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EDN GLOBAL REPORT
July 2005

EDN Global Roundtable
世界各地で活動しているEDNのエキスパートが一堂に会し、それぞれの担当地域において最も重要となる技術と動向について話し合いました。

 
司  会:  EDN Worldwide Editor at Large Maury Wright
出席者:  Maury Wright, Editor at Large, EDN Worldwide
Graham Prophet, Editor, EDN Europe
Kirtimaya Varma, Editor in Chief, EDN Asia
Tsuguyuki Watanabe, RBIJ Editor at Large, EDN Japan
John Mu, Executive Editor, EDN China
Pradeep Chakraborty, Correspondent, EDN Asia/India
Mike Pan, EDN Asia/Taiwan
Kwon Yong Wook, EDN Asia/Korea

 
通信編

Wright:
 通信は、今もなお世界規模で経済を牽引する重要な要素となっています。北米では、通信は成長部門の1つであり、光ファイバを各家庭のまでつなぐEPON(Ethernet PON)、GPON(Gigabit PON)、BPON(Broadband PON)などの新しい導入方式や、家庭内で装置を接続するWi-Fi(Wireless Fidelity)などのLAN(Local Area Network)技術は、いずれも成長を続けています。さらに、WiMax(Worldwide Interoperability for Microwave Access)もこれらと同様に大きな成功を収めるものと思われます。みなさんの地域において、いま最も注目されている通信技術は何ですか。また、大手ネットワーク・ベンダーは、ルーター/スイッチの設計・構築をそれぞれの地域内で行っていますか。携帯電話基地局についてはどうでしょうか。あるいは、昔ながらの電話はどうですか。さらに、無線LAN(802.11あるいはWi-Fi)や無線ブロードバンド(WiMaxあるいはこれと同等のもの)用の装置についてはどうでしょうか。

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Watanabe:
 日本で最も注目されている通信技術は携帯電話機です。また、ネットワーク・ベンダーで使用されているルーター/スイッチは、国内製のものと外国製のものが入り混じった状態です。一方、従来の電話機や無線LAN、無線ブロードバンドの装置は日本国内で設計・構築されています。無線装置の開発には、ネットワーク・プロセッサやWi-Fiチップなど、国内外で製造された半導体が使用されています。

Prophet:
 欧州との関係が最も深い携帯電話システムにおいては、近年その設計の中心がおそらく東にシフトしつつあります。2Gや2.5Gシステムが、ローカル市場に合わせた付加機能によって、差異化を図れる商品となったため、設計の活動自体が欧州から徐々に姿を消しています。しかしまだ欧州には、基地局の設計・構築、さらに3Gシステムの開発作業が残っています。加えて、通信関係のIP(Intellectual Property)と、携帯電話システム用のプロトコル・スタックおよびアプリケーション・ソフトウエアについては、端末とインフラの両階層レベルにおいて今もなお十分に強みを発揮しています。英国のTTPCom社が市場に提供しているIPが、その一例です。

Chakraborty:
 インドは、設計拠点として急速に台頭しつつあります。また、無線やブロードバンドが大いに流行しています。そして、内外のさまざまな企業が多岐にわたり活動しています。Bangaloreに拠点を置くインドの国内企業Quasar Innovations社は、フル機能のBluetooth対応型GSM(Global System for Mobile Communications)/GPRS(General Packet Radio Service)携帯電話機を他に先駆けて開発したといわれています。韓国LG社においても(インドで)携帯電話機の開発を行っているそうです。ビッグ・ニュースと言えば、フィンランドのNokia社が携帯電話機製造のための完全統合型設備をインドChennai近くのSriperumbudurにオープンさせたことですね。その設備では、GSMとCDMA(Code Division Multiple Access)の両方式の携帯電話機が製造されることになっているそうです。フィンランドのElcoteq社もBangaloreに製造設備を立ち上げ、通信関連製品、中でも無線関連にそのターゲットを絞っています。これだけではありません。スウェーデンのSony Ericsson社も、インドMoser Baer社や韓国LG社と同様に、インドでの携帯電話機の生産を計画しています。韓国Samsung社やそのほかの企業も、それほど出遅れていないと思います。通信会社がさらに10MHzもの周波数帯域を取得したので、インドでは2007年までに2億5000万人の携帯電話人口への対応が可能になると予想されます。ちなみに、2005年2月時点における携帯電話加入者数は5140万人となっています。
 次に、さまざまな企業がグローバル市場に向けてGPRS、WCDMA(Wideband CDMA)、MMS(Multimedia Messaging Service)のスタックの開発(インドのSasken社やWipro社)や、WAP(Wireless Application Protocol)ゲートウェイの開発(インドJataayu社)を行っています。さらに、米OATSystems社と米Infosys社が提携し、グローバルなRFID(Radio Frequency Identification)市場のニーズに共同で取り組んでいます。米EPCGlobal社も、インドでのイニシアチブを開始してRFIDアプリケーションに取り組んでいます。Wi-Fi分野では、インドMicrosense社がその方針で大筋を固めています。米Proxim社は、WiMaxのベータ試験の実施を2005年第2四半期に予定しています。シンガポールMobiApps社は、地上波通信用と衛星通信用のチップセット、トランシーバ・モジュールの設計・製造を行っています。また、遠隔監視、資産管理、双方向通信を目的とするアプリケーションに対応したソフトウエア・プラットフォームの設計・製造も同時に行っています。
 ここ数年、インドではIPコアの開発が盛んになっています。インドのWipro社やeInfochips社、HCL社、Sasken社および米inSilica社といった企業が、通信分野でIPの開発を行っています。設計サービス企業各社は、IP開発専門のシリコン設計チームを抱えています。
 通信分野やネットワーク分野でも動きがあります。米3Com社は、Hyderabadの施設でVoIP(Voice over Internet Protocol)対応製品の開発に専念しているという話です。米LVL7社は、市販レベルのネットワーク用ソフトウエアを提供する大手企業ですが、Hyderabadに開発センターがあり、そこでEthernet/IP(Internet Protocol)装置のベンダー向けの開発を行っているそうです。米Ciena社のイーサネット・プロビジョニング・スイッチは、インドFuturSoft社のレイヤー2プロトコル・スタックを内蔵しています。
 一方、スウェーデンEricsson社は最近、基地局を作るために5000万米ドル相当の設備をRajasthanに設置しました。フィンランドNokia社やそのほかの企業も、おそらくインドに基地局の開設を考えていることは間違いありません。

Wright:
 みなさんの地域で通信システムに使用されている半導体は、地域内で製造されたものですか、それとも外部から入ってきたものですか。ひょっとしたら、両方とも存在するかもしれませんね。

Watanabe:
 日本の場合は国産と輸入ものの両方ですね。

Chakraborty:
 大部分は、海外で開発されたものか、輸入されたものかのいずれかです。ですが、米Texas Instruments(TI)社や米Intel社といった大手多国籍企業の設計センターの中には、実際にインドにセンターを設置して幅広い設計を行っているところもあります。また、インドEncore社の「Simputer」のように、国内で開発したICチップを使用しているものもあります。米Cypress Semiconductor社は2006年の第2四半期に、パケットをインターネット経由で簡単かつ高速に処理する次世代ネットワーク用ICチップの大量生産を、インドの開発センターで開始する予定です。また米Cavium社は、インドのHyderabadにある、シリコンのポートフォリオに沿ったソフトウエア開発センターを拡大させようとしています。

Prophet:
 欧州も両方です。欧州内における設計・ファブとしては、携帯電話機用チップセット大手の独Infineon社や、インフラ装置用チップセットなどの伊仏合弁のSTMicroelectronics社が挙げられます。また、これと同じ分野において、米Analog Devices社も重要なサプライヤの1つに数えられています。はっきりと区別できない場合が多いのですが、TI社は、輸入業者と見なすべきでしょうか、それとも欧州のサプライヤと考えるべきでしょうか。同社は欧州に製造工場を構えています。例えばフランスのニースでOMAP(Open Multimedia Application Platform)チップの製造に携わっているのです。大規模チップの設計拠点が世界各地に分散する傾向はますます強くなっており、そのため「設計」面では、問題をはっきりさせるのが難しくなっています。

Wright:
 私から見ると、通信規格が頻繁に変更され、なおかつ絶えずアップグレードを繰り返しているのが原因で、多くの場合にASICやSoCがそれらの受け口としての経済的メリットを見出せなくなっているように思われます。また、みなさんはDSPとFPGAが通信分野で競合しているとお考えかもしれませんが、実際のところ、この両者は共生関係にあるのです。いずれも特定のタスクにとって信号処理のリソースとなっており、並列処理が重視されるときはFPGAが優先され、最大の演算処理能力が必要とされる場合はDSPが選ばれるのです。
 ところで、みなさんは、通信用途において、どのような半導体技術が最も幅広く利用されているとお考えでしょうか、FPGAですか、それともDSPや特定用途向け標準品(ASSP)を使用して設計する方が多いでしょうか。また、みなさんの地域で通信用途向けのSoC開発が行われている例をご存知でしょうか。

Mu:
 半導体技術の導入に関していえば、中国の通信企業は、海外の競合他社に遅れをとらずについて行っています。コスト面も、国内の多くの設計者にとって、技術的な判断を行う上できわめて重要です。中国国内の比較的大きな企業では、現在、社内にIC設計チームを設置しています。その目的は、製品の差異化とIP保護にあります。

Chakraborty:
 おそらくDSPです。インドではTI社が非常に力を持っていますし、国内企業のIttiam社は最近、米Forward Concepts社によるDSP業界の調査で、2004年に世界で最も選択されたDSP IPサプライヤとして選ばれています。米Xilinx社でも最近、インドHyderabadの開発センター稼動1年目にして、12種類のIPコアを創り出しています。それらのIPコアは、高度な90nmプロセスを使用した素子を始めとするXilinx社のプログラマブル・シリコン・プラットフォームに合わせて検証・最適化されたものとなっています。その上、通信や家電製品、さらに自動車への応用も考えられています。SoCに関しては、相当な数に上る活動が行われています。一例を挙げれば、Bangaloreに拠点を持つinSilica社は、「SOC-ODM」モデルを採用して、顧客の要求に応える完成されたICチップを提供しています。

Prophet:
 低コスト面ということに関しては、高周波CMOS分野で相当数の専門企業が欧州に存在します。例えば、英CSR社などがそうです。同社は、Bluetooth対応やWi-Fi対応のチップセットを提供しています。SiGe(silicon-germanium)技術もある程度用いられています。私の印象では、欧州で進められている通信関連の設計業務において、FPGAはまだ使用され始めたばかりといったところです。欧州にはDSPを中心とした専門知識と技術が多数蓄積されており、小規模なプロジェクトでは、多くの場合ASSPを使用する傾向にあります。とはいえ、一定数のSoCプロジェクトが、最新の90nmプロセス技術の採用を含め、開発が完了しているものと思われます。しかしSoC設計が大規模になると、どこにでも見られるような開発コストへの圧力が影響して、設計の数もそれほど多くなるとは限りません。それらは永久に業績重視の体制に閉じ込められ、業績でしか評価されないのです。

Watanabe:
 日本で最も広く採用されている半導体技術は、ベースバンド制御プロセッサと、3G携帯電話機対応のメディア・プロセッサでしょう。FPGAは携帯電話基地局に採用されています。また、SoC技術は、以前から携帯電話機の設計に取り入れられています。DSP機能は、用途に特化したプロセッサやSoCに実装されています。私は、設計者が汎用のDSPを使用しているとは思いません。

Wright:
 VoIPは北米で大きく成長している分野です。北米では、電気通信事業者とケーブル・オペレータが優れた音質のVoIPを展開する一方、独立系の装置ベンダーやサービス・プロバイダも、あらゆるインターネット接続を介してサービスの提供を行っています。その結果、加入者のサービス利用料金が下がり、VoIP用ICベンダーにとっては市場参入への機会が大幅に増えています。音声データ、すなわちVoIP技術は、みなさんの地域でどの程度普及していますか。また、VoIPを広げる元はどこになりますか。社内利用を目的とした大企業や、有線電話サービス・プロバイダ、インターネット・サービス・プロバイダ、あるいは無線サービス・プロバイダだけに限られているのでしょうか。

Watanabe:
 日本の場合は、大企業が内線用にVoIPシステムを導入しています。また、多くの場合、そのシステム構築者はNTTといった既存の電話会社です。

Prophet:
 VoIPは大企業の内線用として受け入れられつつあります。とはいっても、初めのうちは、ほかの分野で既に「ハイテク技術に精通した」企業にしか導入されていませんでした。比較的マイナーですがとても分かりやすいVoIPの利用法としては、VoIP技術「Toll-Bypass」を用いた国際通話割引サービスがあります。個人向けのVoIP使用(実際の電話番号を使用)は、SkypeなどのプロバイダがIP接続によるサービスを提供し始めたばかりです。

Chakraborty:
 VoIPはきわめて一般的となっています。米Cisco社や独Snom社のように、今もVoIP電話を展開しているところもあれば、イスラエルAudiocodes社のように、ゲートウェイ/VoIP、CTI(Computer Telephony Integration)/コール・ログ機能付き通信ボード、VoIPメディア・ゲートウェイ・プロセッサやモジュールなどを販売しているところもあります。IP-VPNの分野では、カナダNortel社、インドAvaya GlobalConnect社、米Cisco社が3大勢力となっています。
 PBX(Private Branch eXchange)に関してインドはかなり成熟した市場ではありますが、IP-PBXとなると、まだ初めの一歩を踏み出したばかりです。米Frost & Sullivan社によれば、2004年のIP-PBX市場は4310万米ドル規模になるものと見込まれていました。ちなみに、2003年のIP-PBX市場は3000万米ドルで、2002年に比べると198%増となっています。Frost & Sullivan社の予測では、このIP-PBX市場は2010年に2億5010万米ドルに達するものと見られ、そうなれば、2003年以降、実質、CAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)35.4%で成長を続けることになります。
 SIP(Session Initiation Protocol)を巡っては、かなりの話し合いがもたれています。企業や通信プラットフォームの大部分は、今なおH.323に準拠しており、少なくとも想像できる範囲では、この先もその状況は変わらないものと思われます。ただ、そうはいっても、遅かれ早かれ、SIPは今後ますます浸透していくことになりそうです。このため企業は、コンタクト・センターの取得時やサービス・プロバイダを決めるときにSIPを考慮しないわけにはいかなくなるでしょう。
 サービス・プロバイダについていえば、インドのBSNL社やTata社、Sify社、Reliance社、Hughes Escorts社、HCL Comnet社、Bharti Broadband社などがVPN(Virtual Private Network)サービスの提供を実施しており、その大部分がMPLS(Multi-Protocol Label Switching)ベースのIP-VPNとなっています。インドにおけるIP-VPNは、2003年から2008年にかけてCAGR 26%の成長を遂げ、2003年に23億ルピーであったものが、2008年には約114億1000万ルピーに達するものと予想されています。MPLSベースのIP-VPNは、将来性のある技術として歓迎されています。
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