテクチャを制御プレーンに適用することにより、いくつかの重要なメリットが得られる。その一つとして同氏が挙げたメリットは、FPGAに搭載されたPLL(phase locked loop)が1.5MHzという低い入力周波数で動作するため、FPGAがT1/E1やT3/E3の装置にうまく適合するようになっている、というものであった。その上、フラッシュベースのアーキテクチャを採用しているため、ProASIC素子は電源を投入するとすぐに使用できる状態となる。これに対し、SRAM搭載FPGAの場合は、初めに構成データをロードしなければならない。電源投入によりPLLが有効になると、ProASIC素子により全クロックをシステムに供給することができる、と同氏。 
 さらに、通信装置の信頼性の点でフラッシュは有利である、と同氏は語っている。「通信素子の動作可能時間は100%だ。そのため、通信素子は、ほかの素子よりもファームエラーが発生しやすい」。同氏が述べている「ファームエラー」という言葉は、より一般的には「ソフトエラー」と呼ばれるものである。これは、宇宙線が原因となりSRAMセルが予期せぬスワップ状態に陥った場合に発生するエラーである。SRAM FPGAに関して、Actel社ではそのような現象を「ファームエラー」と呼んでいる。というのも、構成情報が定期的にリフレッシュ(エラー修正)されていないからである。 
 確かに、ソフトエラーは、さらなるプロセス・ジオメトリの縮小に伴いより大きな問題となっている。今もなお、エラーの影響度および頻度については議論が継続して行われている。また、SRAM搭載型FPGAは、通信部門などの信頼性の高い多くのシステムに利用されている。 
 Lattice社もまた、フラッシュ・メモリーを一部のFPGAに採用した。とは言っても、同社はActel社ほどソフトエラーに取り組んでいるわけではない。実際、Lattice社の「XPファミリ」には、SRAMとフラッシュ・メモリーとが入り混じっている。フラッシュ・メモリーは構成データを記憶する不揮発性ストレージとなる。しかし、その構成データは素子によりSRAMにコピーされ、FPGAがこのSRAMに基づき動作する。
 「このようなデュアル・メモリー・アーキテクチャを利用すれば、フィールド・アップグレードの準備を行っている間に、通信装置の動作可能時間を100%にすることができる」。Hands氏はそう主張し、「この素子では、フィールド・アップグレードをまずフラッシュ・メモリーにロードすることができる。この動作には、数秒から数十秒を要する。次に、XPはフラッシュ・メモリーからこの新しい構成を1msでSRAMに移動させる」と述べている。 
 Lattice社では、FPGAの集積度に応じて設計段階でパラレルバスを取り入れている。このパラレルバスでは、再構成を高速で行えるように数百ビット〜数千ビット以上のデータ幅を持たせている。最後に、Hands氏は次のように主張している。「フラッシュ・メモリーとSRAMを組み合わせることで、通信市場における信頼性の到達目標『ファイブ9(99.999%)』に見合うアップグレードが可能になる。フラッシュ・メモリーまたはSRAMのどちらか一方だけを搭載した素子では、この目標は達成できないであろう」。そうHands氏は語っている。さらに、1msという構成時間は、インスタントオン機能を必要とするシステムのFPGAに適した処理時間といえる。

あらゆるものをつなぐ光ファイバ

 FPGA向けの最新のホットソケットの一つは、家庭への音声、データ、動画の配信を行う“トリプルプレー”からもたらされている。またしても通信事業者がネットワークの隅々まで光ファイバを拡大しようとしている。その先頭に立つのは、北米で「RBOC」あるいは「Regional Bell Operating Company」と呼ばれる、世界規模で展開する昔からある電話会社である。 
 FTTH(fiber to the home)、FTTP(fiber to the premises)、FTTC(fiber to the curb)、FTTN(fiber to the node)といった導入方法を耳にしたことがあるかもしれない。いずれの導入方法においても、光ファイバを消費者の近くまで敷設することにより、高速によるデータ転送並びにサービスの向上が実現可能となる。うまくいけば、もはや音声サービスだけでは生き残れなくなっている通信事業者にとっての収益性の向上にもつながる。
 このいわゆる「ラストマイル」の領域は、ASSP、DSP、FPGAなどのICを実装比較する上でも有効であることが証明されている。DSL(digital subscriber line)といった技術は既に成熟しており、しかも、ほぼ全面的にASSPによって支配されている。そう語るのは、米Xilinx社垂直コミュニケーション・マーケット部シニアマネジャーAmit Dhir氏。そのような状況下において装置メーカーはFPGAの使用によりASSPを増強し、例えばサービス品質の向上などの特徴を加えることが可能である。
 しかしながら光ファイバの舞台において、新技術が提供するチャンスは大きく広がっている。この点についてDhir氏はPON(passive optical networking)技術の例を引き合いに出した。このPON技術は、FPGA向けの完璧なFIR(finite impulse response filter)としての用途を、FTTH導入方式の中に見出している。「この市場にはスタンダードが複数混在している」。Dhir氏はこのように語る。 
 確かに、少なくとも3種類のPONが存在している。BPON(broadband PON)およびGPON(gigabit PON)は、いずれもITU(International Telecommunication Union)規格である。BPONはATM(Asynchronous Transfer Mode)、イーサネット、動画転送の各技術が混合しているのに対し、GPONはSONET(synchronous optical network)フレームに依存している。一方、EPON(Ethernet PON)はPONに関する包括的なIEEE規格の一つとなっている。 
 FTTHにおけるFPGAの利用法を考える前に、DSLとケーブルモデム・サービスが初めて開始されて以来、チップ開発状況がどのような推移で変化してきたかを考えてみる。「GPONに注目しよう」とは、Altera社有線事業部門ディレクタJohn Sakamoto氏。「システム設計者は、GPON MAC(media access controller)を見いだせない。5年前であれば、その市場を追い求めるベンダーは10社はあっただろう」。SakamotoおよびDhirの両氏によれば、PON時代にそのような機能を実現できるASSPはほとんど存在しないという。 
 PON ASSPが市場に出回らない理由を具体的に説明することは難しい。確かに、徐々に変わっていく規格や、さまざまな通信事業者が多様なPONを推し進めているという事実にも原因の一端がある。柔軟性を備え持つFPGAにとって、そうした不安定な状況はかえって幸先が良い。しかし、先のネットバブル崩壊で受けた長引く痛みにより、確かに一部のチップサプライヤは土俵の隅に追いやられたままになっている。
 
世界中の通信事業者が、PONアーキテクチャを導入して、さらに顧客の近くへと光ファイバおよび光ファイバが持つ広帯域幅特性を押し広げている。
 
 北米に拠点を置く米RBOC各社は、現在もPONに本腰を入れて取り組んでいる。ケーブル・オペレータの最大手数社が、音声サービスのマーケティングを積極的に展開している上、データ市場でも優位に立っている。RBOC各社はこれらの勢いに対して反撃に出なければならない。そして実際に、PONを利用して反撃を行うことにより「トリプルプレー」を実現するであろう。これまで、米Verizonおよび米SBCの両社は、数百万世帯を対象としたPONの整備に力を注いできており、米BellSouth社もこれに追従するものと思われる。ほかの地域、とりわけ日本と韓国では、通信事業者による光ファイバのインフラ整備が大幅に進んでいる。 
 PONネットワークはOLT(optical line terminal)を頼みとし、このOLTからONU(optical network unit)に情報が供給される。ONUは、企業の終端ポイントとして使用することができる。またあるときは、家庭向けの複数の加入者側NT(network terminal)に対して信号を供給することができる。また一方、SLAM(subscriber line access multiplexer)や、複合ビル内ルーターへの信号供給も行える。 
 PowerPCプロセッサ1〜2個、ギガビット・イーサネットMAC最大4個、マルチギガビットSERDESを備えるXilinx社のVirtex-4ファミリ(特にVirtex-4 FX)にとってPONは「最高の組み合わせ」である、とDhir氏は言い切る。またこのファミリでは、PON MAC(4個1組)とSERDESを実装することにより、OLTラインカードの入力チャンネル(4本)をサポートできる、とも述べている。さらに同氏は、このVirtex-4ファミリ(特にVirtex-4 FX)がOLTスイッチカード並びにギガビット・イーサネット・スイッチASSPにおいてうまく機能することを期待している。これに対し、同社の比較的集積度の低いSpartan-3Eは、ONUに実装されたシングル・チャンネルPONをサポート可能としている。

多様な経路と一つの伝達先

 つまるところ、どの半導体オプションも通信装置に似たような機能を付加している。例えばDSP、ASSP、ASIC、FPGAは、機能や性能の違いこそあれ、どれも信号処理を中心としている。この中のどれかがすべての面において、決定的勝利を収めることはない。
 実のところ、この闘いにおける唯一にして真の勝者は設計チームであろう。半導体メーカー各社が互いに一歩前に抜け出そうと懸命な努力を続ければ続けるほど、設計チームが取り扱えるオプションは、かつてないほど多様なものとなる。そのように豊富な選択肢を取りそろえれば、調査と意思決定にコストがかかることは避けられない。だがその一方、設計チームにとっては、あらゆる設計目標を達成するための、あるいは上回るためのチャンスが増えるのである。
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